先進国の経済成長率が鈍化していく中、今後主役を担っていくのは新興国への投資です。そして、その中でも注目度が高いのがインド株式市場です。
「インド株へ投資したいけれど買い方が分からない。」
「日本からでも簡単にインド株を買えるの?」
「どうやって証券会社や投資信託を選べばいいの?」
インド株は日本にいながら誰でも投資可能です。超簡単なインド株の買い方を解説します。
ただ残念ながら、現在インド株は買い時ではありません。今からインド株を購入するのはおすすめしません。その理由も合わせて解説していきます。
・インド経済の成長性
・インド株の超簡単な買い方
・投資信託/ETF/証券会社の解説
・今インド株投資がおすすめできない理由
インドの基本情報
まずはインドの概要について確認しておきましょう。
国名 | インド India |
---|---|
面積 | 328万7,469平方キロメートル |
人口 | 13億6,641万人 |
首都 | ニューデリー |
主な宗教 | ヒンドゥー教、イスラム教 |
1人当たり名目GDP | 2,172ドル |
国土は328万平方キロメートルと非常に大きく、中国の1/3ほどの広さで世界で7番目に大きい国となっています。
そして、人口は13億人と非常に多く中国の14億人に迫っています。3位のアメリカで3億人程度なので3位以下を大きく引き離した世界第2位となっています。
国土も広く人口も多いインドは正に大国です。人口が多く貧困層もいるため、1人当たり名目GDPこそ1,965ドルと世界148位(全198)ですが、逆に言えば成長余力が大きく残されています。
今後のインド経済はどうなる?
インド経済の特徴とは
BRICSの一つにも数えられ、新興国として経済成長が期待されているインドですが本当にこれから成長していくのでしょうか。
まずは、インドの産業構造を確認してみましょう。
第一次産業のGDPに占める割合は2017年で16.3%と決して高くありません。ですが、就労者数に占めるシェアは高く、これは生産性の低い仕事に数多くの人が従事していることを意味します。そのため、インドの1人当たり名目GDPは低くなっているのです。
続いて、第二次産業の割合は26.6%です。これは、中国やASEANの国々と比べると低い水準となっています。製造業では鉄鋼やアルミニウム、自動車など一部の産業のみが発達しているのがインドの特徴です。
そして、第3次産業は47.9%と非常に高い値となっています。1990年代以降インドではITを中心としたサービス業が発展してきました。生産性の高いサービス業のシェアが高いのは喜ばしいことではありますが、同時に高いスキルを要求される産業でもあり、一部の人しか参入できません。
「農村で生産性の低い農業に従事する低所得者層」と「ITなど生産性の高い業務に従事する高所得層」の間で貧富の差が広がっているのがインド経済の課題とも言えるでしょう。
インド経済の将来性
貧富の差の広がりを抑えるために、モディ政権では「Make in India」として製造業の拡充に力を入れています。
国として経済成長していくためには、一部の高いスキルを持った高所得者層の生産性だけが上がっていくのではなく、中間所得者層を増加させていくことが必要だからです。
そして、インドでは今後の中間所得者層が順調に増加していくことが予想されています。その推移がこちらです。
2030年には中間所得者層が11.5億人、高所得者層が1.3億人と合わせて12.8億人です。これは人口の80%以上を占めており、国全体が豊かになっていくことが期待されます。
そして、この勢いのまま成長していくとインド経済はどうなっていくのでしょうか。2030年と2050年の世界のGDPランキング(予想)を見てみましょう。
なんとインドは2030年には日本を抜いて世界第3位、2050年にはアメリカを抜いて世界第2位になっています。
インド経済が今後数十年間にわたって急激に成長していくのはまず間違いないでしょう。
インドの経済が強いことは分かりましたが、新興国投資では経済と合わせて株式市場の確認も必須です。どんなにいい国であったとしても株式市場が整備されていなければ投資できないからです。
インド株式市場の概要
インドには多数の証券取引所がありますが主な証券取引所は2つです。
- ボンベイ証券取引所
- ナショナル証券取引所
ボンベイ証券取引所の概要
参照:BSE
ボンベイ証券取引所(Bombay Stock Exchange Limited)はムンバイにあるインド最大の証券取引所です。もともとはムンバイ証券取引所(The Stock Exchange, Mumbai)という名称でしたが2005年に株式会社化された際に変更されました。
代表的な株価指数は「S&P BSE SENSEX」です。ボンベイ証券取引所に上場する銘柄のうち、取引規模や流動性、業種などを代表する30銘柄の時価総額型加重平均指数です。基準日は1979年4月3日でこの日の時価総額が基準値の100となっています。
銘柄選定には浮動株の割合なども考慮されるため比較的頻繁に銘柄の入れ替えが行われる指数です。業種としては通信や金融の割合が多い傾向となっています。
また、S&P BSE SENSEXは他にも以下のような呼ばれ方をします。
- BSE SENSEX
- BSE30
- SENSEX30
- SENSEX
- S&P BSE センシティブ指数
ナショナル証券取引所の概要
参照:NSE
ナショナル証券取引所(National Stock Exchange of India)は1992年に設立されたムンバイにある証券取引所です。インド国立証券取引所とも呼ばれます。代表的な株価指数は「NIFTY50」となっています。
NIFTY50はインド国立証券取引所に上場する銘柄の内、代表的な50銘柄の株価を時価総額比率で加重平均したものです。基準日は1995年11月3日となっており、その日の値を1000として計算されています。
また、以前はCNX NIFTYとよばれていたのでそのように呼ばれることもありますが、2015年にNIFTY50に名称変更されています。
超簡単なインド株・ETFの買い方
日本からインド株は買える?
