マレーシア株式市場

マレーシアの株式市場への投資はおすすめできる?株価指数や魅力的な個別銘柄を紹介する。

マレーシアの株式市場への投資はおすすめできる?株価指数や魅力的な個別銘柄を紹介する。

マレーシアの経済と政治的な状況については前回お伝えしました。要点としては以下となります。

✔︎ 経済成長率は依然として高水準
✔︎ 中所得国の罠を抜けて先進国入り目前に迫っている
✔︎ 人口動態や産業構造的にも成長余力は大きい
✔︎ 電子機器を輸出入しており貿易相手国は分散している

 

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経済が堅調だったとしても株式投資の妙味があるかという点については別の話となります。

本日は東南アジアの中で覇権的な地位を手に入れているマレーシアの株式市場に魅力があるのかという点についてお伝えしていきたいと思います。

クアラルンプール総合指数の株価の推移とは?

日本には日経平均株価が日本の株式市場の温度計となっています。マレーシア版の日経平均株価としてクアラルンプール総合指数があります。

マレーシア証券取引所に上場する100銘柄で構成された加重平均指数をいいます。マレーシアの代表的な株価指数で、1977年1月2日を基準日とし、その日の時価総額を100として算出しています。

参照:カブコム証券

 

時価総額加重平均指数ということはTOPIXやS&P500指数と同じ方法で算出されています。時価総額が大きい銘柄から順に指数に組み入れられています。

以下はクアラルンブール総合指数の過去10年の推移です。

クアラルンプール総合指数の株価推移

経済は毎年5%程度で成長しているにも関わらず、この10年間殆ど横ばいで推移しています。経済が成長しているからといって株価が上昇していくとは限らないのです。

以下は日経平均株価とクアラルンプール総合指数の推移です。殆ど成長していない日本の株価指数である日経平均に対してクアラルンプール総合指数に劣後しています。

クアラルンプール総合指数と日経平均株価の比較

マレーシア株式市場に投資する投資信託とETF

マレーシアの株式市場全体に投資する方法についてみていきましょう。

EWM:MSCIマレーシアインデックスに連動するETF

マレーシアの株式市場にまるごと投資するためにETFという選択肢があります。マレーシア株式市場全体に投資できるETFにEWM(=iシェアーズMSCIマレーシアETF)があります。

EWMはMSCIマレーシア指数に連動することを目的とするETFです。ベンチマークのMSCIマレーシア・インデックスは以下のような特徴を有しています。

 

  1. マレーシアの大型および中型の株式に投資
  2. マレーシアの株式市場の時価総額85%を対象に的に絞っている
  3. 単一国への投資手段として活用

 

EWMは残念ながらベンチマークであるMSCIマレーシアインデックスと比較しても下方に乖離してしまっています。

EWMとMSCIマレーシアインデックスとの比較

衝撃的なことに1996年から2021年までの25年間でわずか50%程度しか上昇していません。パフォーマンスとしては残念としかいいようがありません。

マレーシアに投資できる投資信託

残念ながらマレーシア単体に投資ができる投資信託は大手の楽天証券やSBI証券でもありません。

ASEAN全体に投資できる投資信託として以下があります。これらの投信の投資することで一部マレーシア株に投資することができます。

ファンド名 1年リターン 3年リターン 5年リターン
アセアンCAMP-VIP
ファンド
45.52% 7.30% 6.18%
アセアンワールド
ファンド
36.26% 5.13% 6.52%
JPMアセアン成長株
オープン
17.57% 2.21% 6.20%
シャリア関連
アセアン株式オープン
6.53% -0.06% -2.8%
アセアン・オーナーズ
ファンド
11.35% 0.38%
朝日ライフ・MSCI
グローイング
アセアン株式ファンド
6.47% -2.33% 0.98%
アセアン成長国株
ファンド
10.57% -2.36% 2.0%
アセアン真成長株
ファンド
9.43% -2.62% 1.62%

 

上位3つは優秀な成績を納めていますが、上記は楽天の表記である年率リターンではありません。例えば5年リターンが6.18%ということは5年間のリターンが30.9%(=6.18%×5倍)ということになります。

通常の投資の世界で用いられる年率リターンに換算すると5.5%となります。一番成績が良いファンドでも決して良いリターンとはいえません。

新興国投資信託については以下で網羅的にランキング形式で纏めていますので参考にしていただければと思います。

 

 

楽天証券やSBI証券で購入できるマレーシアのおすすめ個別銘柄3選!

