新興国投資信託

新興国株式に丸ごと投資できると評判の「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」を徹底評価!今後の見通しを含めて紐解く。

新興国株式に丸ごと投資できると評判の「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」を徹底評価!今後の見通しを含めて紐解く。

eMAXIS Slimは低コストでインデックスに投資できると評判の三菱国際投信が運用するシリーズです。

本日はeMAXIS Slim新興国株式インデックスについて、

✔︎ どのようなインデックスに連動しているのか?
✔︎ 投資している国はどのような構成なのか?
✔︎ どのような銘柄が構成上位なのか?
✔︎ リターンはどうなっているのか?
✔︎ 今後の見通しは明るいのか?

という点についてお伝えしていきたいと思います。

MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み、円換算ベース)に連動を目指す投資信託

eMAXIS Slim 新興国株式インデックスが連動するインデックスはMSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)です。新興国株式のインデックスとしては主に以下の二つが存在しています。

・FTSEエマージングマーケットインデックス
・MSCIエマージングインデックス

両社は共に時価総額加重平均指数ですが韓国を組み入れているかどうかという違いがあります。以下は両社を比較した記事ですので参考にしていただければと思います。

 

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MSCIエマージング・マーケット・インデックスの算出しているMSCI社の説明は以下となります。

 

The MSCI Emerging Markets Index captures large and mid cap representation across 27 Emerging Markets (EM) countries*. With 1,424 constituents, the index covers approximately 85% of the free float-adjusted market capitalization in each country.

参照:MSCI

 

27の新興国の大型、中型株を組み入れて時価総額全体の85%を表現しています。構成銘柄数は1424銘柄となっています。

free float-adjustedと記載されているので浮動株の時価総額加重平均指数となります。つまり、市場で取引できる株式から算出される時価総額をもとに指数を算出しています。

新興国の中には政府が取引できる株式を制限していたり、企業同士で株式を持ち合い市場に流通していない株式が数多く存在しているので、それらの株式は算出から除くということです。

米ドルと日本円の関係も大きな影響を持つ

更に連動を目指す指数が円建ということも見逃せません。つまり円高に振れるとリターンが減少することを意味します。以下は2021年6末時点の目論見書を基にしたeMAXIS Slim新興国株式インデックスの通貨別組み入れ比率です。

組入通貨 比率
香港ドル 23.0%
米ドル 20.2%
ニュー台湾ドル 12.2%
韓国ウォン 11.7%
インドルピー 7.8%
中国元 4.7%
ブラジルレアル 4.3%
南アフリカランド 3.3%
サウジアラビアリヤル 2.5%

 

香港ドルと米ドルで約45%の構成比率となっています。香港ドルは米ドルとペッグしていますので実質的に米ドルとの関係が非常に重要になってきます。

つまりドル高円安になるとeMAXIS Slim新興国株式インデックスの基準価格は上昇し、ドル安円高になるとeMAXIS Slim新興国株式インデックスの基準価格は下落することとなります。

以下はドル円の超長期チャートですが、基本的にはドル円は下落貴重をたどっています。

 

ドル円の超長期レート

円建のリターンはどちらかというと下方リスクをはらんでいるといえるでしょう。理由としては以下の点が挙げられます。

✔︎ 米国はインフレが進み通貨価値が下落しているが対して日本はデフレが進んでいる
✔︎ 経常収支は米国は赤字なのに日本は黒字が継続し拡大している

インフレというのはモノやサービスが通貨に対して相対的に大きくなる減少です。つまり米国は継続的に通貨価値が下落しています。一方、デフレの日本は通貨価値が上昇しているのです。この差は長期的に円高、ドル安方向に進む圧力になります。

また、経常収支差も大きな要因です。米国は経常収支つまり海外に対してお金が流出しています。米ドルを獲得した国では自国通貨に変換するために米ドル売り、自国通貨買の圧力が常に発生します。

一方、日本は経常収支黒字国です。海外から獲得した通貨を自国通貨である円に変換する圧力が存在するのです。つまり経常収支赤字国に対して黒字国の通貨の方が高くなる圧力が常に働くこととなります。

短期的な動向を読むのは不可能ですが長期的には円高になると筆者は睨んでいます。

中国を中心とし韓国も含めた東アジアを中心とした構成国比率

MSCIは27カ国の新興国を組み入れていると記載しましたが、中国、台湾、韓国の上位3カ国で約65%を占めています。インドとブラジルと南アフリカを加えると合計80%以上の構成比率となります。

以下はもう一つの新興国インデックスであるFTSEエマージングマーケットインデックスとの比較です。大きな特徴はMSCIエマージング・マーケット・インデックスは韓国が含まれている点がFTSEエマージングマーケットインデックスと大きく異なる点です。

 

FTSEエマージングマーケットインデックスとMSCIエマージングインデックスの構成国比率の比較
構成順位 MSCIエマージング・マーケット・インデックス
1位 中国 37.43%
2位 台湾 13.91%
3位 韓国 13.09%
4位 インド 9.85%
5位 ブラジル 5.17%
6位 南アフリカ 3.51%
7位 ロシア 3.35%
8位 サウジアラビア 2.88%
9位 メキシコ 1.74%
10位 タイ 1.60%
その他 7.47%

 

韓国は日本ど同様の1人あたりGDP水準となっているので、新興国と分類するのは正直疑問符です。

韓国の1人あたりGDPの推移

成長力は既に低くなっており新興国としての要素を満たさない国が組み入れられています。

eMAXIS Slim新興国株式インデックスの構成上位銘柄

以下は構成上位10銘柄です。1400銘柄以上組み入れられているにも関わらず、上位10銘柄で25%の構成比率があるのは驚きですね。

台湾の半導体製造会社であるTSMCがトップとなっています。そのあとはテンセント、アリババという中国のテックジャイアントが占めています。4位にサムスンが入っているのが特徴的な点です。

