投資をする上で、全てを安全資産で運用することは悪くありませんが、一部を少々リスクの高い投資対象に振ることで、最大リターンを高める努力もしていきたいものです。
そんな時に、「新興国投資」が視野に入ってきます。
新興国の中でも、フィリピンは今後成長が期待される国として注目を集めています。
フィリピン株に投資するには証券会社を通して個別銘柄に投資する方法もありますが、一番簡単なのは投資信託を購入する方法です。
フィリピンの経済状況など基本的なマーケット情報は以下の記事で解説しています。
>>>フィリピンの株式市場への投資はおすすめできる?今後の見通しをふくめてわかりやすく解説する。
フィリピンその他投信分析>>>大和アセットマネジメント運用。フィリピン株式オープンの利回り成績は評判ほどなのか?トータルリターン、標準偏差、シャープレシオがNG。フィリピンに投資する理由なし
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今回はフィリピンを投資対象にした投資信託「イーストS・フィリピン株式オープン」についてその投資魅力や内容について解説していきます。
イーストS・フィリピン株式オープンの特徴とは?
細かい詳細は「イーストS・フィリピン株式オープン」の目論見書を読むのが早いでしょう。この記事ではポイントのみに焦点を当てていきます。
簡単な概要としては、「イーストS・フィリピン株式オープン」は、主要投資対象としてフィリピンの取引所に上場する株式としています。個別企業の調査および分析に基づき、銘柄選択を重視した運用を行います。
特段、これといった特徴はなく、一般的なポートフォリオ構築法だと思います。
とにかくフィリピンの成長性の高い株を買っていくファンドです。運用は「イーストスプリング・インベストメンツ株式会社」です。
「イーストスプリング・インベストメンツ株式会」はイーストS・フィリピン株式オープンの他、イーストスプリング新興国スタープレイヤーズ、イーストスプリング・ジャパン中小型厳選バリュー株ファンド、イーストスプリング・インド株式オープンなど世界中に商品を展開しています。
このブログでも、「イーストスプリング・インベストメンツ」が運用するイーストスプリング・インドネシア株式オープンを取り上げています。
運用プロセス(ポートフォリオ構築プロセス)は、以下の通りです。投資アイデアの創出、ファンダメンタル分析、ポートフォリオ構築、リスクコントロールとレビュー。
至って普通ですし、ほぼ説明が書かれていないに等しい内容ですね。リターンさえ出してくれれば良いのですが。
「イーストS・フィリピン株式オープン」の規模は2021年7月末時点で13.33億円です。小規模ファンドですね。
組み入れ銘柄(ポートフォリオ)
組み入れ銘柄は以下の通りです。大手企業で固まっていますね。トラディッショナルな企業の面々が揃います。
順位 | 銘柄 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | SMプライム | 不動産 | 9.52% |
2 | SMインベストメンツ | 資本財 | 9.23% |
3 | アヤラ・ランド | 不動産 | 8.19% |
4 | アヤラ | 資本財 | 5.71% |
5 | JGサミットホールディングス | 資本財 | 4.95% |
6 | フィリピン・アイランズ銀行 | 銀行 | 4.66% |
7 | バンコ・デ・オロ・ユニバンク | 銀行 | 4.57% |
8 | メトロポリタン銀行 | 銀行 | 4.19% |
9 | ユニバーサルロビナ | 食品・飲料・タバコ | 3.33% |
10 | アボイティス・エクイティ・ベンチャーズ | 資本財 | 3.24% |
総合不動産開発会社であるSMプライムがポートフォリオ第1位。現代的商業ショッピングセンターの開発・建設・運営・保守、並びに賃貸用ショッピングセンタースペース、ショッピングセンター建物内の映画館または歓楽街の実施・運営・保守などのそれに関連する事業全体に従事する企業です。
日本で言えば三菱地所、三井不動産といった所です。SMインベストメンツはフィリピン最大のコングロマリッド企業です。
アヤラ・ランドは不動産会社です。フィリピン最古かつ最大のコングロマリット企業の一つ、アヤラ・コーポレーションの子会社です。アヤラ・コーポレーションはフィリピン経済の代名詞とも呼ばれていました。日本でいえば三菱グループのようなものですね。
販売手数料・信託報酬・信託財産留保額
販売手数料はに3.85%(税抜 3.5%)を上限、信託報酬はファンドの純資産総額に対し、年率 1.875%程度(税込)。
新興国投信はどうしても手数料は高くなりますが、自分で現地企業を調べて株式ポートフォリオを作るわけにもいきませんので、仕方ありませんね。
ここまでが概要です。ファンド選びをする上で重要なポイントを見ていきましょう。
基準価額(チャート)、トータルリターン、シャープレシオ、標準偏差
基準価額はコロナショックで大きく凹んだ時期がありましたが、異次元の金融緩和でその後は上昇。これは世界的に同じ動きをしています。ひとまず基準価額に大きな問題点は見られません。が、イーストS・フィリピン株式オープンは回復しきっていませんね。
米国は株価が回復し更なる成長を続けてしまっていますが、これはFRBがバランスシートを拡大し続けているからです。こんな異次元金融緩和は見たことがありませんが、2021年くらいからテーパリングは始まりますので、その頃に新興国のターンは本格的にくるものと思います。
ここからはイーストS・フィリピン株式オープンのトータルリターン、標準偏差とシャープレシオを見ていきます。
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 13.83% | -4.35% | -4.83% | — |
標準偏差 | 17.76 | 22.59 | 19.63 | — |
シャープレシオ | 0.78 | -0.19 | -0.25 | — |
トータルリターン
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
トータルリターン | 13.83% | -4.35% | -4.83% | — |