それではマレーシアの個別銘柄についてみていきたいと思います。

コロナ後の世界で急回復が期待できるエアアジア・グループ

エアアジアは名前の通り航空業者です。(日本でいうところのANAやJALといったところですね。)業績は以下の通りですが、2020年はコロナ禍の影響から大きく業績が凹んでいます。

2016 2017 2018 2019 2020
売上 6,846 9,710 10,638 11,860 3,131
売上総利益 1,996 1,853 805 1,226 -2,325
純利益 1,622 1,629 1,967 -316 -5,112
EPS (Diluted) 0.58 0.49 0.59 -0.09 -1.53

 

結果として株価は以下の通り大きく下落しています。以下はエアアジアの株価チャートです。コロナで下落してからまだ株価は低い水準で推移しています。

エアアジアの株価推移

ただ、いずれワクチンの普及の進展によって経済が再開していくのは自然のならわしです、いつかはコロナ前の2ドルの水準まで株価が回復していくことが見込まれます。

HLBB:ホンリョン銀行

日本でも新興国であった時代は銀行が経済を支えています。マレーシアの銀行として期待できるのがホンリョン銀行です。マレーシア国内のほか、シンガポールと香港でも営業を行っています。

以下は業績ですが安定しています。本当はもう少し利益を伸ばしてほしいですが、他の銀行も同様です。

ホンリョン銀行の業績推移
2016 2017 2018 2019 2020
利子売上 7,028 7,021 7,324 7,669 7,257
純利子利益 3,380 3,712 3,859 3,751 3,841
純利益 1,903 2,145 2,638 2,665 2,495
EPS (Diluted) 1 1.05 1.29 1.3 1.22

 

株価は以下のようにコロナからも立ち直りはじめ、2018年からの上昇基調を取り戻しつつあります。

ホンリョン銀行の株価推移

 

SEVE:セブンイレブンマレーシア

名前の通りSeven-Elevenブランドのコンビニエンスストアのマレーシアのフランチャイズチェーン。日本マクドナルドのようなイメージですね。

以下は業績推移ですが、コロナであっても大幅な減収とはならず売上は拡大させています。

セブンイレブンの業績推移
2016 2017 2018 2019 2020
売上 2,103 2,187 2,217 2,361 2,539
売上総利益 647 691 817 740 722
純利益 52 50 51 54 30
EPS (Diluted) 0.04 0.04 0.04 0.05 0.03

 

株価は2014年以降横ばいが続いています。それでも現在のPERは50倍という水準です。

セブンイレブンマレーシアの株価推移

現在は売上を拡大させていくために経費を使っており、今後本格的に利益を拡大させる局面になった時に大きく期待できる銘柄です。

まとめ

今回はマレーシアの株式市場の現状についてお伝えしてきました。纏めると以下です。

✔︎ クアラルンプール総合指数は10年間軟調に推移
✔︎ 日経平均よりも低い成績となっている
✔︎ EWMはそもそも連動率が高くない
✔︎ マレーシア単体に投資できる投資信託は存在しない
✔︎ 経済が堅調といっても株式市場が高いリターンを出すわけではない
✔︎ 個別株もあまり高いリターンを望めそうな銘柄がない

マレーシアの株式市場は正直いって旨味が少ないと分析して分かりました。筆者はあらゆる新興国株式市場を分析して魅力的な投資先を検討しています。

以下で、今後期待できる投資先をランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。

新興国投資で投資で大きく資産を増やす投資先とは?投資対象・運用戦略・期待リターンから厳選。
新興国の資産運用

 

 

皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。

先進国と新興国の経済成長率の比較

経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。

新興国の経済成長率の推移を先進国と比較

 

一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。

青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体

先進国に対して劣後する新興国株式市場

参照:MSCI

 

強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。

そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。

 

また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。