マレーシアといえばサッカーのジョホールバルの歓喜で印象に残っている方も多いのではないでしょうか?
当時は貧しい国ですが、現在では急速に発展してマレーシアは東南アジアの中ではシンガポールに次いで発展している国です。経済水準は中国と同水準で今後先進国入りを目指して躍進しています。
本日は、躍進めざましいマレーシアの現状を整理した上で株式投資が魅力的なのかという点について論じていきたいと思います。
マレーシアの概況
マレーシアはマレー半島の南半分を主な領域としており、タイやシンガポールやインドネシアが隣国となっています。
人口 | 3258万人 |
面積 | 33万km2 (日本は38万km2) |
首都 | クアラルンプール(人口:180万人) |
民族 | マレー人62%、中国系20%、インド系6%、その他12% |
宗教 | イスラム教61%、仏教20%、キリスト教10% |
まさに地理的には盗難アジアの中枢に位置するといえるでしょう。また、民族や宗教が分散しているというのはマレーシアの抱える課題の元凶の1つとなっています。
マレーシアの経済成長率は依然として高い
マレーシアはある程度成長してきているので成長率は既に鈍化してきていると考えているとしたら誤りです。以下は東南アジアの各国の経済成長率の推移です。
今勢いよく成長しているフィリピンやベトナムには流石に及びませんが、まだマレーシアより大分遅れているタイに比べても高い成長率を実現しています。
人口ピラミッド的にもまだまだ人口が増加する形状をしており、今後もしばらく成長が継続することが見込まれます。
殆ど成長していない日本という国で生活する我々としては活気があって羨ましい限りですね。以下は経済レベルを示す1人あたりGDPの推移です。
現時点で中国とほぼ同じ水準ですが、右肩あがりという点で中国には今後離されていくことが想定されます。
ただ、中所得国の罠とされる1人あたりGDP10,000ドルの水準を上抜けようとしています。
「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することを指す。これは、開発経済学でゆるやかに共有されている概念であり、その端緒は世界銀行が07年に発表した報告書にあるとみられている。
参照:内閣府
つまりマレーシアはうまく先進国に転身していく準備が整いつつあるということを示しています。アジアの主要国を横並びで比較すると以下の通りとなります。新興国の中では頭一つ抜けていますね。
筆者としては新興国に投資をする上で今一番魅力的なのは成長力が高く本格的に超大国になってきている中国であると考えています。
中国の経済状況については以下で詳しくお伝えしていますので参考にしてみてください!
https://indexnz.com/china-economy/
「ビジョン2020」の後継政策である「SPV2030」とは?マレーシアの課題とは?
2020年のビジョン2020の後継としてマレーシア政府は「シェアード・プロスペリティ・ビジョン2030(=SPV2030)を発表しています。
マレーシアのマハティール・モハマド首相は10月5日、2021年から2030年までの10年間の国家開発計画を盛り込んだ「シェアード・プロスペリティ・ビジョン2030(SPV2030)」を発表した。2030年までに「所得グループ、民族、宗教、サプライチェーンにおける公正かつ公平な分配による持続可能な成長」を達成することを目的としている。マハティール首相は、SPV2030を1991年に同首相が提唱した2020年までの先進国入りを目標とした「ビジョン2020」の後継に位置付けている。
参照:内閣府
SPV2030で解決すべき課題。
経済成長の潜在力を発揮するに至っていない |
製造業及びサービス業におけるハイテク化が不十分 |
雇用者と従業員の間の所得格差が大きい |
所得グループの上位と下位の格差が拡大している |
民族間の所得格差が拡大している |
専門職種におけるブミプトラと非ブミプトラの比率が不均衡 |
ブミプトラによるGDPの貢献度が小さい |
