ブラジル投資信託(ファンド・ETF)

日興ブラジル株式ファンド 『愛称:情熱の国』のリターンは評判通り期待できるものなのか?基準価額のチャートなど他の投信と運用成績を比較しながら評価!

投資をする上で、全てを安全資産で運用することは悪くありませんが、一部を少々リスクの高い投資対象に振ることで、最大リターンを高める努力もしていきたいものです。

そんな時に、比較的高いリスクを持つ投資対象の選択肢として、新興国投資信託、ETFなどが代表格です。

筆者自身も、魅力的な新興国投信を常に探していますが、今回も調査の一環として、「日興ブラジル株式ファンド 『愛称:情熱の国』」について書いてみたいと思います。愛称の「情熱の国」はまさにブラジルを表すには最適ですね。

筆者自身も南米出張をした時にブラジルには訪れましたが、陽気な人々との触れ合いを非常に楽しみました。

 

さて、ブラジル投信を検討する前に、ブラジルの経済事情、株式市場事情についても把握しておきましょう。「ブラジル株式市場の未来をチャートでチェック!ボベスパ(BVSP)指数の成長に疑義。2023年以降の買い方はUBSブラジル・インデックス・ファンドがおすすめの選択肢?

また、以前にブラジル投信であるHSBCブラジルオープン」も調べたことがありますので参考にしてみてください。

 

>> 【2023年】新興国株式に投資するファンドをランキング形式で紹介!投資信託(&ETF)やヘッジファンドを網羅的に評価する。

日興ブラジル株式ファンド 『愛称:情熱の国』とは?

細かい詳細は「日興ブラジル株式ファンド」の目論見書を読むのが早いでしょう。この記事ではポイントのみに焦点を当てていきます。

概要とファンドサイズ

簡単な概要としては、「日興ブラジル株式ファンド」は、ブラジルの大型株式だけでなく、中小型株やIPO株も扱います。為替ヘッジは行なわず、アクティブファンドかつブラジルレアル、日本円との為替リスクにも向き合っていく商品になります。

ファンドの目的・特色

「日興ブラジル株式ファンド」の規模は2021年8月時点で約14億円です。小規模ファンドですね。

運用主体

運用を行うのは日興アセットマネジメント株式会社です。取り扱いファンドで有名なのは、以下です。

 

  • グローバル・プロスペクティブ・ファンド(純資産総額:8,993.84億円)
  • デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(純資産総額:6,110.45億円)
  • グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド(純資産額:4,572.77億円)

 

横文字ファンドが多いですね。運用成績はどうなんでしょうか。ここでは深掘りしませんが。このほか、深セン・イノベーション株式ファンドも日興アセットマネジメントが運用していますね。

 

https://indexnz.com/shenzhen-fund/

 

ただ、実際の運用はブラジル株式の運用で実績のあるフランクリン・テンプルトン・インベストメンツ(ブラジル)が運用を担当しますとあります。

初めて聞くファンド名ですが、海外投資に強みを持っているファンドでしょう。ブラジル支店が現地で運用することになるのでしょう。

 

組み入れ銘柄

組み入れ銘柄は以下の通りです。大手企業で固まっていますね。ヴァーレなんかは米国株投資家も景気拡大期に大きく買いにいく銘柄でもあります。ブラジル銀行、ブラデスコ銀行など、日本でいう三菱UFJ、SMBCといった面々が続きます。新興国投資なので当たり前ではあるのですが。

順位 銘柄 業種/セクター 組入比率
1 VALE SA 素材 11.32%
2 BANCO BRADESCO SA-PRF 銀行 6.15%
3 B3 SA-BRASIL BOLSA BALCAO 各種金融 5.51%
4 PETROBRAS – PETROLEO BRAS-PR エネルギー 5.47%
5 ITAU UNIBANCO HOLDING S-PREF 銀行 4.94%
6 VALE SA-SP ADR 素材 4.48%
7 CIA SIDERURGICA NACIONAL 素材 4.38%
8 SUZANO SA 素材 3.36%
9 AMBEV SA 食品・飲料・タバコ 2.95%
10 PETROBRAS – PETROLEO BRAS エネルギー 2.91%

 

ポートフォリオは結局ほぼHSBCブラジルオープンとそう変わりません。まぁ新興国投資で奇をてらった投資をするのはギャンブルの中のギャンブルにあたるので当たり前ではあります。

販売手数料/信託報酬

販売手数料は3.85%(税抜3.5%)を上限、信託報酬はファンドの純資産総額に対し、年率1.848%(税抜1.68%)。高いと感じるかもしれませんが、日本からブラジルを投資対象にすること自体奇跡ですので、ここは仕方のないことです。

 

