インド投資信託(ファンド・ETF)

投資すべきではない?ドイチェ・インド株式ファンドの評判確認と内容を徹底分析!新生UTIインド/iTrustインド株式とも比較

新興国投資でイチバン簡単な投資手法は投資信託を購入することです。

投資信託はなかなか良いものが少ないですが、本当に内容の良い投資信託があれば買ってもいいかもしれませんね。

 

という訳で購入に値する投資信託があるか調べていきましょう。

 

今回はドイツ銀行グループの資産運用会社ドイチェ・アセット・マネジメントが展開する「ドイチェ・インド株式ファンド」を分析します。

ドイツ銀行は、フランクフルトを本拠地とするドイツのメガバンクです。一流外資金融機関が販売しており期待が持てますね。果たしてどんな特徴や評判になっているのでしょうか?

 

インド株式市場全体に関する詳細と分析結果はこちらをご一読ください。

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ドイチェ・インド株式ファンドの特徴

ドイチェ・インド株式ファンドの仕組み

参照:販売用資料

 

ドイチェ・インド株式ファンドはファンド・オブ・ファンズ方式での運用です。ドイチェ・インド株式ファンドから「DWS インディア・エクイティ・ファンド(シンガポール籍円建外国投資信託)」に投資を行います。

 

投資先ファンドの運用はDWSインベストメントGmbHが行います。DWSインベストメントGmbHはドイツ銀行グループの資産運用部門(DWS)のドイツにおける拠点です。

 

ドイチェ・インド株式ファンドの窓口は日本ですが、実際の運用はドイツを拠点としてグローバルなネットワークの元、行われる仕組みとなっています。

 

ドイチェ・インド株式ファンドの運用戦略とは

ドイチェ・インド株式ファンドの運用戦略については下の図をご覧ください。

 

参照:販売用資料

 

トップダウンアプローチにより有望な業種を絞り込みセクターごとの配分を決め、ボトムアップアプローチにより銘柄を形成していきます。

ドイチェ・インド株式ファンドではMSCI India Indexをベンチマークとしており、これを上回る運用成果を目指しています。

 

※ベンチマークとは?

投資信託が運用成果を検証する際に設定する指標の事。例えば日本市場なら日経平均やTOPIXが設定される。ベンチマークを上回っていれば投信がマーケット全体よりも良い成績だったと判断できる。

 

投資先銘柄TOP10(楽天証券で買えるインドADR銘柄も組入)

では、具体的にはどんな銘柄に投資しているのでしょうか。組入れ上位10銘柄を見てみましょう。

 

銘柄 業種 比率
1 INFOSYS LTD 情報技術 8.0%
2 HDFC BANK LTD 金融 7.7%
3 RELIANCE INDUSTRIES LTD エネルギー 7.1%
4 ICICI BANK LTD 金融 7.1%
5 HCL TECHNOLOGIES LTD 情報技術 5.6%
6 TATA CONSULTANCY SERVICES LTD 情報技術 5.4%
7 BAJAJ FINANCE LTD 金融 5.3%
8 STATE BANK OF INDIA 金融 5.0%
9 LARSEN & TOUBRO LTD 資本財・サービス 4.7%
10 HOUSING DEVELOPMENT FINANCE CORP LTD 金融 4.3%

 

ポートフォリオ第1位のINFOSYS LTDはインド国立証券取引所(NSE)に上場しており、上場来+14,739%となっています。約150倍です。100万円をインフォシスに上場時に投資していれば1億5000万円になっています。

新興国の株式とはこのようなものです。(ただし、銘柄を見極めるには相当な経験と努力、才能が必要だと思います)

インフォシス

インフォシストは?

インフォシスは、次世代デジタルサービスおよびコンサルティングのグローバルリーダーです。46か国のクライアントに対してデジタル変革を進めています。

グローバル企業のシステムとその仕組みを40年近く管理してきた業績をいかし、お客様のデジタルジャーニーをナビゲートしています。AIによる変更優先順位付けで企業はそれを実現します。また、大規模なアジャイル開発によりデジタルビジネスを強化し、これまでにないレベルのパフォーマンスと顧客満足度を提供します。また私たちの常に学ぶ仕組みは、イノベーションエコシステムからデジタルスキル、専門知識、アイデアを構築して伝達し、顧客に対して継続的な改善をご提案する推進力となります。

インフォシスジャパン

 

少し違いますが、インドのグーグル、Facebookのような存在と考えれば良いと思います。

話は脱線しますが、インフォシスは楽天証券で米国ADRで購入も可能です。しかし、ボラティリティが激しい銘柄なので、個人で取引するには十分に経験を積んだトレーダー以外は触らないことをお勧めします。

