投資をする上で、全てを安全資産で運用することは悪くありませんが、一部を少々リスクの高い投資対象に振ることで、最大リターンを高める努力もしていきたいものです。
そんな時に、比較的高いリスクを持つ投資対象の選択肢として、新興国投資信託、ETFなどが代表格です。
筆者自身も、魅力的な新興国投信を常に探していますが、今回も調査の一環として、「ベトナム株式ファンド」について書いてみたいと思います。
ベトナム投信を検討する前に、ベトナムの経済事情、株式市場事情についても把握しておきましょう。
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それでは、ベトナム株式ファンドについて調べていきます。
ベトナム株式ファンドとは?
細かい詳細は「ベトナム株式ファンド」の目論見書を読むのが早いでしょう。この記事ではポイントのみに焦点を当てていきます。
簡単な概要としては、「ベトナム株式ファンド」は、ベトナムの取引所に上場する株式、ベトナムの取引所に準ずる市場において取引されている株式、ならびに世界各国、地域の取引所に上場するベトナム関連企業の株式に投資するファンドです。
とにかくベトナムの成長性の高い株を買っていくファンドです。ファミリーファンド形式。運用は「三井住友DSアセットマネジメント株式会社」です。同社はグローバルAIファンドやアジア好利回りファンドなど幅広く運用を行っています。
運用プロセスは、投資先企業等のサステナビリティ(持続可能性)の重要な要素としています。(ESGも判断材料に)流行の投資先ではなく、しっかりと地に足ついた企業を企業を選定していると書かれています。
企業との対話・働きかけ(エンゲージメント)や、議決権行使等も実行するなど、本格派ファンドの動きをしています。ESGをかなり強調しており、時代を感じますね。
「ベトナム株式ファンド」の規模は2021年4月時点で41億円です。小規模ファンドですね。
組み入れ銘柄は以下の通りです。大手企業で固まっていますね。国営企業の面々が揃います。
順位 | 銘柄 | 国・地域 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | ベトコムバンク | ベトナム | 銀行 | 9.40% |
2 | ベトナム投資開発銀行 | ベトナム | 銀行 | 6.70% |
3 | FPT | ベトナム | テクノロジ・ハードウェア・機器 | 6.40% |
4 | ペトロベトナム・ガス | ベトナム | 公益事業 | 6.20% |
5 | ベトインバンク | ベトナム | 銀行 | 4.80% |
6 | ビンホームズ | ベトナム | 不動産 | 4.80% |
7 | ベトナム乳業 | ベトナム | 食品・飲料・タバコ | 4.40% |
8 | ビンコムリテール | ベトナム | 不動産 | 4.00% |
9 | フーニュアン・ジュエリー | ベトナム | 耐久消費財・アパレル | 3.70% |
10 | HDバンク | ベトナム | 銀⾏ | 3.20% |
販売手数料は3.3%(税抜3.0%)を上限、信託報酬はファンドの純資産総額に対し、年1.958%(税抜1.78%)。
同族(他ベトナム投信)のCAMベトナムファンドの信託報酬は年2.618%(税抜2.38%)でこれが今のところ一番高いですね。販売手数料は一律です。
- ベトナム・ロータス・ファンド(愛称 : ロータス)
- DIAMベトナム株式ファンド
- CAMベトナムファンド
- ベトナム株ファンド
- ベトナム成長株インカムファンド
- 大和アセットマネジメントのベトナム株ファンド
ここまでが概要です。ファンド選びをする上で重要なポイントを見ていきましょう。
基準価額(チャート)、トータルリターン、シャープレシオ、標準偏差
基準価額はコロナショックで大きく凹んだ時期がありましたが、異次元の金融緩和でその後は上昇。これは世界的に同じ動きをしています。ひとまず基準価額に大きな問題点は見られません。
トータルリターン、標準偏差とシャープレシオを見ていきます。
年 | 1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
10年 (年率) |
トータル リターン |
-8.16% | 15.79% | 3.19% | 11.14% |
標準偏差 | 19.79 | 29.92 | 26.14 | 22.28 |
シャープ レシオ |
-0.41 | 0.53 | 0.12 | 0.50 |
トータルリターン
年 | 1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
10年 (年率) |
トータル リターン |
-8.16% | 15.79% | 3.19% | 11.14% |
10年で11.14%のリターンは高いですね。2020年のコロナショック後からの異次元の金融緩和により世界的に2020〜2021年はハイリターンになっています。そしてその後2022年は下落に転じました。ベトナム株式ファンドは結果的に5年で年率3%となっています。
適正な評価がイマイチ、トータルリターンからはできなくなってしまいました。
2020年の大きなリターンがありながら、5年のリターンが3.19%となっており、ここ5年は優れた成績を出せていなかったことは把握できます。2018年と2022年のマイナスリターンが響いています。