基準価額(チャート)、トータルリターン、シャープレシオ、標準偏差

基準価額はコロナショックで大きく凹んだ時期がありましたが、異次元の金融緩和でその後は上昇。これは世界的に同じ動きをしています。

しかし、コロナショック前に戻っていませんね。2021年上半期までは米国株が上昇し続けました。新興国のターンを待ちたい所ですが、新興国の中でも有望な株式市場を選ぶ必要があります。

基準価額の回復が早い国であり商品を選ばなければなりません。

情熱の国の基準価額の推移

数字面もしっかり見ていきましょう。

トータルリターン、標準偏差とシャープレシオを見ていきます。

 

1年 3年(年率) 5年(年率) 10年(年率)
トータルリターン 9.53% 2.36% ▲1.42% 0.10%
標準偏差 32.25 36.02 34.73 31.41
シャープレシオ 0.30 0.07 ▲0.04 0.00

 

トータルリターン

1年 3年(年率) 5年(年率) 10年(年率)
トータルリターン 9.53% 2.36% ▲1.42% 0.10%

 

10年で0.10%。低いリターンです。3年、5年換算リターンも低い水準です。この時点で筆者であれば投資を断念します。あまりにも安心できない数字ですね。

 

ただでさえリスクのある新興国ですから、強いリターンを出せるファンドでなければ魅力はありません。新興国ファンドでソコソコのリターンになっているファンドは基本はパスです。

 

標準偏差

1年 3年(年率) 5年(年率) 10年(年率)
標準偏差 32.25 36.02 34.73 31.41

 

標準偏差とは、平均からのばらつきを表しますが、よく分からなければ標準偏差が大きいとリスクが高いということを覚えておいてください。

標準偏差は10年で32.14。ベトナムファンドですら23などですが、ブラジルに関しては異次元ですね。

非常に高い水準であり、値動きが激しい投資対象を選好して運用を行っている状態であることがわかります。ポートフォリオはブラジル国内では大企業ですが、値動きは米国の小型株、日本のマザーズ小型銘柄と同じような水準ということがわかります。

新興国に投資をする代表ETFのバンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)ですら、標準偏差は15-18です。

ブラジルはその2倍です。とてもリスクの高い投資先であることは理解しましょう。

 

シャープレシオ

1年 3年(年率) 5年(年率) 10年(年率)
シャープレシオ 0.30 0.07 ▲0.04 0.00

 

続いて、シャープレシオを見て下さい。これはリスクに対するリターンの割合を示しています。難しければ、とりあえず1を超えていると優秀な商品だと思って下さい。

 

日興ブラジル株式ファンドの場合は10年で0.0と1を大きく下回っています。とっている大きなリスクの割にはリターンが大したことが無いというのがこのファンドの特徴です。

 

やはりトータルリターンで首を傾げてしまうような商品は標準偏差もシャープレシオもおかしなことになっています。

 

日興ブラジル株式ファンドは楽天証券/SBI証券などで買えるのか?

楽天証券でもSBI証券でも購入可能です。

 

楽天証券・日興ブラジル株式ファンド

SBI証券・日興ブラジル株式ファンド

 

インターネットで投資信託が売買できるのは、非常に便利です。しかし、便利な分、簡単にトレードできてしまうため、売るべきではないタイミングで売ってしまったり。

買うべきでないタイミングで買ってしまったりと、個人のセンスが問われるようになってしまったように思います。また売る気が無くても自分の資産が減っていく様子を見ると、人は感情的に売ってしまうものです。

それらを理解した上で、インターネット上の投資判断を行っていきましょう。日興ブラジル株式ファンドに関しては値動きが激しいので、特にスキルが求められる投資だと思います。

 

まとめ

日興ブラジル株式ファンドは、トータルリターン、標準偏差、シャープレシオと基本中の木9本指標がとても悪いです。

不安しか覚えないような内容でしたので、基本的に投資対象としてはどうかと思います。現在は米国株の上昇局面が一度終焉を迎え、新興国の回復へ向かっていくフェーズです。

新興国は魅力ですが、ブラジルを選ぶ必要はないと思います。魅力的な新興国や健全に成長している株式市場を有する国に特化し、若干の高いリスクで大きなリターンを狙っていきましょう。

 

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(新興国分析一覧)

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フィリピン ブラジル ベトナム マレーシア ミャンマー ラオス 南アフリカ

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個人的には、今後より世界で名を馳せていくであろう中国市場に注目しています。

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新興国投資で投資で大きく資産を増やす投資先とは?投資対象・運用戦略・期待リターンから厳選。
新興国の資産運用

 

 

皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。

先進国と新興国の経済成長率の比較

経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。

新興国の経済成長率の推移を先進国と比較

 

一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。

青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体

先進国に対して劣後する新興国株式市場

参照:MSCI

 

強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。

そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。

 

また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。