資産運用でハイリターンを狙うなら新興国投資がおすすめです。
ただし、新興国投資を行うファンドは、一般的な投資とは異なり手間がかかっていることが多いため手数料が高い傾向にあります。
その中で手数料が安いといわれているiTrustインド株式について、本当に手数料が安いのか、投資の内容は問題ないのか、気になる評判を解説・評価していきます。
また、インド株式市場全体に関する詳細はこちらをご一読ください。
iTrustインド株式の特徴
ピクテが提供するiTrustシリーズ
iTrustインド株式を提供しているのはピクテ投信投資顧問株式会社です。ピクテは1805年にスイスのジュネーブに設立されました。
もともとはナポレオン戦争時に貴族が自分たちの財産を守るためのプライベートバンクとして利用されていました。
そんな歴史のあるピクテが展開しているiTrustシリーズは基本的に手数料が安く、インド株式以外にも複数の商品を提供しています。
- iTrust世界株式
- iTrust新興国株式
- iTrust日本株式
- iTrustインド株式
- iTrustエコイノベーション
- iTrustスマートシティ
- iTrustセキュリティ
- iTrustティンバー
- iTrustバイオ
- iTrustプレミアム・ブランド
- iTrustロボ
- iTrust世界公益株式(為替ヘッジあり)
- iTrust世界公益株式(為替ヘッジなし)
iTrustインド株式の仕組み
iTrustインド株式はファンド・オブ・ファンズ方式での運用です。iTrsutインド株式ファンドで直接インド株に投資する訳ではなく投資先ファンドを通して運用を行います。
投資先ファンドは主に「ピクテ‐インディアン・エクイティーズ クラスZ JPY投資証券」となっており、こちらを通してインド株への投資を行います。
iTrustインド株式の運用者とは
iTrustインド株式では、投資先ファンドを運用するのはインド市場専用の専任チームです。インド人が中心となっており、投資信託には珍しく運用チームを公開しています。
ピクテ投信には総勢30名を超える新興国株式専用の運用チームがおり、インド人を中心としたインド株式運用チームをサポートする体制となっています。
組み入れ銘柄TOP10
では、そういった体制の中で具体的にどのような銘柄に投資しているのでしょうか。2022年1月時点の組入れ上位10銘柄はこちらです。
銘柄 | 比率 | 概要 |
インフォシス | 8.9 | コンピューターサービス会社。ITコンサルティングおよびソフトウェアサービスを提供。 |
HCLテクノロジーズ | 8.4 | 幅広い分野でのソフトウェア開発、エンジニアリングサービスを提供するITサービス会社。 |
HDFC銀行 | 7.4 | 幅広い金融サービスを提供する商業銀行。 |
トレント・ファーマシューティカルズ | 6.8 | 原薬の製造及び製剤処方の開発に従事する製薬会社。主な処方は、心血管薬、向精神薬、抗生物質。 |
ICICI銀行 | 4.8 | インド全土に支店網を有する商業銀行。リテール及び法人向け銀行業務のほか、投資、保険、融資などの各種サービスも提供する。 |
マリコ | 4.4 | 美容・ウェルネス分野の消費財・サービス会社。主な製品は、ココナッツ油、ヘアオイル、シラミ治療薬、高級精製食用油、柔軟剤等。 |
マルチ・スズキ・インディア | 3.9 | 自動車メーカー。インド国内の平均所得層をターゲットとした自動車をスズキ(日本)と共同で製造・販売する。 |
アルケム・ラボラトリーズ | 3.8 | ジェネリックおよびブランド医薬品の研究開発、製造、販売を手掛ける。栄養補助食品、機能性食品、健康食品なども提供。 |
コタック・マヒンドラ銀行 | 3.6 | 銀行・保険業をはじめ幅広い金融サービスを提供する商業銀行。 |
ゴドレジ・コンシューマー・プロダクツ | 3.6 | 家庭用品メーカー。化粧石鹸、化粧品、シェービングクリームなどをはじめとする各種ケア製品を手掛ける。 |
銀行やIT関連の分野が一番多くなっていますね。この二つが多いのはインド関連投資信託の中では一般的です。
一方、他の分野では医薬品や美容関連の消費財が多くなっています。これは、他のインド関連投信ではあまり見られず、iTrustインド株式の特徴です。専門のインド人運用チームがいるからこその銘柄選択だと言えます。
本当に激安!?手数料を比較してみる
続いて気になる手数料を評価してみましょう。本当に安いのでしょうか。
まず投資信託の手数料の種類は以下の3つです。
- 購入する際の手数料
- 保有している間の手数料
- 解約する際の手数料
ただし、どの投資信託でも必ず3つ必要という訳ではなく、投資信託によって必要な手数料は異なります。
それでは、iTrustインド株式の手数料はどうなっているでしょうか。新興国に投資する投資信託「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」と比較してみましょう。
iTrustインド株式 | eMAXIS Slim新興国株式インデックス | |
購入時の手数料 | なし | なし |
保有時の手数料 | 年1.4998% | 年率0.1870% |
解約時の手数料 | なし | なし |
①購入時の手数料、③解約時の手数料に関しては両者ともなしです。保有時の手数料に関してはiTrustインド株式の手数料が8倍程度高くなっている事が分かります。
一見iTrustインド株式の手数料が高く見えますが、eMAXIS Slim新興国株式インデックスはインデックスファンドのため特に手数料が安いファンドです。
iTrustインド株式を他のインド株に投資する投資信託と比較してみましょう。
iTrustインド株式 | 新光ピュア・インド株式ファンド | 野村インド株投資 | ニッセイ・インド厳選株式ファンド | 高成長インド・中型株式ファンド | |
購入時の手数料 | なし | 3.3% | 3.3% | 3.85% | 3.85% |
保有時の手数料 | 年1.4998% | 年2.06% | 年2.2% | 年1.925% | 年2.0505% |
解約時の手数料 | なし | 0.3% | 0.5% | なし | 0.3% |
iTrustインド株式の全ての手数料が一番安いことが分かります。インド関連投資信託の中ではiTrustインド株式の手数料は圧倒的に安いです。
つまり、iTrustインド株式の手数料が安いというのは本当です。ただ安かろう悪かろうでは意味がありません。運用成績はどうなっているでしょうか。
iTrustインド株式の運用成績は?
