確かにインドは最終的に中国を抜いて21世紀中盤に世界No.1のGDPになるともいわれています。
このように考えインド株投資を検討している人は多いのではないでしょうか?
ですが果たして本当にインド株投資は儲かるのでしょうか?
確かに一般的には新興国投資としてインド株式市場は注目されています。しかし、筆者はインド株式投資は明確に儲からないと考えています。
世間で言われていることを盲目的に信じてだまされてはいけません。これからインド株に投資すると失敗する理由を解説していきます。
世間でインド株投資が注目されている理由
BRICSに数えられるインド株投資
まずは、世間でなぜインド株投資が注目されているのかから確認していきましょう。
そもそもは2001年にアメリカの証券会社ゴールドマンサックスのアナリストが投資家向けレポートでBRICSとして注目の新興国を挙げた事に端を発します。
B:ブラジル
R:ロシア
I:インド
C:中国
S:南アフリカ(元々は複数形のSだったが2011年に南アフリカが追加)
BRICSとして一つのグループにまとめられたことから、これらの国々は2000年代以降注目を集め続けてきました。
インド株投資がハイリターンを期待される理由
BRICSへの投資にハイリターンが期待される理由は何といってもこれらの新興国が経済成長していくと期待されているからです。事実、これまでインド経済は順調に成長してきました。インドのGDP推移がこちらです。
参照:TRADING ECONOMICS
2011年には1兆8000億ドル程度でしたが、2021年には2兆8000億ドル程度と約1.5倍になっています。経済成長率は中国は勿論のこと、ASEANをも上回るペースで高成長を維持しています。
ちなみにこの間に日本は約6兆ドル → 約5兆ドルと20%弱減少していますので、インドの経済成長がいかにすごいか分かりますね!
そして、経済成長に合わせてインド株式市場も順調に成長してきました。インドの代表的な株価指数であるSENSEXの推移はこちらです。
2011年には20,000程度であったものが、2022年に650,000を超えており3倍程度に成長しています。GDPは1.5倍ほどの成長でしたので、インドでは株式市場の成長が特に著しいことが分かりますね。
これまでインドの経済や株式市場が順調に成長してきたことは分かりましたが、大切なのはこれからです。今後のインド経済や株式市場はどうなっていくのでしょうか。
インドは本当に経済成長していくのか?
人口から見るインドの経済成長
インド経済が成長してくか考えるにあたってまずは人口から見ていきましょう。
人口は経済成長に当たって極めて重要な要素であり、人口が増加していく国はいわゆる人口ボーナスの恩恵を受けられるため経済成長しやすいです。
インドの人口が今現在多いのは既知の事実ですが、これから増加し続けるのかもきちんと確認が必要です。そのために、人口動態を確認してみましょう。
きれいなつりがね型となっており若い人が非常に多いことが分かります。そして、今後の人口推移のシミュレーションも見てみましょう。
インドでは2059年まで人口が増加し続けていき16億人に達することがわかります。もうすぐ中国を抜いて世界1位になることが確実な状況となっています。
非常に人口が多く、さらに今後約40年間増え続けていくということで、人口という観点から見るとインド経済の成長には大きな期待ができます。
経済政策から見るインドの経済成長
続いて経済政策も見ていきましょう。インドの首相は2014年からナレンドラ・モディ氏が務めています。
元々グジャラート州で州首相をつとめ、そこで経済成長を実現したことから国政でもその手腕を発揮することが期待されており彼の経済政策はモディノミクスと呼ばれています。
モディノミクスでは主にインフラ整備や外貨の受け入れを推し進め、安定的な経済成長を実現しています。
参照:世界経済のネタ帳
1980年以降からの推移で見ても、インド経済は順調に成長し続けています。2020年に初めてマイナス成長を記録してしまいましたが、この原因は言わずもがなコロナウィルスです。
モディ政権はすぐに「自立したインド」という新しいスローガンを掲げ輸入に頼らない産業構造を作り上げることによって自立したインド経済を目指しています。
モディ政権の迅速の経済対策によりも2021年には+12%の成長が見込まれており鮮やかなV字回復となっています。
経済成長にだまされるな!
