投資をする上で、全てを安全資産で運用することは悪くありませんが、一部を少々リスクの高い投資対象に振ることで、最大リターンを高める努力もしていきたいものです。
そんな時に、比較的高いリスクを持つ投資対象の選択肢として、新興国投資信託、ETFなどが代表格です。
筆者自身も、魅力的な新興国投信を常に探していますが、今回も調査の一環として、「HSBCブラジルオープン」について書いてみたいと思います。
ブラジル投信を検討する前に、ブラジルの経済事情、株式市場事情についても把握しておきましょう。「ブラジル株式市場の未来をチャートでチェック!ボベスパ(BVSP)指数の成長に疑義。2023年以降の買い方はUBSブラジル・インデックス・ファンドがおすすめの選択肢?」
また、以前にブラジル投信である「日興ブラジル株式ファンド」も調べたことがありますので参考にしてみてください。
それでは、HSBCブラジルオープンについて調べていきます。
>>>【2023年】新興国株式に投資するファンドをランキング形式で紹介!投資信託(&ETF)やヘッジファンドを網羅的に評価する。
HSBCブラジルオープンとは?
細かい詳細は「HSBCブラジルオープン」の目論見書を読むのが早いでしょう。この記事ではポイントのみに焦点を当てていきます。
簡単な概要としては、「HSBCブラジルオープン」は、MSCIブラジル10/40指数(円ベース)をベンチマークとして、中長期的に当該インデックスを上回る投資成果を目指すファンドです。
MSCIブラジル10/40インデックスは、ブラジル市場の大型株と中型株のセグメントのパフォーマンスを測定するように設計されています。構成銘柄は54銘柄で、ブラジルの浮動株調整後時価総額の約85%をカバーしています。
「HSBCブラジルオープン」の規模は2021年7月時点で242億円です。小規模ファンドですね。
組み入れ銘柄は以下の通りです。大手企業で固まっていますね。ヴァーレなんかは米国株投資家も景気拡大期に大きく買いにいく銘柄でもあります。ブラジル銀行、ブラデスコ銀行など、日本でいう三菱UFJ、SMBCといった面々が続きます。新興国投資なので当たり前ではあるのですが。
順位 | 銘柄 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | ヴァーレ | 素材 | 8.00% |
2 | B3 | 各種金融 | 7.30% |
3 | ペトロブラス | エネルギー | 6.70% |
4 | ロカリザ・レンタカー | 運輸 | 5.70% |
5 | イタウザ・インベスティメントス・イタウ | 各種金融 | 4.60% |
6 | マガジン・ルイーザ | 小売 | 4.60% |
7 | ブラジル銀行 | 銀行 | 4.50% |
8 | ノートルダム・インターメディカ | ヘルスケア機器・サービス | 4.50% |
9 | ウェグ | 資本財 | 4.40% |
10 | ブラデスコ銀行 | 銀行 | 4.30% |
販売手数料は3.85%(税抜3.50%)を上限、信託報酬はファンドの純資産総額に対し、年2.09%(税抜1.90%)。高いと感じるかもしれませんが、日本からブラジルを投資対象にすること自体奇跡ですので、ここは仕方のないことです。
ここまでが概要です。ファンド選びをする上で重要なポイントを見ていきましょう。
運用実績(リターンとリスク)
以下はHSBCブラジルオープンとベンチマークの基準価額の推移の比較です。HSBCブラジルオープンはベンチマークに圧倒的に劣後した成績となっています。
ベンチマークはMSCIブラジル10/40指数(円ベース)です。目論見書の説明は以下です。
MSCIブラジル10/40指数とは、ブラジルの証券取引所に上場する企業を対象とした一般的な指数であるMSCI ブラジル指数に対し、投資信託に合わせた調整(一銘柄の構成比率の上限を10%にする、かつ5%を超える銘柄グ ループの合計の上限を40%にする等)を加えた浮動株調整後時価総額加重平均を算出した指数をいいます。
データは以下となります。
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 10.64% | -9.96% | -5.84% | -4.24% |
標準偏差 | 35.14 | 39.90 | 37.49 | 33.98 |
シャープレシオ | 0.30 | -0.25 | -0.16 | -0.13 |
トータルリターン
年 | 1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
10年 (年率) |
トータル リターン |
10.64% | -9.96% | -5.84% | -4.24% |
過去10年の年率リターンが▲4.24%というのは深刻ですね。これは10年間のリターンが▲4.24%というわけではありません。
10年間の平均年率リターンが▲4.24%ということを意味しています。100万円投資したら10年後に65万円になっていることを意味します。
一応、他の指標も見ていきます。
標準偏差
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
標準偏差 | 35.14 | 39.90 | 37.49 | 33.98 |
標準偏差とは、平均からのばらつきを表しますが、よく分からなければ標準偏差が大きいとリスクが高いということを覚えておいてください。
標準偏差は10年で33.98。ベトナムファンドですら23などですが、ブラジルに関しては異次元ですね。非常に高い水準であり、値動きが激しい投資対象を選好して運用を行っている状態であることがわかります。
ポートフォリオはブラジル国内では大企業ですが、値動きは米国の小型株、日本のマザーズ小型銘柄と同じような水準ということがわかります。
新興国に投資をする代表ETFのバンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)ですら、標準偏差は15-18です。
ブラジルはその2倍です。とてもリスクの高い投資先であることは理解しましょう。
シャープレシオ
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
シャープレシオ | 0.30 | -0.25 | -0.16 | -0.13 |
続いて、シャープレシオを見て下さい。これはリスクに対するリターンの割合を示しています。難しければ、とりあえず1を超えていると優秀な商品だと思って下さい。
HSBCブラジルオープンの場合は10年で-0.1と1を大きく下回っています。マイナスの数字をもはや久しぶりに見ました。つまり、とっている大きなリスクの割にはリターンが大したことが無いというのがこのファンドの特徴です。
やはりトータルリターンで首を傾げてしまうような商品は標準偏差もシャープレシオもおかしなことになっています。
HSBCブラジルオープンは楽天証券/SBI証券などで買えるのか?
インターネットで投資信託が売買できるのは、非常に便利です。しかし、便利な分、簡単にトレードできてしまうため、売るべきではないタイミングで売ってしまったり。
買うべきでないタイミングで買ってしまったりと、個人のセンスが問われるようになってしまったように思います。また売る気が無くても自分の資産が減っていく様子を見ると、人は感情的に売ってしまうものです。
それらを理解した上で、インターネット上の投資判断を行っていきましょう。HSBCブラジルオープンに関しては値動きが激しいので、特にスキルが求められる投資だと思います。
まとめと今後の見通し
HSBCブラジルオープンは、トータルリターン、標準偏差、シャープレシオと基本中の木9本指標がとても悪いです。
不安しか覚えないような内容でしたので、基本的に投資対象としてはどうかと思います。現在は米国株の上昇局面が一度終焉を迎え、新興国の回復へ向かっていくフェーズです。
新興国は魅力ですが、ブラジルを選ぶ必要はないと思います。魅力的な新興国や健全に成長している株式市場を有する国に特化し、若干の高いリスクで大きなリターンを狙っていきましょう。
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(新興国分析一覧)
中国 香港 インドネシア インド カンボジア シンガポール タイ
フィリピン ブラジル ベトナム マレーシア ミャンマー ラオス 南アフリカ
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個人的には、今後より世界で名を馳せていくであろう中国市場に注目しています。
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>>>【見通し良好!】中国の経済は今後どうなる?終焉と謳われた過去を払拭し中国製造2025でハイテク産業重視にシフトしてGDPで世界の覇権を握る!
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。