投資をする上で、全てを安全資産で運用することは悪くありませんが、一部を少々リスクの高い投資対象に振ることで、最大リターンを高める努力もしていきたいものです。
そんな時に比較的高いリスクを持つ投資対象の選択肢として、新興国投資信託、ETFなどが代表格です。
筆者自身も、魅力的な新興国投信を常に探していますが今回も調査の一環として、「DIAMベトナム株式ファンド(愛称:ベトナムでフォー)」について書いてみたいと思います。
「ベトナムでフォー」という愛称は非常にウィットに富んでいますね。
ベトナム投信を検討する前に、ベトナムの経済事情、株式市場事情についても把握しておきましょう。
→ チャートで見る、ベトナム株式市場!VN指数は健全に成長。2021年以降の買い方はヴァンエック ベクトル ベトナムETF(VNM)がおすすめの選択肢?
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それでは、DIAMベトナム株式ファンドについて調べていきます。
DIAMベトナム株式ファンドとは?
細かい詳細は「DIAMベトナム株式ファンド」の目論見書を読むのが早いでしょう。この記事ではポイントのみに焦点を当てていきます。
簡単な概要としては、「DIAMベトナム株式ファンド」は、今後成長が見込まれるベトナム株に投資を行い、中長期的な信託財産の成長を目指し積極的な運用を行っていくファンドです。
とにかくベトナムの成長性の高い株を買っていくファンドです。運用は「アセットマネジメントONE株式会社」です。
グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド、新興国ハイクオリティ成長株式ファンドなど海外株式ファンドを複数持っているファンドです。
「DIAMベトナム株式ファンド」の規模は2023年02月24日時点で80.1億円です。小規模ファンドですね。組み入れ銘柄は以下の通りです。大手企業で固まっていますね。国営企業の面々が揃います。
順位 | 銘柄 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | ホアファットグループ | 素材 | 7.72% |
2 | ベトナム産業貿易商業銀行 | 銀行 | 7.14% |
3 | ビグラセラ | 資本財 | 6.47% |
4 | ベトナム外商銀行 | 銀行 | 6.35% |
5 | ビングループ | 不動産 | 5.69% |
6 | ホーチミン市住宅開発商業銀行 | 銀行 | 5.20% |
7 | ビンホームズ | 不動産 | 5.19% |
8 | ビンコム・リテール | 不動産 | 4.81% |
9 | ベトナム乳業 (ビナミルク) | 食品・飲料・タバコ | 4.36% |
10 | ペトロベトナム・ガス | 公益事業 | 4.18% |
ベトナム投信を今まで複数分析していますが、皆同じようなポートフォリオですね。やはり新興国といえば、国営の安定した企業に投資をしてボラティリティを抑える必要がありますからね。但し、新興国に投資をしている割にはリターンは限定的な気がします。
例えば以下は他のベトナム投信のポートフォリオです。
順位 | 銘柄 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | FPT | テクノロジー・ハードウェアおよび機器 | 8.70% |
2 | ベトナム外商銀行 (ベトコムバンク) | 銀行 | 8.10% |
3 | ビンホームズ | 不動産 | 7.90% |
4 | ビングループ | 不動産 | 7.00% |
5 | ホアファットグループ | 素材 | 6.50% |
6 | モバイル・ワールド・インベストメント | 小売 | 5.80% |
7 | ビナミルク(ベトナム乳業) | 食品・飲料・タバコ | 5.50% |
8 | 軍隊商業銀行(ミリタリー・コマーシャル) | 銀行 | 4.40% |
9 | ベトナム投資開発銀行 | 銀行 | 3.80% |
10 | ベトナム産業貿易商業銀行 | 銀行 | 3.60% |
順位 | 銘柄 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | FPT | テクノロジー・ハードウェアおよび機器 | 9.30% |
2 | ベトナム外商銀行 (ベトコムバンク) | 銀行 | 8.60% |
3 | ビンホームズ | 不動産 | 7.60% |
4 | モバイル・ワールド・インベストメント | 小売 | 7.50% |
5 | ビングループ | 不動産 | 7.10% |
6 | ホアファットグループ | 素材 | 5.50% |
7 | ビナミルク(ベトナム乳業) | 食品・飲料・タバコ | 5.00% |
8 | 軍隊商業銀行(ミリタリー・コマーシャル) | 銀行 | 4.70% |
9 | ベトナム投資開発銀行 | 銀行 | 3.80% |
10 | ベトナム産業貿易商業銀行 | 銀行 | 3.20% |
DIAMベトナム株式ファンドはFPTが入っていないところが他2ファンドとの大きな相違ですね。
DIAMベトナム株式ファンドの販売手数料は3.3%(税抜3.0%)を上限、信託報酬はファンドの純資産総額に対し、年1.903%(税抜1.73%)。CAMベトナムファンドの信託報酬は年2.618%(税抜2.38%)でこれが今のところ一番高いですね。販売手数料は一律です。
ベトナムでフォーの運用実績
DIAMベトナム株式ファンドの基準価額はコロナショックで大きく凹んだ時期がありましたが、異次元の金融緩和でその後は上昇。
これは世界的に同じ動きをしています。ひとまず基準価額に大きな問題点は見られません。しっかりコロナ前の水準を上回っていますね。
ここまでが概要です。ファンド選びをする上で重要な指標を見ていきましょう。トータルリターン、標準偏差とシャープレシオを見ていきます。
