これから経済成長していく新興国に投資することでハイリターンを狙える新興国投資は魅力的です。
代表的な新興国はBRICSなどですが、今回はインドに投資する投資信託「新生UTI・インドファンド」について解説していきます。
「果たしてインドは今後経済成長していくのか?」
「それに合わせて株価は上昇していくのか?」
「新生UTI・インドファンドの特徴とは?」
一見良くみえる新生UTI・インドファンドですが、表面だけ見て中身を確認しないのは非常に危険です。
きちんと分析していきたいと思いますので、新生・UTIインドファンドをご検討の方は参考にして頂ければ幸いです。
また、インド株式市場全体に関する詳細はこちらをご一読ください。
果たしてインドは経済大国になれるのか?
生産年齢人口は増える?減る?
まず前提としてインドという国が経済成長していかなければ、インド株投資でハイリターンを得る事は叶いません。インドが今後経済成長して経済大国になれるのか見ていきましょうう。
経済成長に欠かせない要素の一つは人口です。今後インドの生産年齢人口はどうなっていくでしょうか。以下がインドと主要国の人口の推移を比較したものです。
参照:販売用資料
生産年齢人口は今後も増え続けていき2050年まで増加していく予想です。中国を抜き世界1位になることが見込まれています。
これは申し分ない結果であり人口の面から見るとインド経済の成長には期待できそうです。
中間所得層の拡大
さらにインドでは雇用機会の拡大を背景に中間所得者層が増加すると考えられています。
参照:販売用資料
それぞれの所得層の定義はこちらです。
高所得層 | 世帯可処分所得 35,000米ドル以上 |
---|---|
中間所得層 | 世帯可処分所得 5,000米ドル以上35,000米ドル未満 |
低所得層 | 世帯可処分所得 5,000米ドル未満 |
国が経済成長するにあたっては中間所得層の拡大が不可欠です。国内消費が活発化すると予想されることからもインド経済成長は成長すると言えます。
インド経済はどれくらい成長するのか?
今後成長していくと期待されるインド経済ですが、どれほど成長していくのでしょうか。予想数値はこちらです。
参照:販売用資料
2021年以降も6%以上の高い水準で経済成長していくことが予想されています。その結果2030年の世界の名目GDPランキングは大きく変化すると見込まれています。
参照:販売用資料
なんとインドはドイツや日本を抜き世界第3位の経済大国となっています。インド経済が成長していくのは間違いなさそうですが、だからといってインドに投資すれば必ずリターンがでるという訳ではありません。
個別の投資信託毎の分析が必須です。いよいよ新生・UTIインドファンドについて詳細を確認していきましょう。
新生・UTIインドファンドの特徴
新生・UTIインドファンドの仕組み
参照:販売用資料
新生・UTIインドファンドはファンド・オブ・ファンズ方式で運用を行います。直接、インド株に投資する訳ではなくファンドに投資することでインド株に投資します。
投資先ファンドは「Shinsei UTI India Fund (Mauritius) Limited」Class A投資証券(モーリシャス籍円建て外国投資信託)です。
新生・UTIインドファンドの委託会社(運用を指図する者)は新生インベストメント・マネジメント株式会社ですが、実際の運用を行うのは投資先ファンドの運用者であるインド国内の大手運用会社であるUTIグループです。
実質的な運用者とは?