株式市場はきちんと成立しているようですが、果たして日本から日本人が簡単に投資できるのでしょうか?
残念ながら外国人である日本人がインドの個別株を買うことは出来ません。ですが、インド株に投資する方法がない訳ではありません。インド株を買う方法は3つあります。
- ADR(米国預託証券)
- ETF
- 投資信託
これらは日本の証券会社で普通に買うことができますが、証券会社によって扱っている商品や手数料に違いがあります。主な取扱会社は以下の3つですのでインド株投資を検討されている方は下記の証券会社を検討してみて下さい。
- 楽天証券
- SBI証券
- マネックス証券
それでは、それぞれの購入方法について詳しく見ていきましょう。
ADR(米国預託証券)
ADRとはAmerican Depositary Receiptの頭文字で日本語では米国預託証券と呼ばれるものです。一般の外国人がインドの個別株を買うことは出来ませんが、米国の預託銀行がインド株を購入しその預かり証券を発行して米国株式市場へ上場しています。
ADRはドル建てでの取引となるため、容易に外国株式に投資する方法として広く浸透しています。ADRを利用することで間接的にインドの個別銘柄に投資することが可能です。
ただし、銘柄数はまだまだ少なく、日本から購入可能な銘柄は最大数を誇る楽天証券でも14種類となっています。
RDY | DOCTOR REDDY’S LAB-ADR | 医薬品 |
HDB | HDFC BANK LTD-ADR | 金融(銀行) |
IBN | ICICI BANK LTD-SPON ADR | 金融(銀行) |
INFY | INFOSYS TECHNOLOGIES-SP ADR | ソフトウェア・サービス |
MTE | MAHANAGAR TELEPHONE-ADR | 通信サービス |
PTI | PATNI COMPUTER SYSTEMS-ADR | ソフトウェア・サービス |
REDF | REDIFF.COM INDIA LIMITED-ADR | ソフトウェア・サービス |
SAY | SATYAM COMPUTER SERVICES-ADR | ソフトウェア・サービス |
SIFY | SIFY TECHNOLOGIES LTD -ADR | ネットワーク |
SLT | STERLITE INDUSTRIES INDI-ADR | その他製造 |
TTM | TATA MOTORS LTD-SPON ADR | 自動車 |
TCL | TATA COMMUNICATIONS LIMITED | 通信サービス |
WIT | WIPRO LTD-ADR | ソフトウェア・サービス |
WNS | WNS HOLDINGS LTD-ADR | 情報処理サービス |
一覧にすると多く見えるかもしれませんが、14銘柄からしか選べないのでほぼ選択肢はないです。
一応投資は可能ですが、ADRでのインド株投資はおすすめしません。
ETF
インド株へはETFでの投資も可能です。どうしてもインド株に投資したいならETFの方がおすすめです。
ETFは上場投資信託のことで、証券会社から超簡単に購入することができます。ETFでは株価指数に連動するように設計されていますので、先程出てきた「S&P BSE SENSEX」や「NIFTY50」に連動する商品が販売されています。
- NEXT FUNDS インド株式指数・Nifty 50連動型上場投信(1678)
- NEXT NOTES インドNifty・ダブル・ブル ETN(2046)
- 等々
ETFでは、個別の企業の成長どうこうよりも株式市場全体が成長していくことに期待して購入することになります。さらに、手数料が安いのも魅力です。
ただし、現在はインドの株式市場は値上がりし過ぎていて高値掴みしてしまう状況ですので、購入はおすすめしません。
投資信託
インド株で運用する投資信託も販売されています。ETFでは株式市場全体に投資する形でしたが、投資信託では独自に選定したインド株に集中投資しているものもあります。
例えば以下のような投資信託があります。
- HSBCインドオープン
投資対象
・インド国内の企業
・インド経済に関連し、また大部分の収益をインド国内の活動から得ている企業
詳細記事はこちら
- 高成長インド・中型株式ファンド
投資対象
・インドの中型株式を主として投資
・リーディング企業またはそれに準ずる企業
詳細記事はこちら
このような投資信託で運用すればインド株に投資することも可能です。ですが、やはり今インド株は割高ですのでこれから投資を始めるのはおすすめできません。
その他にも以下のようなインド特化の投資信託があります。
今インド株投資をおすすめしない理由
インド株に投資しようと思えばETFや投資信託を利用して簡単に始めることができます。ですが、現在インド株は非常に割高ですのでおすすめしません。
割安度を測る代表的な株価指標であるPERを見て下さい。数字が小さければ割安で数字が高ければ割高です。
インド | 日本 | 中国 | |
2023年 | 20.8 | 12.9 | 11.5 |
2021年 | 32.4 | 19.1 | 16.2 |
2017年 | 22.6 | 15.3 | 12.2 |
2013年 | 15.7 | 24.6 | 9.9 |
2023年のインドはPER20.8と日本や中国と比べて一番割高になっています。
アベノミクス相場に沸いていた日本の2013年に近い水準となっており大変割高です。割高な水準で株を購入すると暴落して大損してしまう可能性があります。
確かにインドは今後経済成長していくでしょうし、投資先の国としては悪くないのですが、今から投資をスタートするのは危険性もあります。
これから新興国投資を始めるのであれば、もっとおすすめできる新興国があります!新興国投資で重要なことは、国がこれから経済成長していき、なおかつ株がまだ安く買えることです。
例えば、中国なんかはPERが11.5と株がまだ割安ですし、世界No.1の経済大国になると言われているので新興国投資が上手くいく条件を満たしています。
具体的な投資先については以下の新興国ファンドランキングで紹介していますのでぜひ参考にしてみて下さい。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。