投資をする上で、全てを安全資産で運用することは悪くありませんが、一部を少々リスクの高い投資対象に振ることで、最大リターンを高める努力もしていきたいものです。
そんな時に、比較的高いリスクを持つ投資対象の選択肢として、新興国投資信託、ETFなどが代表格です。筆者自身も、魅力的な新興国投信を常に探していますが、今回も調査の一環として、「ベトナム成長株インカムファンド」について書いてみたいと思います。
ベトナム投信を検討する前に、ベトナムの経済事情、株式市場事情についても把握しておきましょう。
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それでは本題に入っていきましょう。
ベトナム成長株インカムファンドとは?
細かい詳細は「ベトナム成長株インカムファンド」の目論見書を読むのが早いでしょう。この記事ではポイントのみに焦点を当てていきます。
簡単な概要としては、「ベトナム成長株インカムファンド」は、ベトナムの取引所に上場する株式、ベトナムの取引所に準ずる市場において取引されている株式、ならびに世界各国、地域の取引所に上場するベトナム関連企業の株式に投資するファンドです。
ファミリーファンド形式。運用は「キャピタルアセットマネジメント株式会社」です。同社はフィリピン株などの運用もしています。
運用プロセスは、トップダウン分析とボトムアップ分析を組み合わせたアプローチ。逆にこれ以外の手法を取っているのはロボットファンドかPEファンドくらいのような気もします。
トップダウン分析・・・マクロ経済動向および政治情勢等の見通しについて検討
ボトムアップ分析・・・利益成長率・配当利回りなどの分析やその他情報等を参考
ファンド規模は2023年2月末時点で245.7億円です。
組み入れ銘柄は以下の通りです。大手企業で固まっていますね。国営企業の面々が揃います。
銘柄名 | 業種 | 組入比率 |
ベトコムバンク | 銀行 | 8.0% |
FPT | テクノロジー | 6.3% |
ペトロベトナム | 公益事業 | 6.2% |
ピンホームズ | 不動産 | 4.7% |
マッサングループ | 食品・飲料 | 4.6% |
サイゴンビール | 食品・飲料 | 4.5% |
モバイルワールド | 小売 | 4.0% |
フーニュアン | 耐久消費財 | 3.9% |
ベトナム繁栄商業銀行 | 銀行 | 3.6% |
ベトナム投資開発銀行 | 銀行 | 3.2% |
ちなみに2021年3月時点は以下です。半数くらいメンバーが変わっていますね。
順位 | 銘柄 | 国・地域 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | FPT | — | テクノロジー・ハードウェアおよび機器 | 9.30% |
2 | ベトナム外商銀行 (ベトコムバンク) | — | 銀行 | 8.60% |
3 | ビンホームズ | — | 不動産 | 7.60% |
4 | モバイル・ワールド・インベストメント | — | 小売 | 7.50% |
5 | ビングループ | — | 不動産 | 7.10% |
6 | ホアファットグループ | — | 素材 | 5.50% |
7 | ビナミルク(ベトナム乳業) | — | 食品・飲料・タバコ | 5.00% |
8 | 軍隊商業銀行(ミリタリー・コマーシャル) | — | 銀行 | 4.70% |
9 | ベトナム投資開発銀行 | — | 銀行 | 3.80% |
10 | ベトナム産業貿易商業銀行 | — | 銀行 | 3.20% |
販売手数料は3.3%(税抜3.0%)を上限、信託報酬はファンドの純資産総額に対し、年1.881%(税抜1.71%)。同族(他ベトナム投信)のCAMベトナムファンドの信託報酬は年2.618%(税抜2.38%)でこれが今のところ一番高いですね。販売手数料は一律です。
ここまでが概要です。ファンド選びをする上で重要なポイントを見ていきましょう。
基準価額(チャート)、トータルリターン、シャープレシオ、標準偏差
基準価額はコロナショックで大きく凹んだ時期がありましたが、異次元の金融緩和でその後は上昇。そして世界的な金融引き締めの影響を受けて2022年に大幅下落と世界経済を繁栄した動きとなっています。
リターンとしてもベトナムVN指数と同様の値動きとなっています。ベトナムVN指数はベトナム版の日経平均指数です。
大型株中心のポートフォリオなのでほぼ同じリターンに収束しているということですね。
トータルリターン、標準偏差とシャープレシオを見ていきます。
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 63.05% | 8.97% | 14.48% | — |
標準偏差 | 25.46 | 29.36 | 24.81 | — |
シャープレシオ | 2.48 | 0.31 | 0.58 | — |
トータルリターン
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 63.05% | 8.97% | 14.48% | — |
勝率を見ていきたいので長期で見たいですが、5年で14.48%のリターンは高いですね。