インドという国が持つポテンシャルは非常に大きく、有事の際の対応を見ても今後のインド経済成長には非常に大きな期待ができます。
そう思った方、ご注意ください!実はここに大きな落とし穴があります。
「経済成長」という言葉にひかれてすぐに投資してはいけません。なぜなら、資産運用で利益を出すためには絶対に安く買って高く売る必要があります。つまり、今のインド株の株価が安いか高いかを必ずチェックしなければいけないのです。
✔ 経済成長するだけでは買ってはいけない
✔ 株価が安いか高いかを必ずチェックする
インド株は割安なのか?
インド株式市場と世界の比較
それではインドの今の株価は安いのでしょうか?高いのでしょうか?
国ごとにPERを比較してみましょう。PERとは株価が割安が割高かを判断するための代表的な株式指標で、数字が小さければ割安、数字が大きければ割高を意味します。
以下は2021年12末時点での各国のPERとPBRの比較が以下です。インドは米国と並んで最も高い株式市場の一つとなっています。下記をみると中国株の割安度が群を抜いていますね。
先進国のPERが32倍で新興国のPERが18.7倍と先進国の方が新興国よりもPERが高くなっています。ですが、インドのPERは33倍となっており先進国の水準を超えています。
例えばこの表で見ると日本のPERは17.8で小さく見えますが、一昔前は12~13程度でしたので、感覚的には日本の17.8倍でも割高だなぁという印象です。そして、インドのPER33倍はそれを大きく上回っています。
株式は企業実態に関わらず人気が高ければ買う人が増え株価はどんどん上がっていきます。つまり、BRICSとして注目されているがゆえ、インドは新興国でありながらすでに先進国を超える株価水準になっていしまっているわけです。
いまいちイメージし辛いかもしれませんが、ハッキリ言ってインドの現在のPER水準は世界的に見てもめちゃくちゃ高い水準なのです。
過去のPER水準との比較
そう思われた方もいるかもしれません。念のために、過去のインドのPERとも比較してみましょう。
インドのPER比較
2023年1月 | 22.5 |
---|---|
2021年5月 | 32.4 |
2019年5月 | 21.7 |
2017年5月 | 22.6 |
2015年5月 | 20 |
2013年5月 | 15.7 |
2013年からの8年間でインドのPERは約1.5倍になっています。
これは、同じ価値の会社の株が、2013年には1000円で買えたのに、2023年では1500円払わないと買えないことを意味します。
不動産で考えたら分かりやすいかもしれませんね。昔は1億円で買えたマンションが今は1.5億円払わないと買えないわけです。いくらいい物件だと言っても1.5倍の高値でつかんで利益が出るでしょうか?
価格が上がり続ければいいですが、そんな事が起こらないのは日本の不動産バブルでも証明されていますよね。
「今後、経済成長していく」という言葉にひかれて投資したくなってしまいますが、高値掴みだけはしないように注意して下さい。
それでもどうしてもインド株に投資したいという方は個別のインド投資信託についても解説していますのでそちらも参考にしてみて下さい。
新興国投資で利益を上げる方法とは
じゃあ、いまから新興国に投資しても儲からないのかというとそんなことはありません。
新興国投資で利益をあげたいなら
- 「経済成長する国の株」を
- 「割安な価格」で買う
事が必須です。
これを満たしているのは中国株式です。同じBRICSでも中国株式はまだまだ割安な水準です。
もう一度先ほどのPERの比較図をみていきましょう。
中国株はちょうど9年前のまだ割安なインドと同水準ですね。中国はこれから間違いなく経済成長していく国ですし世界1位の経済大国になるとも言われています。
新興国株式投資をお考えの方には中国株での運用を強くおすすめします。私自身も新興国株投資は中国株1本に絞って行っています。
さらに、ただ中国の株式を購入するのではなく中国株のスペシャリストであるヘッジファンドを通して運用しています。
「新興国株投資でハイリターンを得たい」
「中国株に投資してみたい」
「運用のプロであるヘッジファンドが気になる」
そういった方は下記にて中国株スペシャリストのヘッジファンドも解説してますのでぜひご一読ください。
