ハイリターンを狙える新興国投資は非常に魅力的です。ですが、その分値動きも大きくハイリスクなものも多いです。
投資信託を買って新興国投資を始める際には、きちんと事前に分析することが非常に重要です。
という訳で今回は「HSBCインド株式ファンド」の評判や基準価格の推移、投資すべきかどうかについて解説していきます。
インド株式市場全体に関する詳細はこちらをご一読ください。
HSBCインド株式ファンドの特徴とは
HSBCインド株式ファンドの仕組み
参照:交付目論見書
HSBCインド株式ファンドはファミリーファンド方式です。投資家の資金はベビーファンドとしてまとめられ、それをマザーファンドに投資し実際の運用はマザーファンドで行います。
ここはそんなに難しく考えなくて大丈夫です。そうなんだ~くらいに思って下さい。続いて実際の運用内容について見てきましょう。
具体的な運用手法とは
HSBCインド株式ファンドの委託会社(=運用の指図を行う者)は「HSBC投信株式会社」となっていますが、運用委託契約を結び実際の運用は「HSBCグローバル・アセット・マネジメント(香港)リミテッド」が担います。
そして、運用のプロセスはこちらです。
参照:交付目論見書
トップダウンのアプローチによりセクター配分を決定し、ボトムダウンのアプローチにより銘柄を選定してポートフォリオを構築していきます。
この投資プロセスを経た結果、実際にどんな銘柄に投資しているのでしょうか。
投資先銘柄トップ10
投資先銘柄のトップ10はこちらです。
2023年2月28日時点
銘柄 | 比率 | 概要 |
インフォシス | 7.8 | ITサービス大手。ソフトウェアサービスやコンサルティングを提供。 |
ICICI銀行 | 7.7 | インドの大手民間銀行。個人や法人に金融サービスを提供。 |
HDFC銀行 | 7.6 | 住宅ファイナンスのHDFCが設立した民間銀行。個人や法人向けの商業銀行。 |
リライアンス・インダストリーズ | 7.3 | 石油の開発や生産、小売り、携帯電話事業も展開。 |
ラーセン・アンド・ドゥブロ | 4.8 | 世界各地の石油開発事業などに参画する建設エンジニアリング大手。 |
アクシス銀行 | 4.1 | インドの大手民間銀行。法人や個人、農業分野を対象に銀行業務を展開。 |
サン・ファーマシューティカル・インダストリーズ | 3.7 | 糖尿病・心臓病・神経科・消化器科向けの医薬品を主とする製薬大手。 |
インドステイト銀行 | 3.5 | 法人や公的機関、個人向けに幅広く金融サービスを提供する大手商業銀行。 |
HDFC | 3.3 | 住宅ファイナンス会社。銀行や生命保険、投信などの子会社を持つグループ統括会社。 |
ヒンドゥスタン・ユニリーバ | 3.0 | 消費者製品メーカー。石鹸や洗剤、加工食品などを製造。 |
銀行などの金融が5つランクインしており、かなり力を入れていることが分かりますね。組み入れ銘柄は全部で43ですが、その全体のシェアでも銀行が26.2%と1位となっています。
参照:月報
運用効率が悪い分配金
HSBCインド株式ファンドがどのような運用を行いどんな銘柄に投資しているかは確認できました。
続いて投信を検討する際に必須の「分配金の有無」について確認しておきましょう。基本的に分配金は無い方が良いです。なぜなら、分配金がなければ複利の効果で爆発的に資産が増えていくからです。
理由が良く分からない人も結論だけは覚えておきましょう。「分配金は無い方が良い」です。
では、HSBCインド株式ファンドの分配金システムはどうなっているでしょうか。
参照:交付目論見書
残念ながら分配金があるタイプでした。しかも三カ月ごとにあるため分配の頻度が高く、運用効率はとても悪いです。
販売会社によっては分配金再投資コースもありますが、税金を引かれてしまうため完全な再投資とは言えません。
HSBCインド株式ファンドの分配金に関しては、大きく減点評価せざるを得ません。
トップレベルに高額な手数料
では、手数料はどうでしょうか。投資信託の手数料の種類はこちらの3つです。
- 購入する際の手数料
- 保有している間の手数料
- 解約する際の手数料
ただし、どの投資信託でも3つ必要という訳ではなく、①の購入時手数料が無料のものもあり、これはノーロードと呼ばれます。また、③の解約時手数料がかからない投信も多いです。
では、HSBCインド株式ファンドについて見てみましょう。新興国に投資する投資信託「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」と比較してみましょう。