地域間の経済格差が拡大している |
ブミプトラというのは地元民つまりマレー人のことです。中国からの華僑の経済的優位に対抗してマレー人優遇政策としてブミプトラ政策が取られてきました。
マレー人に対する軽減税率の適用や公務員の採用を優先したり国立大学もマレー人を優遇して合格させるなどの政策です。
ブミプトラ政策を実施していても華僑の経済的優位は変わっておらず、民族間や地域間の格差をマレーシアとしては問題視しているということですね。これらの課題を解決するために以下の戦略を掲げています
ビジネスおよび 産業エコシステム |
✔︎中小企業によるGDP貢献比率を50%に ✔︎中小企業における高度技術導入企業を30%に |
重点経済成長活動 | ✔︎機械設備分野の投資額を全投資額の4割に ✔︎イスラム金融や再生可能エネルギーなど新分野を育成 |
人的資本 | ✔︎労働力の35%を高度人材に ✔︎人的資源開発基金の40%をインダストリー4.0関連研修に |
労働市場及び 従業員補償 |
✔︎年齢、性別、民族、宗教の差別をなくす ✔︎外国人労働者を削減する |
社会福祉 | ✔︎社会保障制度の拡大 ✔︎各地域へのデイケアセンター |
地域包括 | ✔︎全国の公共交通機関の統合 ✔︎農村と都市間の所得格差の縮小 |
社会関係資本 | ✔︎犯罪率、汚職、健康などの改善 |
マレーシアの経済構造:サービス業が拡大
それでは現在のマレーシアの産業構造と2000年時点の産業構造を比較してみましょう。
2000年時点ではは製造業が最も大きな比率を占めていましたが縮小しています。現在では卸小売業、通信、金融仲介、その他を集めた第三次産業が50%を超えています。
日本や米国のような先進国は第三次産業の比率が70%程度となっています。徐々にマレーシアも先進国化が進んできているといえるでしょう。
特筆すべきはプランテーションによるパーム油生産などで第一次産業が引き続き一定のシェアを保っています。
マレーシアの貿易構造
以下はマレーシアの輸出製品と輸出先です。
主に電子・電気機械とパーム油などの燃料が輸出財となっています。電子・電気機関の牽引役は半導体となっています。
輸出先は中国、シンガポール、米国、EU、香港、日本とバランスよく分散しています。
次に輸入財と輸入先が以下となります。エレクトロニクス製品の世界的なサプライチェーンの一角をしめており輸出同様、輸入も電子機器が多くなっています。
輸入先も輸出先同様分散しています。貿易面の安定性は問題なしといえるでしょう。
マハティール首相が辞任後の政治情勢は混沌
2020年2月に長年マレーシアを率いていたマハティール首相が辞任しました。
3月にムヒディン・ヤシンが第8代首相として就任しましたが、マハティール氏が新党を結成し10月にはムヒディン首相に不信任決議案を提案しました。
更に野党を率いるアンワル元副首相はか下院の過半数を上回る支持を確保しているとして首相の有資格者と主張しムヒディン首相への対決姿勢をあらわにしています。
ムヒディン首相の辞任後の2021年8月には、副首相も務めたイスマイル・サブリ氏が新たな首相に就任しました。
しかし、その在籍期間は短く2022年にはアンワル氏が新首相に就任しています。
とてもですが、安定政権とはいえない状況となっています。
マレーシアの経済と政治のまとめ
マレーシアの経済と政治について纏めると以下となります。
✔︎マレーシアは依然として高い成長率を誇っている
✔︎中所得国の罠を抜け出そうとしている
✔︎人口ピラミッド上はまだまだ成長余地が高い
✔︎宗教や民族による格差の拡大が問題
✔︎第三次産業が進展してきている
✔︎貿易構造は主要国で分散しており電子機器や燃料を貿易している
✔︎新首相が就任してから政治は混沌としている
マレーシアも悪くはないですが他に良い投資先はたくさんあります。新興国投資のおすすめファンドは下記で紹介していますのでぜひチェックしてみて下さい。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。