ADRとはAmerican Depositary Receiptの略で、米国預託証書のことです。ADRは米国外の外国企業、あるいは米国企業の外国法人子会社などが発行する有価証券に対する所有権を示す、米ドル建て預かり証書のこと。ニューヨーク証券取引所に上場されているものもあり、通常の米国株式と同じように売買ができます。

ADR/米国預託証書 (エーディーアール/べいこくよたくしょうしょ)

楽天証券インドADR

 

現代を象徴するかのように、金融と情報技術に特化した構成となっていますね。インド関連投資信託では特段珍しくないポートフォリオだと思います。

組入れ銘柄数は38と一般的な投資信託に比べると少なく、値動きが大きい構成となっています。

 

投資家にとってメリットのない分配金システム

ここで、ドイチェ・インド株式ファンドの分配金について確認しておきましょう。

 

投資信託には「分配金あり」のものと「分配金なし」のものがありますが、「分配金なし」の方が良いです。

 

なぜなら、分配金がなければ収益分も積み重ねて複利で運用できるため資産が圧倒的に増えていくからです。

米国株でも、マイクロソフトが配当を出すと決めた時に、株価は大きく下落しました。理由はすでに成長に向けてキャッシュを投じる先がなく、成長の余地がないと判断されたからです。

投資信託の場合ですと、資金が大きくなることで複利効果が得られますので、分配金なしの方が資産効率は良いです。分配金を求めてしまうので、給料を定額で貰っている日本人の性であるとも言えます。

分配金を20%課税された上で受け取り、その後同じ投資信託を購入するなどはとても効率が悪いので、分配金なしの投資を積極的に選ぶべきだと思います。

 

ドイチェ・インド株式ファンドを確認すると、「分配金あり」となっていました。これは大いに足を引っ張るシステムですのでなぜ採用したのか疑問です。

イメージ的に分かり辛ければ後ほど出てくる運用成績の所で、分配金を分配した場合と再投資した場合を比較してみて下さい。驚くほどの差が出ることが分かります。

 

高額な手数料

続いてドイチェ・インド株式ファンドの手数料についても確認しておきましょう。まずは、投資信託の手数料の仕組みから見てみましょう。主な投資信託の手数料はこちらです。

 

  1. 購入する際の手数料
  2. 保有している間の手数料
  3. 解約する際の手数料

 

基本的には以上の3つです。ですが、全ての投資信託でこの3つの手数料が必要な訳ではなく①や③の手数料がかからないものも多くあります。

手数料がかからないファンドとは、そもそも指数に連動することだけを目標としたインデックスファンドのみですが、基本的にアクティブ投信は銘柄調査や企業訪問、出資者へのレポート作成など工数がかかるので、無料はあり得ませんね。

 

では、ドイチェ・インド株式ファンドの手数料はどうなっているのでしょうか。新興国に投資する投資信託「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」の手数料と比較してみましょう。

 

ドイチェ・インド株式ファンド eMAXIS Slim新興国株式インデックス
購入時の手数料 3.85% なし
保有時の手数料 年1.975% 年率0.1870%
解約時の手数料 0.3% なし

 

上記で述べた通り、eMAXIS Slim新興国株式インデックスはインデックスファンドでありマーケットに連動するような動きを目指しますため、特に手数料が安くなっています。

 

一方でドイチェ・インド株式ファンドは手数料が高い代わりにベンチマークを上回る運用成績を目指すアクティブファンドです。

 

このため両社で比較すると、購入時・保有時・解約時の全てのタイミングにおいてドイチェ・インド株式ファンドの手数料が圧倒的に高くなっています。

 

確かにドイチェ・インド株式ファンドの手数料は高いですが、マーケットの動きを上回る運用を目指していますのである意味、仕方ありません。手数料だけを見るのではなく運用成績と合わせて確認していく必要があります。

運用成績がマイナスの場合、高い手数料を払った上で資産が減少しているので悲惨なのですが、ドイチェ・インド株式ファンドの運用実績はどのようになっているのでしょうか?

 

ドイチェ・インド株式ファンドの運用成績は?