設定来の推移
設定来の運用成績はこちらです。
設定後、基本的に横ばいで推移していましたがコロナショックで落ち込み、その後回復しながら今ではコロナショック前を大いに上回る水準となっています。とはいえベンチマークにしているMSCIインド10/40株価指数に比べて大幅に劣後した成績となっています。
iTrustインド株式は2018年に設定されていて、他のインド投資信託が2000年代からあることを考えるとかなり後発のファンドだと言えます。
データで見る運用成績
続いて数値でも運用成績を見てみましょう。
1年 | 3年(年率) | |
トータルリターン | 23.37% | 10.7% |
標準偏差 | 13.60 | 25.10 |
シャープレシオ | 1.72 | 0.63 |
1年間のトータルリターンは23.37%と大きく見えますが、コロナショックで一回落ち込んだ所からの回復ですのでそのまま良い評価としてはいけません。
2018年からの運用のため、長期で見ても3年(年率)ですが、こちらは10.75%となっています。
数字自体は一見悪くないかもしれませんが、シャープレシオを見て下さい。0.63と小さい値となっています。
※シャープレシオとは
リスクに対するリターンの割合。1を超えると優秀だと判断できる。
リスクとは標準偏差のことで価格の変動幅のことを指します
0.63ですから1を大きく下回っていますね。つまり、とっているリスクの割にリターンを得られていない事を示しています。
これだけリスクを取るのであれば、10%でなく26%以上のリターンを得られてはじめて優秀なファンドと評価することができます。
他のインド投資信託との比較
これまでの運用成績を見ると正直かなりいまいちですが、念のためインド株式市場や他のインド関連投資信託と比較してみましょう。
iTrustインド株式よりも手数料が高いいくつかの投資信託よりは良い運用成績を収めています。一方で、新生・UTIインドファンドには大きく負け越しており手数料が安いとはいえ実質的なリターンで見ても負け越しています。
また、インデックス(MSCIインド)にも負けており、インド株式市場の動きよりも悪かったことになります。
iTrustインド株式は手数料が安い投資信託とは言え、インデックスファンドに比べたら非常に高い手数料ですので、わざわざ高い手数料を払ってiTrustインド株式に投資する意味はないと言えます。
まとめ
iTrustインド株式に関するまとめはこちらです。
- iTrustインド株式はピクテが提供するiTrustシリーズの一つ
- インド人を主とした専用チームが運用
- 金融やITを主として医薬品や消費財にも投資
- インド関連投資信託の中では圧倒的な手数料の安さ
- 2018年に設定されており歴は浅い
- リスクに見合ったリターンを得られていない
- インデックスに負けているため投資価値は薄い
他のインド関連投資信託と比較すると手数料も圧倒的に安く、運用成績もそこまで悪くないです。
ですが、リスクに見合ったリターンは得られていません。さらに、インデックスにも負けているため投資価値はほぼなく、他のインド投資信託がひどすぎるだけだとも言えます。
残念ながら手数料が多少安くても選ぶほどの魅力はないですし、これからインド株式に投資するのはやはり厳しいです。インドはわかりやすく魅力的だったので株式市場が既に割高なのです。
筆者が新興国を分析した結果以下の通りとなりました。
中国は日本のバブル相場突入した1980年代の様相を呈しており、さらに金融緩和も始まり今まさに株価が飛翔の時を迎えようとしている新興国です。
(参考)中国株式市場は割安で投資する機会が到来!A株、B株、香港H株、レッドチップなどの違いについてもわかりやすく解説する。
新興国投資でハイリターンを得たいならハッキリ言って他のファンドがおすすめです。筆者が世界各国を分析して新興国ファンドおすすめランキングを作成していますので、ぜひファンド選びの際は参考にしてみて下さい。
ファンドランキングは下記よりアクセスできます。筆者の知識やノウハウが少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。