「南アフリカへの投資がハイリターンを狙えるだろう。」と投資を検討している人もいるかもしれません。
ですが、筆者は南アフリカへの投資はハイリスクながらリターンは見込めないと考えています。
南アフリカの経済は成長するのか、今後の株価はどうなっていくのか、南アフリカになぜ投資すべきではないのか、解説していきます。
南アフリカの基本情報
まずは南アフリカの基本情報を確認しておきましょう。
国名 | 南アフリカ共和国 Republic of South Africa |
---|---|
面積 | 121万9,090平方キロメートル |
人口 | 5,962万人 |
首都 | プレトリア |
主な宗教 | キリスト教(80%)、ヒンズー教、イスラム教 |
1人当たり名目GDP | 5,067ドル |
国土は121万平方キロメートルあり日本の3倍以上の広さを誇っています。一方、人口は5,962万人となっており、日本の半分以下です。
宗教はキリスト教が主ですが、ヒンズー教やイスラム教も信仰されています。
1人当たり名目GDPは5,067ドルとなっており、これは世界98位ですのでかなり低い水準となっています。
世間で南アフリカ株投資が注目されている理由
BRICSに数えられる南アフリカ
南アフリカ株は、なぜ新興国投資の中でも注目されているのでしょうか。
理由の一つに、南アフリカがBRICSに数えられていることがあります。
B:ブラジル
R:ロシア
I:インド
C:中国
S:南アフリカ(元々は複数形のSだったが2011年に南アフリカが追加)
BRICSはもともとゴールドマンサックスのアナリストが投資家向けレポートの中で命名した名前で、そこから広く呼ばれるようになりました。
中国や南アフリカなどBRICSの国々は一つの新興国グループとしてまとめられたことから世間に広く認知され、注目を集めています。
南アフリカ株投資がハイリターンを期待される理由
新興国が投資先として注目を集めている理由は、経済成長と共に株価が上昇していくと期待されているからです。
実際、経済について見てみると南アフリカは2003年以降順調に成長してきました。こちらがGDPの推移です。
参照:TRADING ECONOMICS
2003年から順調に成長してきましたが、2011年をピークにその後は減少し、近年もマイナス成長が続いています。
やや苦戦が続いていますが、今後南アフリカ経済は本当に成長していくのでしょうか。分析していきましょう。
南アフリカは本当に経済成長していくのか?
人口から見る南アフリカの経済成長
南アフリカの経済成長を考えるにあたって、まずは人口という観点から見ていきましょう。南アフリカの人口ピラミッドはこちらです。
参照:世界の人口ピラミッド
きれいなつりがね型となっており、若い年齢の人が多くなっていることが分かります。経済成長にあたっては人口というのは大きな要素です。
人口が多ければ経済成長に有利ですし、さらに、人口が増加し続けていく国の方が有利です。南アフリカの今後の人口がどうなっていくのか見ていきましょう。
参照:世界の人口ピラミッド
2083年まで人口は増加し続け、8000万人を超える予定です。これから60年以上も人口が増加し続けるのは非常にすばらしいですね。
人口という点で見ると南アフリカは非常に有利な条件であることが分かります。
南アフリカの経済成長率の推移
続いて、南アフリカの経済成長率の推移についてみていきましょう。南アフリカはコロナショックで2020年の経済は大きく落ち込みました。
参照:TRADING ECONOMICS
こちらが経済成長率の推移ですが、一時マイナス15%を下回るほどの落ち込みぶりです。
これを受けて政府はコロナショック下のロックダウンを緩和し、中央銀行は利下げで景気を下支えしました。
しかしながら、南アフリカはインフラ不足や雇用問題といった課題を抱えていてコロナショック前から不況に陥っており、今後順調に経済成長していくかは大いに疑問です。
人口を見ると好条件ですが、それだけを見て経済成長していくと判断するのは危険です。
新興国投資で利益を上げる方法とは
南アフリカが今後経済成長していくのかどうかは疑問が残りますが、そもそも新興国投資で利益を上げるためには守らなければいけないことがあります。
- 国が経済成長していくこと
- 株を割安な価格で買うこと
国が経済成長していくのはもちろん重要なのですが、もう一つ株を割安な価格で買うことが必須です。
株価は人気で決まるので、これから経済成長していくだろうという期待だけで株価が上がってしまうことがあります。
割高な価格で株を買ってしまうとそれ以上の株価成長は見込み辛く、逆に暴落する可能性があり危険です。必ず割安な価格で買うようにしましょう。
南アフリカ株は割安なのか?
