投資をする上で、全てを安全資産で運用することは悪くありませんが、一部を少々リスクの高い投資対象に振ることで、最大リターンを高める努力もしていきたいものです。米国株であれば、S&P500だけではなくQQQ(ナスダック100)も一緒に運用するなどの声が増えているように感じます(米国株は割高なので難しいですが)。
比較的高いリスクを持つ投資対象の選択肢として、新興国投資信託、ETFなどが代表格もす。世界に資産を分散しつつも、リターンを最大化していく戦略は多くの有力ファンドが行なっている手法ですよね。
筆者自身も、魅力的な新興国投信を常に探していますが、今回も調査の一環として、「ベトナム・ロータス・ファンド(愛称 : ロータス)」について書いてみたいと思います。「ロータス」というとロータスエリーゼというスーパーカーを思い浮かべてしまいます。

ベトナム投信を検討する前に、ベトナムの経済事情、株式市場事情についても把握しておきましょう。
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それでは、ベトナム・ロータス・ファンドについて調べていきます。
ベトナム・ロータス・ファンドとは?

目論見書の表紙から面食らってしまいました。
細かい詳細は「ベトナム・ロータス・ファンド」の目論見書を読むのが早いでしょう。この記事ではポイントのみに焦点を当てていきます。
このブログでも「チャートで見る、ベトナム株式市場!VN指数は健全に成長。2021年以降の買い方はヴァンエック ベクトル ベトナムETF(VNM)がおすすめの選択肢?」でベトナムについては概要を述べていますが、こちらの目論見書でも軽くベトナムと日本について触れていますので、大枠を掴む上で参考になります。
ベトナムは1995年にアメリカとの国交を樹立し、またASEANにも加盟しましたが、この頃から経済発展が加速しています。これは1945年の終戦後に成長を始めた日本になぞらえる事ができます。すなわち、ベトナムの経済発展は日本に遅れる事約50年と言えます。実際、現在のベトナムの経済状況 は今から50年前、1970年(昭和45年)前後の日本の状況に良く似ています。日本の株価(日経平均 株価)は1970年末から1989年末までの19年間に約20倍上昇しました。ベトナムが昭和の高度経 済成長と同様の発展を今後も続けるとすると、ベトナム株式の中長期の上昇を期待する事が出来ると 考えます。
簡単な概要としては、「ベトナム・ロータス・ファンド」は、今後成長が見込まれるベトナム株に投資を行い、中長期的な信託財産の成長を目指し積極的な運用を行っていくファンドです。ファミリーファンド方式を採用。
トップダウンアプローチ(マクロ経済分析)、ボトムアップリサーチ(個別株のファンダメンタル分析)の二面から投資していくファンドです。当然の手法ですね。特段目新しいものはありません。
運用は「ファイブスター投信投資顧問株式会社」です。MASAMITSU日本株戦略ファンド、日本株ロングショート戦略ファンド 愛称:いつつぼし、ユナイテッド・タートルクラブ・ファンド・安定型(愛称:ゼニガメ)など複数ファンドを有していますが、日本株に強いイメージを受けます。不思議な名前のファンドが多いですね。

「ベトナム・ロータス・ファンド」の規模は2021年2月末時点で30億円です。小規模ファンドですね。
組み入れ銘柄は以下の通りです。大手企業で固まっていますね。国営企業の面々が揃います。
順位 | 銘柄 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | ホアファットグループ | 素材 | 6.05% |
2 | デジワールド・コーポレーション | テクノロジー・ハードウェアおよび機器 | 4.95% |
3 | ホーチミン市住宅開発商業銀行 | 銀行 | 4.33% |
4 | キンバックシティグループ | 不動産 | 4.04% |
5 | ベトナム外商銀行 | 銀行 | 4.01% |
1位のホアファットグループは鉄鋼、その他はテクノロジー、銀行、不動産。
DIAMベトナム株式ファンド、CAMベトナムファンド、ベトナム成長株インカムファンドと大きな違いは御座いません。
ベトナム・ロータス・ファンドの販売手数料は3.3%(税抜3.0%)を上限、信託報酬はファンドの純資産総額に対し、年2.167%(税抜1.97%)。CAMベトナムファンドの信託報酬は年2.618%(税抜2.38%)でこれが今のところ一番高いですね。販売手数料は一律です。
基準価額(チャート)は問題なし、トータルリターンは疑問、シャープレシオ、標準偏差は危険水準
ベトナム・ロータス・ファンドの基準価額はコロナショックで大きく凹んだ時期がありましたが、異次元の金融緩和でその後は上昇。これは世界的に同じ動きをしています。ひとまず基準価額に大きな問題点は見られません。しっかりコロナ前の水準を上回っていますね。

