投資をする上で、全てを安全資産で運用することは悪くありません。しかし、一部を少々リスクの高い投資対象に振ることで、最大リターンを高める努力もしていきたいものです。
安定資産で着実に利益を獲得しつつ、一部はハイリターンを獲得していくことができれば、資産の増加スピードは大きく加速します。
比較的高いリスクを持つ投資対象の選択肢として、新興国投資信託、ETFなどが代表格もす。世界に資産を分散しつつも、リターンを最大化していく戦略は多くの有力ファンドが行なっている手法ですよね。
筆者自身も、魅力的な新興国投信を常に探していますが、今回も調査の一環として、「ドイチェ・ロシア東欧株式ファンド」について書いてみたいと思います。
主要投資対象は、ロシア・東欧諸国(トルコ・ポーランド・ハンガリー・チェコ)の株式です。東南アジアの新興国ファンドを見てきた人には少し新鮮だと思います。なかなか買ってる人いませんよね、東欧の株式。
それでは、内容を見ていきましょう。
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細かい詳細は「ドイチェ・ロシア東欧株式ファンド」の目論見書を読むのが早いでしょう。この記事ではポイントのみに焦点を当てていきます。
「ドイチェ・ロシア東欧株式ファンド」の規模は2021年7月末時点で約49.9億円です。小規模ファンドですね。ファミリーファンド方式です。
簡単な概要としては、「ドイチェ・ロシア東欧株式ファンド」は、ロシア・東欧諸国(トルコ・ポーランド・ハンガリー・チェコ)の株式を投資対象としています。
上記に加え、ウクライナ、エストニア、オーストリア、カザフスタン、 ジョージア、スロバキア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニアにも魅力的な投資対象があれば投資をしていきます。ヨーロッパ諸国への投資、非常に新鮮ですね。
運用は「ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社」です。映画でもよく見る名前ではないでしょうか。ドイツ銀行傘下のアセットマネジメント会社です。
ドイチェ・アセット・マネジメントが展開しているファンドとしては、グローイング・エンジェル、ドイチェ・ジャパン・グロース・オープン、DWS グローバル新興国株投信、DWS 新資源テクノロジー・ファンドなどがあります。
ただ、実際の運用現場を仕切るのはDWSインベストメントGmbHです。ドイチェ・アセット・マネジメントのドイツ拠点であり、もはや本社です。
ドイチェ・ロシア東欧株式ファンドの販売手数料は3.85%(税抜 3.5%)を上限、信託報酬はファンドの純資産総額に対し、率 2.068%(税抜 1.88%)です。信託財産留保額も生じます。0.5%です。
新興国アクティブファンドの中でも若干高い水準でしょうか。
ドイチェ・ロシア東欧株式ファンドの組み入れ銘柄
エネルギー、金融、素材に大きくポートフォリオを振っています。ロシアがメインの投信なので、やはりロシアが上位を占めますね。石油・天然ガスなどの資源産業が主力のロシアらしく、ポートフォリオに特にエネルギーが大きく占めます。
順位 | 銘柄 | 国・地域 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | ルクオイル(ADR) | ロシア | エネルギー | 8.30% |
2 | ズベルバンク・オブ・ロシア(ADR) | ロシア | 金融 | 6.30% |
3 | ガスプロム(ADR) | ロシア | エネルギー | 5.50% |
4 | ロスネフチ(GDR) | ロシア | エネルギー | 4.10% |
5 | モバイル・テレシステムズ(ADR) | ロシア | コミュニケーション・サービス | 3.70% |
6 | MMCノリリスクニッケル(ADR) | ロシア | 素材 | 3.60% |
7 | ポリウス(GDR) | ロシア | 素材 | 3.60% |
8 | ポリメタル・インターナショナル | ジャージ | 素材 | 3.30% |
9 | タトネフチ(ADR) | ロシア | エネルギー | 3.20% |
10 | ガランティ銀行 | トルコ | 金融 | 3.00% |
基準価額(チャート)は問題なし、トータルリターンは疑問、シャープレシオ、標準偏差は厳しい水準
ドイチェ・ロシア東欧株式ファンドの基準価額はコロナショックで大きく凹んだ時期がありましたが、異次元の金融緩和でその後は上昇。これは世界的に同じ動きをしています。ひとまず基準価額に大きな問題点は見られません。しっかりコロナ前の水準を上回っていますね。
ファンド選びをする上で重要な指標を見ていきましょう。トータルリターン、標準偏差とシャープレシオを見ていきます。
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 26.42% | 3.77% | 8.95% | 1.53% |
標準偏差 | 25.46 | 28.91 | 24.46 | 25.57 |
シャープレシオ | 1.04 | 0.13 | 0.37 | 0.06 |
トータルリターン
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 26.42% | 3.77% | 8.95% | 1.53% |
