東南アジアは経済成長しており、ASEANにも数えられるインドネシアは投資先として注目されています。
インドネシアに進出している日系企業も多く、興味を持っている人も多いかと思います。
インドネシアに投資する一番簡単な方法は投資信託ですが、今回は「イーストスプリング・インドネシア株式オープン」についてその内容や運用成績を解説していきます。
また、インドネシア株式市場全体についての解説はこちらをご参照ください。
イーストスプリング・インドネシア株式オープンの特徴とは
イーストスプリング・インドネシア株式オープンの仕組み
参照:交付目論見書
イーストスプリング・インドネシア株式オープンはファンド・オブ・ファンズ形式で運用を行います。
投資対象ファンドは「イーストスプリング・インベストメンツ-インドネシア・エクイティ・ファンドクラスJ」となっており、そちらを通してインドネシア株式へ投資を行います。
イーストスプリング・インドネシア株式オープンの委託会社(=運用を指図する者)はイーストスプリング・インベストメンツ株式会社ですが、投資対象ファンドの運用会社はイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッドとなっているため、実際の運用者はイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッドです。
投資信託では、委託会社(=運用を指図する者)と実質的な運用者が異なることはよくあるので注意して下さい。
運用者の強みとは
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッドは、アジアで実績のある会社であり、属するグループはアジアにおける15の国で生命保険や資産運用業を展開しています。
参照:交付目論見書
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッドの株式運用チームは、グループ内のアジア各国・地域の運用会社と連携して運用を行っています。
イーストスプリング・インドネシア株式オープンはグローバルな運用グループが行っている投資信託だと言えます。
具体的な運用手法とは
それでは、どんな運用戦略で投資しているのでしょうか。
参照:交付目論見書
まずはバリュー投資で銘柄をふるいにかけ候補銘柄を導きます。そして、ファンダメンタル分析を行ってさらに絞り込み、リスクリターンを考慮しながらポートフォリオを決定していきます。
では、その絞り込みの結果どのような銘柄に投資しているのでしょうか。
投資先銘柄トップ10
組込先の上位10銘柄はこちらです。
銘柄 | 比率 | 概要 |
テルコム・インドネシア | 9.2 | インドネシア最大の通信会社。携帯電話や固定電話、インターネッドなど幅広いサービスを提供。 |
バンク・ラヤット・インドネシア | 8.7 | 商業銀行。1895年設立とインドネシアで最も古い歴史を持ち、特に中小企業向け融資に強い。 |
バンク・セントラル・アジア | 7.9 | 大手商業銀行。インドネシアを拠点に法人や個人向けの金融サービスを展開。証券管理や事務代行、信託業務も展開。 |
バンクネガラインドネシア | 6.4 | 国有銀行。商業・個人向けに銀行業務を展開。国内に1000以上の支店があり、海外にも支店を保有。 |
アストラ・インターナショナル | 6.4 | 自動車メーカー大手。自動車や二輪車部品の組み立て・販売、その他鉱業や農業、金融サービス、ITなどの事業も展開。 |
バンク・マンディリ | 4.8 | インドネシア最大級の国営商業銀行。リテール顧客・法人向けサービス、コーポレートバンキングなどを提供。 |
サラナ・メナラ・ヌサンタラ | 4.8 | 子会社を通じて、所有するモバイル通信タワーを無線通信事業者に貸し出す。 |
ムルデカ・コッパ―・ゴールド | 4.7 | 鉱山会社。主に金や銀、鋼を採掘。 |
インドフード・スクセス・マクムル | 4.0 | 大手食料品メーカー。子会社を通じて、ベビーフード、スナック菓子、調味料、即席めんなどを製造。 |
アネカ・タンバン | 3.9 | 鉱山会社。主にニッケル、金などの各種鉱物を採掘。金属生産も行い世界で事業を展開。 |
金融やITがシェアの多くを占めています。組入れ銘柄数は24となっており、他の新興国投資信託と比較してもかなり少なくなっています。
組入れ銘柄数は少ないということは、値動きが大きい投資になりやすいためハイリスクな投資となるのが特徴です。
運用効率が悪い分配金
続いて分配金システムについても確認しておきましょう。
投資信託では「分配金あり」のものと「分配金なし」のものがありますが、「分配金なし」のものの方が良いです。
詳しい説明は省きますが、簡単に言うと「分配金あり」だと運用の原資が減ってしまい運用効率が悪くなってしまうからです。
「分配金あり」と「分配金なし」で全く同じ運用成績だった場合、最終的に得られる利益は「分配金なし」の方が大きいです。
それでは、イーストスプリング・インドネシア株式オープンはどうでしょうか。
参照:交付目論見書
これまでに累計8000円分配されており、残念ながら「分配金あり」の投資信託となっています。
分配額も大きいので、減点評価せざるを得ないポイントです。
手数料は高い?安い?