5年で-4.83%のトータルリターン。マイナスのファンドは流石に買えませんね。直近の1年が13.83%になっていますがこれはコロナショックからのリバウンドがあってもこの低水準なので目の前は真っ暗です。
低いリターンにも関わらず、2020年のコロナショック後からの異次元の金融緩和により世界的に昨年1年はハイリターンになっていますので参考資料にはなりません。
3年のリターンが-4.35%。ここ3年も優れた成績を出せていなかったことは把握できます。2018年のマイナスリターンが響いています。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
2021年 | -2.49% | 5.46% | — | — | — |
2020年 | -33.85% | 18.03% | -2.72% | 21.23% | -7.93% |
2019年 | 5.67% | 2.25% | -4.18% | 2.61% | 6.24% |
2018年 | -15.54% | -10.01% | 4.11% | 2.57% | -18.84% |
2017年 | 2.14% | 5.13% | 4.03% | 6.03% | 18.45% |
2018年といえば、米中貿易摩擦や米利上げの悪影響や景気減速など先行きに対する懸念材料が多く、多くの投資家が株式市場から資金を抜いていきました。
ファンドはどれほど下落を軽傷で切り抜けられるか、その手腕が求められます。イーストS・フィリピン株式オープンに関しては、下落体制に少し不安が残ります。
標準偏差
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
標準偏差 | 17.76 | 22.59 | 19.63 | — |
標準偏差とは、平均からのばらつきを表しますが、よく分からなければ標準偏差が大きいとリスクが高いということを覚えておいてください。
イーストS・フィリピン株式オープンの標準偏差は5年で19.63。非常に高い水準であり、値動きが激しい投資対象を選好して運用を行っていることがわかります。新興国に投資をする代表ETFのバンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)ですら、標準偏差は15-18です。
リスクの高い投資先であることは理解しましょう。
シャープレシオ
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) |
シャープレシオ | 0.78 | -0.19 | -0.25 | — |
続いて、シャープレシオを見て下さい。これはリスクに対するリターンの割合を示しています。難しければ、とりあえず1を超えていると優秀な商品だと思って下さい。
イーストS・フィリピン株式オープンの場合は5年で-0.25と1を大きく下回っているどころかマイナスです。つまり、とっている大きなリスクの割にはリターンが大したことが無いというのがこのファンドの特徴です。
マイナスはちょっと(どころではなく)厳しいです。
指数を上回ることはできているのか?
アクティブファンドに求められるのは、「指数を超えること」です。指数を超えられないのであれば、投資家からすればインデックスに投資する以外選択肢がないわけです。
ここでは、世界有数のファンドが皆目標指数とするMSCI指数をもとに比較したいと思います。(iシェアーズ MSCI フィリピン ETF)
1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 設定来 | |
iシェアーズ MSCI フィリピン ETF | 14.52 | 1.47 | -3.83 | 3.3 | 2.89 |
イーストS・フィリピン株式オープン | 13.83% | -4.35% | -4.83% | — | |
フィリピン株式オープン | 11.38% | -7.04% | — | — |
インデックスを下回っています。フィリピンにどうしても投資をしたいという人は、フィリピン株式オープンではなく、インデックスを買っとけばいいのではないでしょうか?イーストS・フィリピン株式オープンも全然ダメですね。フィリピン自体を諦めた方が良いかもしれません。
他に良い投資先はいくらでもあるので。
楽天証券/SBI証券などで買えるのか?
楽天証券でもSBI証券でも購入は可能でした。
インターネットで投資信託が売買できるのは、非常に便利です。しかし、便利な分、簡単にトレードできてしまうため、売るべきではないタイミングで売ってしまったり。
買うべきでないタイミングで買ってしまったりと、個人のセンスが問われるようになってしまったように思います。また売る気が無くても自分の資産が減っていく様子を見ると、人は感情的に売ってしまうものです。
それらを理解した上で、インターネット上の投資判断を行っていきましょう。イーストS・フィリピン株式オープンに関しては値動きが激しいので、特にスキルが求められる投資だと思います。
まとめ
イーストS・フィリピン株式オープンは、トータルリターン、標準偏差、シャープレシオと基本中の基本指標がとても悪いです。
不安しか覚えないような内容でしたので、基本的に投資対象としてはどうかと思います。現在は米国株の上昇局面が一度終焉を迎え、新興国の回復へ向かっていくフェーズです。
新興国は魅力ですが、フィリピンを選ぶ必要はないと思います。魅力的な新興国や健全に成長している株式市場を有する国に特化し、若干の高いリスクで大きなリターンを狙っていきましょう。
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(新興国分析一覧)
中国 香港 インドネシア インド カンボジア シンガポール タイ
フィリピン ブラジル ベトナム マレーシア ミャンマー ラオス 南アフリカ
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個人的には、今後より世界で名を馳せていくであろう中国市場に注目しています。
【見通し良好!】中国の経済は今後どうなる?終焉と謳われた過去を払拭し中国製造2025でハイテク産業重視にシフトしてGDPで世界の覇権を握る!
https://indexnz.com/investment-trust-ranking/
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。