実際の運用を務めるUTIグループとは何者なのでしょうか。
UTIアセットマネジメントはインド国内大手の運用会社であり、インド最古の投信会社です。設立は1963年、1987年まではインド唯一の投信会社でした。2003年に民営化されて以降も最も歴史の長い運用会社です。
元々は国営企業だった為、国営企業を含む多くの企業経営陣へのアクセスに強みがあります。
投資先銘柄TOP10
それでは、具体的にどんなところに投資しているのか組入れ上位10銘柄を見てみましょう。
銘柄 | 比率 | 概要 |
HDFC銀行 | 5.9 | 商業銀行。グローバルな企業に金融サービスを提供。 |
バジャジ・ファイナンス | 5.8 | 金融サービス会社。インドで事業を展開し、各種金融サービスを提供。 |
ラーセン・アンド・トゥブロ・インフォテック | 4.4 | 30か国で事業展開。世界的なテクノロジーコンサルティングおよびデジタルソリューション企業。 |
ハウジング・ディベロップメント・ファイナンス・コープ | 4.2 | 住宅ローン会社。低・中所得層向け住宅ローン及び企業向け長期貸し付けに従事。 |
コタック・マヒンドラ銀行 | 4.0 | 商業銀行。銀行や保険業をはじめとして幅広い分野の金融サービスを提供。 |
インフォシス | 4.0 | コンピューターサービス会社。ITコンサルティングおよびソフトウェアサービスを提供。 |
アストラル | 3.7 | 配管システムメーカー。住宅・工業用CPVC配管システムを製造・販売する。 |
マインドツリー | 3.0 | グローバルなIT会社。ソフトウェア開発事業を通してビジネスとテクノロジーのソリューションを配信。 |
インフォエッジ・インディア | 2.8 | 求人ウェブサイトや結婚相談業ウェブサイトを運営。 |
タタ・コンサルタンシー・サービシズ | 2.8 | ITサービス企業。全世界で包括的なITサービスを提供する。 |
中長期的(5年~10年)に成長していく分野で中小型株を重視しマーケットを上回る超過収益を狙うのが運用戦略です。
結果として、金融や情報技術分野への投資が多くなっているのが特徴です。
高額な手数料
続いて手数料水準についても確認しておきましょう。まずは、投資信託の手数料の仕組みからです。投資信託には3つの手数料があります。
- 購入時の手数料
- 保有時の手数料
- 解約時の手数料
基本的にこの3つですが、投資信託によって①~③どの手数料がかかってくるかは異なります。
ノーロードと言われる投資信託では①の購入時手数料は無料です。②の保有時手数料はどの投資信託でもかかりますが、③の解約時の手数料はかからないものも多いです。
では、新生・UTIインドファンドついて見てみましょう。新興国に投資する投資信託「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」と比較してみましょう。
新生・UTIインドファンド | eMAXIS Slim新興国株式インデックス | |
購入時の手数料 | 3.85% | なし |
保有時の手数料 | 年1.954% | 年率0.1870% |
解約時の手数料 | 0.3% | なし |
eMAXIS Slim新興国株式インデックスはインデックスファンドのため特に手数料が安くなっていますが、比較すると新生・UTIインドファンドの手数料は非常に高い事が分かります。
「手数料が高い」=「悪いコト」ではなく運用成績が見合っていれば問題ありません。という訳で続いて運用成績について見ていきましょう。
新生・UTIインドファンドの運用成績は?
R&Iファンド大賞受賞
新生・UTIインドファンドは「R&Iファンド大賞2021」の投資信託/インド株式部門において最優秀ファンド賞を受賞しています。R&Iファンド大賞の受賞はこれで10年連続となります。
さらに、これ以外にも「リフィニティブ・リッパー・ファンド・アワード2021ジャパン」の投資信託部門においても最優秀ファンド賞を受賞しています。
受賞歴は輝かしいものがありますね。
設定来の推移
それでは、実際の運用実績を確認してみましょう。設定来の推移はこちらです。
リーマンショックで1回落ち込みますが、その後は右肩上がりで成長しています。2020年にはコロナショックもありましたがその後回復しています。
ただ、分かりにくいですが右端部分を見ていただくと2021年末から失速しています。続いて、数値でも詳しく見ていきましょう。
データで見る運用成績
過去10年の運用成績はこちらです。(2022年1月末時点)
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | |
トータルリターン | ▲1.22% | 13.69% | 10.48% | 14.94% |
標準偏差 | 19.02 | 27.02 | 24.25 | 22.94 |
シャープレシオ | ▲0.06 | 0.51 | 0.43 | 0.65 |
過去1年の成績は非常に良く見えますがこれはコロナショックからの回復ですのでそのまま受け止めて良い評価をしてはいけません。
10年(年率)を見てみましょう。トータルリターンは18.82%でまずまずですが、標準偏差が23.36と非常に大きくなっています。つまり、リスクが非常に大きいということです。
※標準偏差とは?