直近の1年が26.42%になっていることから分かる通り、2020年のコロナショック後からの異次元の金融緩和により世界的に昨年1年はハイリターンになっています。
ただし、やはり分散しているせいか、ベトナム株ファンドや中国株ファンドなど、単体の国に投資をしているファンドのリターンには全く及びません。
10年で年率リターンは1.53%となっております。これは直近1年が超ハイリターンであるにも関わらず2%程度であり、非常に低い水準ですね。3年も3.77%なので、コロナ前からリターン水準は低かったことが伺い知れます。
以下は四半期別です。2018年などは非常に厳しい年だったことがわかります。2017年のリターンを全て吐き出してしまっています。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
2021年 | 3.07% | 10.56% | — | — | — |
2020年 | -36.94% | 23.30% | -8.73% | 19.58% | -15.14% |
2019年 | 9.42% | 8.61% | -3.02% | 12.09% | 29.19% |
2018年 | -0.22% | -11.91% | -0.89% | -6.91% | -18.90% |
2017年 | -1.38% | -0.85% | 12.68% | 3.97% | 14.57% |
標準偏差
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
標準偏差 | 25.46 | 28.91 | 24.46 | 25.57 |
標準偏差とは、平均からのばらつきを表しますが、よく分からなければ標準偏差が大きいとリスクが高いということを覚えておいてください。
標準偏差は10年で25.57。ヨーロッパのイメージとは裏腹に非常にリスクのある投資先であることがわかります。ドイチェ・ロシア東欧株式ファンドへの投資は新興国投資であることを思い出しましょう。
値動きが非常に激しい投資対象を選好して運用を行っていることがわかります。例えば、新興国に投資をする代表ETFのバンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)は、標準偏差は15-18です。
シャープレシオ
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
シャープレシオ | 1.04 | 0.13 | 0.37 | 0.06 |
続いて、シャープレシオを見て下さい。これはリスクに対するリターンの割合を示しています。難しければ、とりあえず1を超えていると優秀な商品だと思って下さい。直近1年は1が出ていますが、これは異次元金融緩和による数字ですので参考になりません。
長期で見た数字が正確な勝率となります。
ドイチェ・ロシア東欧株式ファンドの場合は10年で0.06と1を大きく下回っています。つまり、とっている大きなリスクの割にはリターンが大したことが無いというのがこのファンドの特徴です。
標準偏差の高さの割にリターンが非常に低いということです。
ドイチェ・ロシア東欧株式ファンドはネット証券(楽天証券/SBI証券など)で買えるのか?
楽天証券でもSBI証券でも購入可能です。便利な世の中ですよね。一昔前は証券会社の窓口に行って申し込んでいたのですから。
注意点としては、あまりにも便利で、サクサクと投資信託を売買できてしまうので、ファンドに預けて運用を任せているにも関わらず数日で売買してしまったりすることです。
ファンドに投資をした場合、長期で結果が出るのを待つのが基本です。売買するものではありません。売買したいなら自分で個別株、FXなどを楽しむべきでしょう。勝てるとは言いません。
まとめ
総じて悪くないリターンではありますが、あまりにもトータルリターンに魅力が欠けることや、シャープレシオを見る限り、ドイチェ・ロシア東欧株式ファンドは無理して投資する先ではないと思いました。もっと良い先があります。
また、新興国に投資をする割には、2020年の大きな追い風があったにも関わらず、10年スパンでは控えめなリターンとなっています。もう少し高いリターンを期待したいですね。リスクリワードが合いません。
また、個別株を買う戦略を考えても、これから新興国株式に追い風の時流が流れそうですが(2022年初頭頃から)、度重なる金融緩和で、多くの銘柄はすでに上昇しており、割安株を探すフェーズではないかと思います。
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(新興国分析一覧)
中国 香港 インドネシア インド カンボジア シンガポール タイ
フィリピン ブラジル ベトナム マレーシア ミャンマー ラオス 南アフリカ
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個人的には、今後より世界で名を馳せていくであろう中国市場に注目しています。
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皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。