MSCIエマージングインデックスの構成上位銘柄
1位 TSMC
台湾・情報技術
5.90%
2位 テンセント
中国・通信
4.90%
3位 アリババ
中国・一般消費財
4.80%
4位 サムスン
韓国・情報技術
3.90%
5位 美団
中国・一般消費財
1.70%
6位 ナスパーズ
南ア・一般消費財
1.00%
7位 VALE
ブラジル・素材
1.00%
8位 リライアンス
インド・エネルギー
0.90%
9位 中国建設銀行
中国・金融
0.80%
10位 インフォシス
インド・情報技術
0.80%
10社合計 25.7%

 

組み入れられている産業別の構成比率

以下はeMAXIS Slim新興国株式インデックスの産業別組み入れ比率です。

業種 構成比率
銀行 12.5%
小売 10.7%
半導体・半導体製造装置 8.7%
メディア・娯楽 8.6%
テクノロジ・ハードウェア・機器 8.5%
素材 8.1%
エネルギー 4.9%
自動車・自動車部品 3.7%
医薬品 3.6%
食品・飲料・タバコ 3.4%

 

一見すると銀行が一番多く入れますが、3位の半導体、4位のメディア・娯楽、5位のテクノロジーを合わせると25.8%となります。

つまり、ハイテクセクター合計で4分の1をしめて最大のポーションとなっています。新興国の発展にテクノロジーが如何に貢献しているかを読み取れます。

低い手数料体系

eMAXIS Slim新興国株式インデックスはインデックスに連動するよう組成されているパッシブファンドです。パッシブファンドは調査等が必要ないため手数料の低さが求められます。

多くの投資信託で設定されている購入時手数料は存在しません。また、保有することで日々発生する信託報酬は非常に少なくなっています。

eMAXIS Slim新興国株式インデックスの信託手数料は年率0.187%となっています。

 

eMAXIS Slim 新興国株式インデックスのリターン

以下は運用が設定された2017年7月からのeMAXIS Slim 新興国株式インデックスのリターンが以下です。

eMAXIS Slim新興国株式インデックスのリターン

4年間で1.4倍と、正直物足りない成績となっています。ただ、ベンチマークであるMSCIエマージング・マーケット・インデックスと連動している点は評価できます。では、MSCIエマージング・マーケット・インデックスの2006年6月からの長期のリターンを見てみましょう。

 

青:MSCIエマージング・マーケット・インデックス(新興国)
黄:MSCI All Country World Index (全世界)
緑:MSCI World (先進国)

MSCIエマージングインデックスの株価推移

2006年以降でみても全世界の株価に対して劣後した成績となっています。特に2010年代のリターンは著しく悪い成績となっています。

更に長く2000年からのデータとして比較すると以下となります。2000年からでみると新興国株式のリターンは先進国株式のリターンを大きく上回っているのです。

つまり、2000年代に上昇した分を2010年代に消化していたとみることができます。

3年
(年率)
5年
(年率)
10年
(年率)
2000年〜
(年率)
新興国
リターン 11.27% 13.03% 4.28% 9.72%
標準偏差
(リスク)
18.79% 16.23% 17.66%
先進国 リターン 14.99% 14.83% 10.65% 6.50%
標準偏差
(リスク)
18.21% 14.68% 13.93%
全世界 リターン 14.57% 14.61% 9.90% 6.57%
標準偏差
(リスク)
17.95% 14.52% 14.04%

 

ただ、上記の通り標準偏差つまり価格の値動きの幅は大きくなっています。ある程度大きな価格変動を許容する必要があります。

eMAXIS Slim 新興国株式インデックスの今後の見通し

先ほどのリターンでもお伝えした通り、強い株式市場はローテーションしています。直近でみても先進国と新興国が入れ替わって世界の株式市場を牽引しています。

1990年代:先進国株式市場
2000年代:新興国株式市場
2010年代:先進国株式市場
2020年代:新興国株式市場!?

2000年代に新興国株式は大きく上昇しましたが、リーマンショック以降は先進国の金融緩和によって先進国株式市場が上昇していきました。

ただ、現在先進国株式は割高な状態となっています。一方、新興国は経済規模で世界の約半分をしめるにも関わらず株価は割安に放置されたままとなっています。

2020年代は再び新興国株式の時代が到来すると考えています。

 

https://indexnz.com/emerging-prospect/

 

まとめ

eMAXIS Slim新興国株式インデックスについてまとめてきました。内容としては以下となります。

✔︎ MSCIエマージングマーケットインデックス(円建・配当込み)に連動
✔︎ ドル円のレートに影響される
✔︎ BRICS+韓国で80%以上を占める
✔︎ 構成上位銘柄はハイテク銘柄が多く占められている
✔︎ 手数料は非常に低い
✔︎ 直近10年のリターンは低いが20年でみると高いリターン
✔︎ 今後は新興国の時代到来を受けて期待ができる

新興国全体に投資できる丸ごとパックとしては優秀ですが、ロシアや韓国、ブラジルといった株式市場に期待が持てない劣等生を含んでいる点は難点です。

以下では魅力的な新興国に集中的に投資するのに適したファンドをランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います!

新興国投資で投資で大きく資産を増やす投資先とは?投資対象・運用戦略・期待リターンから厳選。
新興国の資産運用

 

 

皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。

先進国と新興国の経済成長率の比較

経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。

新興国の経済成長率の推移を先進国と比較

 

一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。

青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体

先進国に対して劣後する新興国株式市場

参照:MSCI

 

強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。

そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。

 

また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。