年 | 1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
10年 (年率) |
トータルリターン | -13.93% | 14.32% | 3.90% | — |
標準偏差 | 22.83 | 29.85 | 25.92 | — |
シャープレシオ | -0.61 | 0.48 | 0.15 | — |
トータルリターン
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | -13.93% | 14.32% | 3.90% | — |
勝率を見ていきたいので長期で見たいですが、5年で3.90%とリターンは低くなっています。2022年の下落が大きく響いていますね。
標準偏差
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
標準偏差 | 22.83 | 29.85 | 25.92 | — |
標準偏差とは、平均からのばらつきを表しますが、よく分からなければ標準偏差が大きいとリスクが高いということを覚えておいてください。
標準偏差は5年で25.92。非常に高い水準であり、値動きが激しい投資対象を選好して運用を行っていることがわかります。新興国に投資をする代表ETFのバンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)ですら、標準偏差は15-18です。
3年を見ると30に届きそうな29.85です。これは異常事態レベルの数字です。リスクの高い投資先であることは理解しましょう。そのぶん、高いリターンに魅力がある市場であることも理解できます。
シャープレシオ
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
シャープレシオ | -0.61 | 0.48 | 0.15 | — |
続いて、シャープレシオを見て下さい。これはリスクに対するリターンの割合を示しています。難しければ、とりあえず1を超えていると優秀な商品だと思って下さい。全ての期間で1を大きく下回り1年だと▲0.61%となっています。
長期で見た数字が正確な勝率となります。
DIAMベトナム株式ファンドの場合は5年で0.15と1を大きく下回っています。つまり、とっている大きなリスクの割にはリターンが大したことが無いというのがこのファンドの特徴です。
指数を上回ることはできているのか?
アクティブファンドに求められるのは、「指数を超えること」です。指数を超えられないのであれば、投資家からすればインデックスに投資する以外選択肢がないわけです。
ベトナム代表指数はVN指数ですが、それに類似する商品はありませんので、似た戦略としてベトナム大型企業のみ組み入れている「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」(VNM)と比較してみます。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | |
ベトナム株ファンド(大和アセットマネジメント) | -9.51% | 13.16% | 3.00% | — |
ベトナム・ロータス・ファンド | -17.50% | 18.58% | 5.92% | — |
DIAMベトナム株式ファンド | -13.93% | 14.32% | 3.90% | — |
CAMベトナムファンド | -16.04% | 8.41% | 0.56% | 7.52% |
成長株インカムファンド | -14.19% | 11.77% | 2.07% | — |
ヴァンエック ベクトル ベトナムETFベトナム | -34.77% | -4.29% | -7.24% | -3.03% |
指数は超えていますね。「CAMベトナムファンド」、「ベトナム成長株インカムファンド」、「ベトナム・ロータス・ファンド(愛称 : ロータス)」、「ベトナム株ファンド(大和アセットマネジメント)」も超えています。どれも同じようなリターンですね。DIAMベトナム株式ファンドがこの中では一番優秀です。
ベトナムに投資しているファンドでおすすめのものについては以下でランキング形式でお伝えしています。参考にしていただけますと幸いです。
DIAMベトナム株式ファンドは楽天証券/SBI証券などで買えるのか?
まとめ
総じて悪くないリターンではありますが、あまりにも標準偏差が高いことや、シャープレシオを見る限り、DIAMベトナム株式ファンドは無理して投資する先ではないと思いました。もっと良い先があります。
また、新興国に投資をする割には、2020年の大きな追い風があったにも関わらず、10年スパンでは控えめなリターンとなっています。もう少し高いリターンを期待したいですね。リスクリワードが合いません。
また、ベトナムで個別株を買う戦略を考えても、これから新興国株式に追い風の時流が流れそうですが(2022年初頭頃から)、度重なる金融緩和で、ベトナムの人気株はすでに高値になっているようにも見えます。
新興国株投資では、まだ放置されている割安株を狙う投資戦略が今後は功を奏しそうです。
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(新興国分析一覧)
中国 香港 インドネシア インド カンボジア シンガポール タイ
フィリピン ブラジル ベトナム マレーシア ミャンマー ラオス 南アフリカ
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個人的には、今後より世界で名を馳せていくであろう中国市場に注目しています。
【見通し良好!】中国の経済は今後どうなる?終焉と謳われた過去を払拭し中国製造2025でハイテク産業重視にシフトしてGDPで世界の覇権を握る!
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。