インドの個別株へはADRで投資するしかない
今までの話をまとめるとインドは確かに成長力が高く魅力的ではあるものの、既に織り込まれておりある程度割高感があるということをお伝えしてきました。
新興国の中から銘柄を選ぶのであれば他の選択肢の方が魅力的ではありますが、あえてインド株に投資するのであれば、どの銘柄が良いのかという点にフォーカスして記載していきたいと思います。
インドは外国人がインド株を購入することができないのでADRという仕組みを使って購入することになります。
ADRは以下の通りの仕組みです・
インドの株式会社が発行している会社を米国銀行のインド法人が購入して、米国で現地法人が購入した株を担保として米国株式市場に上場するという仕組みです。
つまりインドの株式を間接的に米国株式市場で購入するということになります。ADRで購入できる銘柄は以下となります。数は決して多くありません。
個別銘柄とETFを1銘柄ずつ紹介したいと思います。
インドのおすすめ銘柄:HDFCバンク
1つ目はインドの大銀行のHDFCバンクです。インドの中央銀行から初めて承認を受けた銀行です。1994年創業しています。
新興国の経済全体の成長を取り切るのであれば銀行株を購入するのが一番合理的です。日本でもバブル崩壊までの高度経済成長期は銀行株が躍進していきましたからね。
業績は以下の通り右肩上がりに堅調に推移しています。
Mar-18 | Mar-19 | Mar-20 | Mar-21 | Mar-22 | Mar-23 | |
売上高 | 843,465 | 1,041,714 | 1,211,982 | 1,275,967 | 1,333,137 | 1,187,541 |
当期利益 | 178,514 | 220,103 | 260,269 | 325,977 | 386,000 | 464,338 |
EPS (INR) |
103.77 | 123.19 | 142.78 | 177.82 | 209.29 | 241.02 |
PER (倍) |
38.68 | 38.24 | 21.94 | 35.58 | 25.59 | 22.29 |
配当(INR) | 19.5 | 22.5 | 7.5 | 0 | — | 52.29 |
PERも徐々に下がってきており株価も上昇基調を維持しているので期待が持てますね。
インド株に投資できるETF:02836(iシェアーズコア S&P BSE SENSEXインディアETF
次に香港のETFです。ETFは株式と同じく株式市場がオープンしている間に株式と同様に売買することができるファンドです。
名前に入っているとおりインドの日経平均ともいえるS&P BSE SENSEXに連動することを目指すETFです。
SENSEX指数とは、インド株式市場の代表的な株価指数です。ムンバイにあるインド共和国最大のボンベイ証券取引所(Bombay Stock Exchange)に上場する銘柄のうち、流動性、取引規模、業種などを代表する30銘柄で構成される時価総額加重平均指数で、「BSE SENSEX(S&P Bombay Stock Exchange Sensitive Index)」や「SENSEX30」とも呼ばれます。1979年4月3日を基準日とし、その日の時価総額を基準値100として算出されます。
参照:SMBC日興証券
インドセンセックス指数に連動を目指すものの以下の通り実際には大きく乖離する結果となっています。
しかし、他のETFも残念ながら乖離率は大きいので、ここはインド株価指数に投資する上では許容せざるを得ないですね。
ただ、先ほども申し上げた通り既に割高水準でもあるため投資は慎重におこなった方がよいでしょう。
まとめ
インドの経済は魅力的ではありますが、株価は割高水準で魅力は低くなっています。
インドの個別株に直接投資することはできずADRという仕組みを使って投資することになります。取り敢えずインドの経済成長を享受できる大銀行の銘柄などが魅力的になってくるでしょう。
また、インドの株価指数連動を目指すファンドも存在しますが、残念ながら乖離率が高くなっています。
以下では新興国の中で最も魅力的な投資先はどこなのかという観点にたってお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。