ここまでが概要です。ファンド選びをする上で重要な指標を見ていきましょう。つまり、トータルリターン、標準偏差とシャープレシオを見ていきます。
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 98.84% | 17.79% | — | — |
標準偏差 | 25.66 | 29.99 | — | — |
シャープレシオ | 3.85 | 0.59 | — | — |
すでに5年以上のデータがなく、筆者としてはここで切り捨てるのですが、ここまできてしまったので最後まで一気に走り切りたいと思います。
トータルリターン
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 98.84% | 17.79% | — | — |
直近の1年が98.84%になっていることから分かる通り、2020年のコロナショック後からの異次元の金融緩和により世界的に昨年1年はハイリターンになっています。しかし、2倍は凄いですね。短期でロータスを購入していたホルダーの方には祝福を贈りたいです。
ただしこれから買うファンドかというと、適正な評価がイマイチ、短期間のトータルリターンからはできません。
また疑問が生まれていて、2020年の大きなリターンがありながら、3年のリターンが17.79%となっており、ここ3年は優れた成績を出せていなかったことは把握できます。

標準偏差
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
標準偏差 | 25.66 | 29.99 | — | — |
標準偏差とは、平均からのばらつきを表しますが、よく分からなければ標準偏差が大きいとリスクが高いということを覚えておいてください。
標準偏差は3年で29.99。30をなんとか切り抜けました。そういう問題ではないのですが、29.99は見たことがないくらい非常に高い水準です。
値動きが非常に激しい投資対象を選好して運用を行っていることがわかります。新興国に投資をする代表ETFのバンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)ですら、標準偏差は15-18です。
リスクの高い投資先であることは理解しましょう。そのぶん、高いリターンに魅力がある市場であることも理解できます。(ただし金融緩和が終わる今後はどうでしょう?)
シャープレシオ
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
シャープレシオ | 3.85 | 0.59 | — | — |
続いて、シャープレシオを見て下さい。これはリスクに対するリターンの割合を示しています。難しければ、とりあえず1を超えていると優秀な商品だと思って下さい。直近1年は3.85と異常値が出ていますが、これは異次元金融緩和による数字ですので参考になりません。
長期で見た数字が正確な勝率となります。
指数を上回ることはできているのか?
アクティブファンドに求められるのは、「指数を超えること」です。指数を超えられないのであれば、投資家からすればインデックスに投資する以外選択肢がないわけです。
ベトナム代表指数はVN指数ですが、それに類似する商品はありませんので、似た戦略としてベトナム大型企業のみ組み入れている「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」(VNM)と比較してみます。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | |
ベトナム株ファンド(大和アセットマネジメント) | 68.72% | 11.07% | — | — |
ベトナム・ロータス・ファンド | 98.84% | 17.79% | — | — |
DIAMベトナム株式ファンド | 74.22% | 12.36% | 16.23% | — |
CAMベトナムファンド | 71.82% | 9.29% | 13.96% | 12.65% |
成長株インカムファンド | 63.05% | 8.97% | 14.48% | — |
ヴァンエック ベクトル ベトナムETFベトナム | 44.25% | 7.05% | 7.65% | 1.46% |
指数は当然ながら超えていますね。「DIAMベトナム株式ファンド」「CAMベトナムファンド」、「ベトナム成長株インカムファンド」「ベトナム株ファンド(大和アセットマネジメント)」も超えています。3ファンドとも同じようなリターンですね。DIAMベトナム株式ファンドがこの中では一番優秀です。ロータスは3年しかデータがないので戦力外です。
ベトナム・ロータス・ファンドは楽天証券/SBI証券などで買えるのか?
まとめ
総じて悪くないリターンではありますが、あまりにも標準偏差が高いことや、シャープレシオを見る限り、ベトナム・ロータス・ファンドは無理して投資する先ではないと思いました。もっと良い先があります。そもそも3年しかデータがないので、筆者はまず選ぶことはありません。ファンドの過去の実績が必要です。
また、新興国に投資をする割には、2020年の大きな追い風があったにも関わらず、10年スパンでは控えめなリターンとなっています。もう少し高いリターンを期待したいですね。リスクリワードが合いません。
また、ベトナムで個別株を買う戦略を考えても、これから新興国株式に追い風の時流が流れそうですが(2022年初頭頃から)、度重なる金融緩和で、ベトナムの人気株はすでに高値になっているようにも見えます。
新興国株投資では、まだ放置されている割安株を狙う投資戦略が今後は功を奏しそうです。
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(新興国分析一覧)
中国 香港 インドネシア インド カンボジア シンガポール タイ
フィリピン ブラジル ベトナム マレーシア ミャンマー ラオス 南アフリカ
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皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。

経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。

一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体

参照:MSCI
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。