HSBCインド株式ファンド | eMAXIS Slim新興国株式インデックス | |
購入時の手数料 | 3.85% | なし |
保有時の手数料 | 年2.2% | 年率0.1870% |
解約時の手数料 | 0.5% | なし |
eMAXIS Slim新興国株式インデックスはインデックスファンドのため特に手数料が安いですが、それとは関係なくHSBCインド株式ファンドの手数料は高いです。
他のインド関連投資信託の手数料とも比較してみましょう。
HSBCインド株式ファンド | 新光ピュア・インド株式ファンド | 野村インド株投資 | ニッセイ・インド厳選株式ファンド | 高成長インド・中型株式ファンド | |
購入時の手数料 | 3.85% | 3.3% | 3.3% | 3.85% | 3.85% |
保有時の手数料 | 年2.2% | 年2.06% | 年2.2% | 年1.925% | 年2.0505% |
解約時の手数料 | 0.5% | 0.3% | 0.5% | なし | 0.3% |
購入時の手数料、保有時の手数料、解約時の手数料、どれをとってもHSBCインド株式ファンドの手数料が一番高い事が分かります。
これでは、運用成績がよくなければ選ばれませんよね。という訳で重要な運用成績について確認していきましょう。
HSBCインド株式ファンドの運用成績は
設定来の推移
参照:月報
灰色の線がベンチマークの推移で、オレンジ色の線が分配金再投資基準価格です。ベンチマークはざっくりインド株式市場全体の動きと思ってもらったらいいです。
つまり、グラフを見るとHSBCインド株式ファンドは設定された直後が高値で、その後ほとんどの期間でマイナスとなっています。ようやく基準価格は回復しましたが、手数料を考えるとマイナスだと言えるでしょう。
実は投信はできた直後が一番高値になりやすく、買うと損するというカラクリを体現した運用成績となっています。
さらに、インド株式市場全体の動きにも大きく負け越していることが分かります。これでは、わざわざ高い手数料を払って投資する意味がないですね。
データで見る運用成績
続いてデータでも細かく見ておきましょう。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | |
トータルリターン | 7.65% | 15.39% | 6.64% | 8.13% |
標準偏差 | 19.59 | 29.12 | 25.73 | 25.15 |
シャープレシオ | 0.39 | 0.53 | 0.26 | 0.32 |
ここ3年間の数字は良く見えますが、コロナショックの下落からの回復のため数字が大きく出ています。
10年(年率)でみるとリターンは8.13%となっています。安定的な運用であれば十分かもしれませんが、新興国投資ではリスクを取る代わりにハイリターンを狙っていますからこの水準では全然足りません。
その証拠にシャープレシオを見てみましょう。0.32と非常に小さい値となっております。
シャープレシオとは?
リスクに対するリターンの割合。数字が大きいと良く小さいと悪い。1を超えると優秀だと判断できる。
HSBCインド株式ファンドのシャープレシオは0.32ですから1には遠く及ばない数値となっており、リスクばかり取ってリターンを得られてない投信となっています。本来であれば、年率25%ほどのリターンが得られてはじめて優秀な投信だと言えます。
まとめ
HSBCインド株式ファンドのまとめはこちらです。
- 実質的な運用者はHSBCグローバル・アセット・マネジメント(香港)リミテッド
- 銀行に多く投資
- 3カ月ごとに分配金を出すため運用効率が悪い
- 手数料が高く、インド関連投信の中でも高い水準
- 基準価格は設定直後から停滞しておりいまいち
- リスクばかり取っていて見合ったリターンが得られていない
HSBCインド株式ファンドは手数料も一番高く、運用成績も全然出ていないので残念ながら選ぶ理由はないですね。
新興国投資でハイリターンを目指すなら他にもっとおすすめなファンドはあります。筆者が世界各国を分析し続けて、こだわって選んだおすすめファンドをランキングにしています。
下記よりファンドランキングを見れますのでそちらをぜひ参考にしてみて下さい。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。