続いて、重要な手数料についても見ていきましょう。
まず、投資信託の手数料の種類はこちらの3つです。
- 購入する際の手数料
- 保有している間の手数料
- 解約する際の手数料
ただし、どの投資信託でも3つ必要という訳ではなく、①の購入時手数料や③の解約時の手数料はかからないものもあります。
では、イーストスプリング・インドネシア株式オープンの手数料はどうでしょうか。新興国に投資する投資信託「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」と比較してみましょう。
イーストスプリング・インドネシア株式オープン | eMAXIS Slim新興国株式インデックス | |
購入時の手数料 | 3.85% | なし |
保有時の手数料 | 年1.888% | 年率0.1870% |
解約時の手数料 | 0.3% | なし |
eMAXIS Slim新興国株式インデックスは特に手数料が安いファンドなのですが、それとは関係なくイーストスプリング・インドネシア株式オープンの手数料は非常に高いです。
購入時の手数料3.85%は投資信託の中でもトップレベルに高いですし、保有時の手数料と解約時の手数料もかなり高い水準です。
どのタイミングでも高額な手数料がかかるのがイーストスプリング・インドネシア株式オープンの特徴です。
イーストスプリング・インドネシア株式オープンの運用成績とは
設定来の推移
「手数料が高い」=「投資してはダメ」かというとそうではなく、それに見合った運用成績が見込めるのであれば問題ありません。
という訳で運用成績を見てみましょう。
参照:交付目論見書
設定直後は成長していましたが、分配金を出しているため長期で見ると基準価格は下落傾向にあります。
分配金再投資の基準価格で見ても長期で横ばいかやや上昇かくらいの水準です。
これだけではよく分からないので数字でも見てみましょう。
データで見る運用成績
データで見る運用成績はこちらです。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | |
トータルリターン | 7.02% | -6.79% | -4.48% | -1.46% |
標準偏差 | 26.90 | 32.26 | 26.70 | 25.81 |
シャープレシオ | 0.26 | -0.21 | -0.17 | -0.06 |
過去1年の運用成績は7%とプラスですが、3年~10年で見るとそれぞれマイナスとなっています。
なかなか厳しい結果となっていますね。
さらに、今年の1年でもシャープレシオに注目してみましょう。
「シャープレシオ」・・・リスクに対するリターンの割合。数字が大きいと良く、小さいと悪い。1を超えると優秀と評価できる。
シャープレシオは0.26と非常に小さくなっており、1年で見てもリスクに見合ったリターンを得られていません。
ハッキリ言ってイーストスプリング・インドネシア株式オープンの運用成績は良いとこなしの結果となっています。
まとめ
イーストスプリング・インドネシア株式オープンの特徴をまとめるとこちらです。
- 実質的な運用者はイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
- 組入れ銘柄数は24と少ない
- 運用効率が悪い分配金システムを採用
- 手数料は高い
- ほとんどの期間でマイナスとなっており、運用成績は悪い
残念ながらイーストスプリング・インドネシア株式オープンには投資すべき魅力は感じられません。
新興国投資でハイリターンを得たいなら他のファンドがおすすめです。
より良い投資先をお探しの方は、筆者が世界各国に投資するファンドをそれぞれ分析・比較しておすすめファンドランキングを作成していますのでそちらを参考にしてみて下さい。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。