しかし、直近の1年が63.05%になっていることから分かる通り、2020年のコロナショック後からの異次元の金融緩和により世界的に昨年1年はハイリターンになっています。
適正な評価がイマイチ、トータルリターンからはできなくなってしまいました。しかし、2020年の大きなリターンがありながら、3年のリターンが8.97%となっており、ここ3年は優れた成績を出せていなかったことは把握できます。
2018年のマイナスリターンが響いています。
標準偏差
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
標準偏差 | 25.46 | 29.36 | 24.81 | — |
標準偏差とは、平均からのばらつきを表しますが、よく分からなければ標準偏差が大きいとリスクが高いということを覚えておいてください。
標準偏差は5年で24.81。非常に高い水準であり、値動きが激しい投資対象を選好して運用を行っていることがわかります。新興国に投資をする代表ETFのバンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)ですら、標準偏差は15-18です。
リスクの高い投資先であることは理解しましょう。
シャープレシオ
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
シャープレシオ | 2.48 | 0.31 | 0.58 | — |
続いて、シャープレシオを見て下さい。これはリスクに対するリターンの割合を示しています。難しければ、とりあえず1を超えていると優秀な商品だと思って下さい。
ベトナム成長株インカムファンドの場合は5年で0.58と1を大きく下回っています。つまり、とっている大きなリスクの割にはリターンが大したことが無いというのがこのファンドの特徴です。
指数を上回ることはできているのか?
アクティブファンドに求められるのは、「指数を超えること」です。指数を超えられないのであれば、投資家からすればインデックスに投資する以外選択肢がないわけです。
ベトナム代表指数はVN指数ですが、それに類似する商品はありませんので、似た戦略としてベトナム大型企業のみ組み入れている「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」(VNM)と比較してみます。
1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
10年 (年率) |
|
ベトナム株ファンド(大和アセットマネジメント) | 68.72% | 11.07% | — | — |
ベトナム・ロータス・ファンド | 98.84% | 17.79% | — | — |
DIAMベトナム株式ファンド | 74.22% | 12.36% | 16.23% | — |
CAMベトナムファンド | 71.82% | 9.29% | 13.96% | 12.65% |
成長株インカムファンド | 63.05% | 8.97% | 14.48% | — |
ヴァンエック ベクトル ベトナムETFベトナム | 44.25% | 7.05% | 7.65% | 1.46% |
指数は当然ながら超えていますね。「ベトナム・ロータス・ファンド(愛称 : ロータス)」「DIAMベトナム株式ファンド」「CAMベトナムファンド」、「ベトナム株ファンド(大和アセットマネジメント) 」も超えています。全ファンドとも同じようなリターンですね。
DIAMベトナム株式ファンドがこの中では一番優秀です。ベトナム株ファンド、ロータスは3年しかデータがないので戦力外です。
楽天証券/SBI証券などで買えるのか?
注意点としては、あまりにも便利で、サクサクと投資信託を売買できてしまうので、ファンドに預けて運用を任せているにも関わらず数日で売買してしまったりすることです。
ファンドに投資をした場合、長期で結果が出るのを待つのが基本です。売買するものではありません。売買したいなら自分で個別株、FXなどを楽しむべきでしょう。簡単に勝てる代物ではございませんが、一度トライするくらいはいいかもしれませんね。
まとめ
総じて悪くないリターンではありますが、あまりにも標準偏差が高いことや、シャープレシオを見る限り、ベトナム成長株インカムファンドは無理して投資する先ではないと思いました。もっと良い先があります。
これから新興国株式に追い風の時流が流れそうですが(2022年初頭頃から)、度重なる金融緩和で、人気株はすでに高値になっているようにも見えます。
新興国株投資では、まだ放置されている割安株を狙う投資戦略が今後は功を奏しそうです。
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(新興国分析一覧)
中国 香港 インドネシア インド カンボジア シンガポール タイ
フィリピン ブラジル ベトナム マレーシア ミャンマー ラオス 南アフリカ
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個人的には、今後より世界で名を馳せていくであろう中国市場に注目しています。
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皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。