平均からのばらつきを表す。標準偏差が大きいとリスクが大きい。
※シャープレシオとは?
リスクに対するリターンの割合。1を超えると優秀とされる。
続いてシャープレシオを見ると0.81と1を下回っています。つまり、新生・UTIインドファンドは大きなリスクを取っている割にはリターンを得られていません。
ただ大きなリターンを取るのであれば、24%以上のリターンが得られて優秀なファンドだと言えます。
他のインド投信と比較する
新生・UTIインドファンドをインド株式指数や他の投信と比較してみましょう。
ピンク色が新生・UTIインドファンドです。そして、青色の線がインド株式指数に連動する上場投信です。
比較すると新生・UTIインドファンドはインド株指数やインド株指数より低いリターンとなっています。相対的には新生・UTIインドファンドは良いファンドとはいえなさそうですね。
掲示板での口コミや評判
Yahoo finance掲示板での口コミは以下となります。
口コミ①:
インドは既に高値圏 PER21.7倍です。
今は安く見えるだけ!
口コミ②:
長期では買い場で間違いないと思います。これは米国株にも言えること。但し現在のPERは米国株より割高なので注意が必要です。
インド経済の高い成長性は既に株価に織り込まれてここまで上がってきているので、一旦は上昇も小休止かもしれません。
しかし10年先を見据えて投資していく姿勢も大切なのでぜひともホルダーの皆さんは無理のない範囲で積立投資を続けていってもらえたらと思います。
口コミ③:
淡々と積み立ててます。
最近は調整気味ですが、今年で人口世界一ですし
長い目で見れば結果が出ると信じております!
新生・UTIインドファンドを選ばない理由
受賞歴にだまされるな
なぜ選ばないのでしょうか?
新生・UTIインドファンドは確かにインド関連投資信託の中では良い運用成績を残していますが、イチ投資商品としてみた場合、特段素晴らしいものではありません。
R&Iファンド大賞を10年連続で受賞しているのも投資信託/インド株式部門があるからだと言えます。
どうしてもインドに投資したい人は選んでもいいと思いますが、筆者はインドに投資したい訳ではなく、新興国に投資してハイリターンを得るのが目的ですので選びません。
バブルに注意!上がり過ぎた株価水準
また、現在インドの株式は割高な状況となっています。代表的な株価指標であるPERを他国と比較してみましょう。
インド | 日本 | 中国 | |
2021年 | 32.4 | 19.1 | 16.2 |
2017年 | 22.6 | 15.3 | 12.2 |
2013年 | 15.7 | 24.6 | 9.9 |
PERは数字が高いと割高で、数字が小さいと割安を意味します。2021年のインドのPERは32.4でインド・日本・中国の全ての年代より高くなっています。今のインドは歴史的に見ても世界的に見てもトップクラスに割高な水準となっているわけですね。
割高ということは、インド企業の収益が増えている訳ではないのに株価だけが上がっていることを意味します。
つまり、最近のインド株の上昇はインド経済の成長に合わせた上昇ではなく、いわゆるバブルのような実態に合っていない株価上昇です。
実態が伴わないバブルはいつか弾けます。今後暴落する可能性がありますので、筆者は新生・UTIインドファンドを今買うことは絶対しないですし極力買わない事をおすすめします。
筆者がおすすめするファンドについては自身が投資しているものも含めて以下でランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
まとめ
新生・UTIインドファンドのまとめはこちらです。
- インド経済は力強く成長することが予想される
- 実際の運用者はインドの大手運用会社UTIアセットマネジメント
- 手数料は高い
- R&Iファンド大賞を10年連続受賞
- ただしあくまでインド株式部門の中で評価されているだけなので要注意
- リスクが非常に大きい
- リスクに見合ったリターンは得られていない
- インド関連投信の中では良い成績
- インド株はバブル状態なので暴落する危険性がありおすすめできない
新生・UTIインドファンドはインド関連投信の中では良い成績を残していますが、現在の状況であえてインドに投資する意味はないです。
これから運用を始めるのであれば、他の有望な新興国ファンドに投資すべきです。筆者が分析した結果を下記のランキングで解説していますのでぜひそちらもチェックしてみて下さい。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。