新興国株式投資を考えている方にはインドに注目している人も多いと思います。
インド株に投資をしようと思ったら一番簡単な方法は、インド関連の投資信託を購入する方法です。
インドに関連する投資信託の一つとして「ニッセイ・インド厳選株式ファンド」が有名ですが、果たしてその実力はどうでしょうか?
「ニッセイ・インド厳選株式ファンド」の評判や実際どうなのか分かりやすく解説していきます。
インドマーケットに関する詳細はこちらをご一読ください。
ニッセイ・インド厳選株式ファンドの特徴とは
厳選された銘柄に投資する
参照:交付目論見書
ニッセイ・インド厳選株式ファンドの運用は「ファミリーファンド方式」で行われています。投資家からの資金はベビーファンドとしてまとめ、そこからマザーファンドに投資することで実質マザーファンドで運用を行う方式です。
ニッセイ・インド厳選株式ファンドではその名の通り、株価上昇が期待できる銘柄を厳選して投資を行います。そのため、一般的な投資信託のように100以上の銘柄に分散投資をしているのではなく、投資先数は35と少なくなっています。
投資先の銘柄数が少ないことで値上がりする時も、値下がりする時も動きが大きく、リスクが高いのがニッセイ・インド厳選株式ファンドの特徴です。
具体的な運用手法とは
ニッセイ・インド厳選株式ファンドの実質的な運用はニッポンライフ・インディア・アセットマネジメントが行っています。
・日本生命保険相互会社の子会社
・インドの最大級の資産運用会社
・インド株式や投資信託等の商品を運用
・運用資産額は約4.9兆円
ニッポンライフ・インディア・アセットマネジメントは日本生命保険相互会社の子会社でインド最大級の資産運用会社となっています。具体的には次のようなステップで銘柄選定を行います。
参照:交付目論見書
投資不適格銘柄を排除し、バリュエーション評価を行った上でリスクコントロールの観点からポートフォリオを決定しています。
ニッセイ・インド厳選株式ファンドではこのような流れで43程度の銘柄が選定されていくことになります。
投資先銘柄トップ10
では、その厳選された投資先を見てみましょう。いったいどんな銘柄に投資しているのでしょうか。
2023年2月28日時点
銘柄 | 業種 | 比率 | |
1 | HDFC銀行 | 金融 | 8.5% |
2 | リライアンス・インダストリーズ | エネルギー | 7.5% |
3 | ラーセン&トゥブロ | 資本財・サービス | 7.0% |
4 | ICICI銀行 | 金融 | 6.7% |
5 | インドステイト銀行 | 金融 | 5.1% |
6 | インフォシス | 情報技術 | 4.5% |
7 | HDFC | 金融 | 4.4% |
8 | アクシス銀行 | 金融 | 3.8% |
9 | ITC | 生活必需品 | 3.6% |
10 | HCLテクノロジー | 情報技術 | 3.1% |
業種としては金融が多い構成となっています。そもそも投資先の銘柄数が少ない上に、投資先の業種もかなり構成が偏っているので、より値動きが多くなりやすいポートフォリオとなっています。
つまり、ニッセイ・インド厳選株式ファンドのポートフォリオは値上がりすれば恩恵も大きいでしょうが、値下がりする時の下がり幅も大きく非常にリスクが高い構成となっています。
運用効率が悪い分配金
続いて、分配金についても確認しておきましょう。投資信託には分配金を出すタイプと出さないタイプがありますが、分配金を出さないタイプの方が良いです。
なぜなら、分配金を出すと投資の元手が減り、運用効率が大きく損なわれるからです。
参照:交付目論見書
ニッセイ・インド厳選株式ファンドは分配金を出すタイプとなっています。分配金を出すことで運用の原資が減るため運用効率が悪くなっています。
なぜ分配金を出しているのでしょうか。投資家のためを思うなら分配金は出さないべきだと言えます。
高すぎる手数料
ニッセイ・インド厳選株式ファンドの手数料も確認しておきましょう。投資信託では主に3つの手数料があります。
- 購入する時の手数料
- 保有している間の手数料
- 解約する時の手数料
以上の3つですが、手数料が安い投資信託であれば①③の買う時・解約する時の手数料がかからないものもあります。
果たしてニッセイ・インド厳選株式ファンドの手数料水準はどの程度でしょうか?新興国ファンドの投資信託「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」と比較してみましょう。
ニッセイ・インド厳選株式ファンド | eMAXIS Slim新興国株式インデックス | |
購入時の手数料 | 3.85% | なし |
保有時の手数料 | 年1.925% | 年率0.1870% |
解約時の手数料 | なし | なし |
eMAXISは特に手数料が安い投資信託のため差がとても大きくなっています。ですが、それとは関係なくニッセイ・インド厳選株式ファンドの手数料は高いです!