設定来の推移

それでは、ドイチェ・インド株式ファンドのこれまでの運用成績はどうなっているのでしょうか。設定来の推移はこちらです。

 

参照:月次報告書

 

ドイチェ・インド株式ファンドは分配金ありの投資信託ですので、基準価格は紺色の線です。緑色の線は分配金を再投資していた場合の基準価格となり大きな差がある事が分かります。

 

2007年ごろまでは急激に成長していましたがリーマンショックで暴落し、その後は徐々に回復しました。基準価格はリーマンショック前の水準に届いていませんが、再投資基準であればリーマンショック前の水準に戻しています。

 

やはり分配金を出すことにメリットはありませんね。再投資していた方がリターンは大きくなったはずです。これから新興国株式が本格的に飛翔するであろう時は、分配金を配ってる場合ではないですよね。

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ベンチマークとの比較

続いてドイチェ・インド株式ファンドがターゲットとしているベンチマークと運用成績を比較してみましょう。

 

手数料が高い代わりにベンチマークであるMSCI India Indexを超えるのが本ファンドの目標でした。

 

参照:モーニングスター株式会社

 

過去3年間の成績を比較すると、ドイチェ・インド株式ファンドはMSCI India Indexに負けていることが分かります。

 

つまり、ドイチェ・インド株式ファンドは手数料が高いアクティブファンドでありながら、運用成績は目標としているベンチマークに劣るという残念な結果となっています。

 

データで見る運用成績

ドイチェ・インド株式ファンドの運用成績について数値でも細かく見てみましょう。

 

過去10年の運用成績はこちらです。

 

1年 3年(年率) 5年(年率) 10年(年率)
トータルリターン 57.87% 12.14% 14.19% 8.83%
標準偏差 16.34 27.26 22.72 23.95
シャープレシオ 3.54 0.45 0.62 0.37

 

過去1年の成績は良く見えますがこれはコロナショックからの回復しただけですので、そのまま評価してはいけません。

 

10年(年率)を見るとトータルリターンは8.83%となっています。この数字だけを見て悪くないと思われる方もいるかもしれませんが、シャープレシオを見て下さい。0.37となっています。

 

※シャープレシオとは?

リスクに対するリターンの割合。1を超えると優秀で評価できる。

 

0.37ですので1を大きく下回っており、ハイリスクの割にリターンを得られていないことが分かります。本来であれば利回り24%(年率)以上あってはじめて優秀なファンドだということができます。

 

ドイチェ・インド株式ファンドはハイリスクの割にリターンを得られておらず、目標としているベンチマークも上回れていない商品なのです。

 

以上を踏まえて、投資すべきではないと評価できます。

 

新生UTIインド ファンド/iTrsutインド株式とも比較

新生UTIインド ファンド/iTrsutインド株式とも比較してみました。

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iTrustインド株式は3年でも他2つのリターンを下回っており、いまいち魅力は感じません。

 

項目 期間 ドイチェ・インド株式ファンド 新生UTIインド ファンド iTrsutインド 株式
トータルリターン 1年 57.87% 32.44% 23.37%
3年(年率) 12.14% 22.14% 10.70%
5年(年率) 14.19% 16.81%
10年(年率) 8.83% 18.82%
標準偏差 1年 16.34 14.91 13.6
3年 27.26 26.31 25.1
5年 22.72 23.3
10年 23.95 23.36
シャープレシオ 1年 3.54 2.18 1.72
3年 0.45 0.84 0.63
5年 0.62 0.72
10年 0.37 0.81

 

この中であえて選ぶのであれば・・・新生UTIインド ファンドでしょうね。シャープレシオが一番マシ且つ、この中ではリターンが安定的です。

投資信託とヘッジファンドを総合的に比較した記事もありますので今後新興国投資に興味がある方は以下も参考にしてみてください。

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まとめ

ドイチェ・インド株式ファンドのまとめはこちらです。

 

  • ドイツ銀行グループの運用会社が運用
  • ベンチマークはMSCI India Index
  • 投資家にメリットのない分配金システムを採用
  • 手数料は高い
  • 直近3年ベンチマークを超える運用は出来ていない
  • リスクが非常に大きい
  • リスクに見合ったリターンは得られていない

 

残念ながらドイチェ・インド株式ファンドには投資すべきではないというのが結論です。

 

新興国に投資をするなら他の良質ファンドがおすすめです。筆者が数十個以上の国やファンドを分析してランキングを作成しました!下記より確認できますので、ぜひそちらを参考にしてみて下さい。

 

新興国投資で投資で大きく資産を増やす投資先とは?投資対象・運用戦略・期待リターンから厳選。
新興国の資産運用

 

 

皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。

先進国と新興国の経済成長率の比較

経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。

新興国の経済成長率の推移を先進国と比較

 

一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。

青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体

先進国に対して劣後する新興国株式市場

参照:MSCI

 

強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。

そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。

 

また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。