2018年といえば、米中貿易摩擦や米利上げの悪影響や景気減速など先行きに対する懸念材料が多く、多くの投資家が株式市場から資金を抜いていきました。
ファンドはどれほど下落を軽傷で切り抜けられるか、その手腕が求められます。ベトナム株式ファンドに関しては、下落体制に少し不安が残ります。
標準偏差
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
標準偏差 | 19.79 | 29.92 | 26.14 | 22.28 |
標準偏差とは、平均からのばらつきを表しますが、よく分からなければ標準偏差が大きいとリスクが高いということを覚えておいてください。
標準偏差は10年で22.28。非常に高い水準であり、値動きが激しい投資対象を選好して運用を行っていることがわかります。新興国に投資をする代表ETFのバンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)ですら、標準偏差は15-18です。
リスクの高い投資先であることは理解しましょう。
シャープレシオ
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
シャープレシオ | -0.41 | 0.53 | 0.12 | 0.50 |
続いて、シャープレシオを見て下さい。これはリスクに対するリターンの割合を示しています。難しければ、とりあえず1を超えていると優秀な商品だと思って下さい。
ベトナム成長株インカムファンドの場合は10年で0.50と1を大きく下回っています。つまり、とっている大きなリスクの割にはリターンが大したことが無いというのがこのファンドの特徴です。
指数を上回ることはできているのか?
アクティブファンドに求められるのは、「指数を超えること」です。指数を超えられないのであれば、投資家からすればインデックスに投資する以外選択肢がないわけです。
ベトナム代表指数はVN指数ですが、それに類似する商品はありませんので、似た戦略としてベトナム大型企業のみ組み入れている「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」(VNM)と比較してみます。
1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
10年 (年率) |
|
ベトナム株ファンド (大和アセットマネジメント) |
-9.51% | 13.16% | 3.00% | — |
ベトナム・ロータス・ファンド | -17.50% | 18.58% | 5.92% | — |
DIAMベトナム株式ファンド | -13.93% | 14.32% | 3.90% | — |
CAMベトナムファンド | -16.04% | 8.41% | 0.56% | 7.52% |
成長株インカムファンド | -14.19% | 11.77% | 2.07% | |
ベトナム株式ファンド | -8.16% | 15.79% | 3.19% | 11.14% |
ヴァンエック ベクトル ベトナム ETFベトナム |
-26.39% | 1.69% | -3.90% | 0.48% |
指数は当然ながら超えていますね。「ベトナム・ロータス・ファンド(愛称 : ロータス)」「DIAMベトナム株式ファンド」「CAMベトナムファンド」、「ベトナム株ファンド(大和アセットマネジメント) 」「成長株インカムファンド」も超えています。
全ファンドとも同じようなリターンですね。ベトナム株式ファンドがこの中では一番優秀です。DIAMベトナム株ファンド、ロータスは5年しかデータがないので戦力外です。
楽天証券/SBI証券などで買えるのか?
インターネットで投資信託が売買できるのは、非常に便利です。しかし、便利な分、簡単にトレードできてしまうため、売るべきではないタイミングで売ってしまったり。
買うべきでないタイミングで買ってしまったりと、個人のセンスが問われるようになってしまったように思います。また売る気が無くても自分の資産が減っていく様子を見ると、人は感情的に売ってしまうものです。
それらを理解した上で、インターネット上の投資判断を行っていきましょう。
まとめ
ベトナム株式ファンドは、総じて悪くないリターンではあります。
しかし、標準偏差が高いです。少し不安を覚える水準であり、値動きは激しい商品であることを理解しましょう。
また、シャープレシオを見る限り、ベトナム株式ファンドは無理して投資する先ではないと思いました。もっと良い先があります。
これから新興国株式に追い風の時流が流れそうですが(2022年初頭頃から)、度重なる金融緩和で、人気株はすでに高値になっているようにも見えます。
新興国株投資では、まだ放置されている割安株を狙う投資戦略が今後は功を奏しそうです。
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(新興国分析一覧)
中国 香港 インドネシア インド カンボジア シンガポール タイ
フィリピン ブラジル ベトナム マレーシア ミャンマー ラオス 南アフリカ
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個人的には、今後より世界で名を馳せていくであろう中国市場に注目しています。
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皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。