いわゆる投資信託で購入時手数料3.85%の水準のものは中々ないですし、保有時の手数料も高いです。
手数料の水準は非常に高いというのがニッセイ・インド厳選株式ファンドの手数料に関する結論です。
ニッセイ・インド厳選株式ファンドの運用成績は
それでは、いよいよニッセイ・インド厳選株式ファンドの運用成績を見てみましょう。
参照:交付目論見書
青い線が基準価格で水色の線が税引前分配金再投資基準価額となっています。上下しながら最終的には横ばいの推移となっていますが、データで詳しく見てみましょう。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | |
トータルリターン | 14.13% | 15.22% | 6.44% |
標準偏差 | 18.75 | 28.90 | 25.91 |
シャープレシオ | 0.75 | 0.53 | 0.25 |
1年~3年の数字は大きくなっていますが、これはコロナショックから回復しただけですので参考になりません。
5年平均で見ると年率6.44%となっています。この数字だけで見ると悪い訳ではありませんが、合わせて標準偏差も確認すると25.91となっています。
この値は非常に大きくリスクが高い事を示しています。さらに、シャープレシオを確認すると0.25と1を大きく下回っていますので、とっているリスクに対してリターンを得られていないのがニッセイ・インド厳選株式ファンドの特徴です。
標準偏差:平均からのばらつきを表す。数字が大きければリスクが大きいことを示す。
シャープレシオ:リスクに対するリターンの割合を示す。1を超えていれば効率的な資産運用ができている。
インド株式市場と比較する
ニッセイ・インド厳選株式ファンドは投資先の銘柄を厳選することでインド株式市場全体の動きより良い成果を目指すファンドです。
実際の結果はどうだったのでしょうか?インドの株式指数と比較してみましょう。
参照:モーニングスター
オレンジ色の線がインド株式市場の推移を表すMSCIインドです。ピンク色の線がニッセイ・インド厳選株式ファンドです。
ニッセイ・インド厳選株式ファンドはインド株式市場を常に下回っています。本来であればインド株式市場を上回る成果を目指すはずですが、その目的に遠く及ばないのが現状です。
これでは高い手数料を払ってまでニッセイ・インド厳選株式ファンドを選ぶ理由はないですよね。残念ながらニッセイ・インド厳選株式ファンドを選ぶメリットはないと言えます。
インドに投資するアクティブファンドと比較
前回分析した高成長インド・中型株式ファンドもわざわざ選ぶメリットはないという結論でしたが、同じくインドに投資するアクティブファンドである両者を比べてみましょう。
どうしてもアクティブファンドに投資したければニッセイ・インド厳選株式ファンドと高成長インド・中型株式ファンドのどちらが良いのでしょうか。
参照:モーニングスター
青色の線がインド株式市場全体の動き、ピンク色の線がニッセイ・インド厳選株式ファンド、オレンジ色の線が高成長インド・中型株式ファンドです。
比較すると、高成長インド・中型株式ファンドはニッセイ・インド厳選株式ファンドを上回っています。
どうしてもアクティブファンドに投資したい方は高成長インド・中型株式ファンドを選ぶでしょう。
いずれにせよ、ニッセイ・インド厳選株式ファンドを選ぶ理由はないというのが結論です。
まとめ
最後にニッセイ・インド厳選株式ファンドについてまとめておきます。
- インド株式を厳選して投資する
- 投資先は約43と非常に少なくリスクが大きい
- 実績もリスクが大きく不安定
- 取っているリスクの割にリターンは得られていない
- 分配金を出すため運用効率が悪い
- 手数料が高い
- インド株式市場全体の動きに負けている
- 同じアクティブファンドの中でもパフォーマンスは低い
残念ながらあえてニッセイ・インド厳選株式ファンドを選ぶ理由はないですね。
新興国に投資をして高いリターンを得たいのであればインド以外の国も有望です。おすすめの新興国ファンドは以下のランキングで紹介していますのでそちらもぜひ一読してみて下さい。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。