南アフリカ株式市場と世界の比較
それでは、南アフリカ株は割安なのでしょうか。PERを比較して株価の割安度を確認してみましょう。
※PERとは
株価の割安度を測る指標。数字が大きければ割高で小さければ割安。
(株価)/(一株あたり純利益)
南アフリカのPERを世界各国と比較してみました。
2021年6月
米国 | 37.9 |
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南アフリカ | 26.1 |
エマージング国 | 19.7 |
BRICS | 18.5 |
日本 | 16.9 |
米国のPERは37.9と非常に高くなっていますが、南アフリカも26.1と次いで高くなっています。
エマージング国やBRICSよりも高くなっていますので、南アフリカは新興国の中でも高い水準であることが分かります。
すなわち、南アフリカの株価は日本や他の国と比較しても非常に割高な水準となっています。
南アフリカが経済成長するのかという話もありますが、いずれにせよこれだけ割高な価格で株を購入していはいけません。現状では南アフリカに投資すべきではないと言えます。
過去のPER水準との比較
南アフリカのPERは非常に高くて割高でしたが、念のため過去のPERとも比較してみましょう。
過去のPERとの比較
2021年6月 | 26.1 |
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2019年6月 | 17.4 |
2017年6月 | 19.0 |
2015年6月 | 17.9 |
2013年6月 | 16.9 |
2021年の南アフリカのPERは26.1で、2013年からの8年間でみても一番高くなっています。2021年を除いた4つの年の平均値は17.8ですので、2021年のPERはそれの約1.5倍です。
PERが1.5倍ということは、今までは1000円で売っていたものが商品の内容自体は何も変わらないのに1500円払わないと買えないような状況だ、ということです。
1500円で株を買った後にすぐ1000円に下がってしまったとしても不思議ではありません。
1500円 → 1000円(マイナス33.3%)
すなわち、株を買った翌日にマイナス30%になったとしても何らおかしくない状況です。こういった状況下で投資を始めるのは非常に危険です。南アフリカ株には投資しないようにしましょう。
新興国投資でハイリターンを狙うなら!
残念ながら南アフリカに投資妙味はありませんでしたが、新興国投資が悪いと言っている訳ではありません。
こちらのPERを比較した表を見て下さい。
南アフリカ(2021年) | 26.1 |
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南アフリカ(2013年) | 16.9 |
中国(2021年) | 17.1 |
南アフリカ株はすでに値上がってしまいましたが、中国株(PER17.1)はまだ値上がりする前の南アフリカ株(PER16.9)と同じ水準です。
同じBRICSでもこれだけの差があります。これから新興国に投資するならまだまだ割安な水準である中国に投資すべきです。
筆者も現在、新興国投資は中国株ファンド1本に絞って行っています。さらに、ただ中国に投資をするのではなく中国株専門のヘッジファンドを通して投資しています。
そういった方は、下記の記事にて中国株専門のヘッジファンドを紹介していますのでそちらをぜひ参考にしてみて下さい!
また、中国経済や株式市場については下記でも解説していますのでそちらもご一読いただければ幸いです。
【見通し良好!】中国の経済は今後どうなる?終焉と謳われた過去を払拭し中国製造2025でハイテク産業重視にシフトしてGDPで世界の覇権を握る!
中国株式市場は割安で投資する機会が到来!A株、B株、香港H株、レッドチップなどの違いについてもわかりやすく解説する。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。