前回、フィリピンの経済と株式市場の現状についてお伝えしてきました。
簡単に纏めると以下の内容でした。
✔︎フィリピンの経済成長率は高い
✔︎今後も成長が持続していることは確定的
✔︎ただ、株式市場が上昇するにはまだ早い水準
✔︎過去10年フィリピン総合指数は横ばい
✔︎先進国から投資できる環境は整備されていない
✔︎日本からはアイザワ証券経由で個別銘柄の取引が可能
✔︎楽天証券やSBI証券からETFや投資信託に投資が可能
では、結局のところどの新興国が見通しが明るいのか?
という点については以下の見通しの記事でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
https://indexnz.com/emerging-prospect/
今回はフィリピンの株式市場に投資する場合に、どのような投資手法がいいのかという点についてお伝えしていきたいと思います。
フィリピン株式市場に丸ごと投資ができるETFと投資信託
まず、お手軽パッケージとして投資する際に考えられるのがETFと投資信託です。これらは楽天証券やSBI証券からでも投資が可能です。
EPHE:iシェアーズ MSCI フィリピンETF
まず、候補にあがるのがETFです。ETFは上場投資信託と呼ばれており、株式と同様に場中に売買できる投資信託です。
フィリピンのETFとしてEPHEが楽天証券やSBI証券で取り扱われています。
ETFは基本的に連動を目指すインデックス(=指数)が存在します。EPHEが連動を目指しているにはMSCIフィリピン・インベスタブル・マーケット指数です。
MSCI・フィリピン・インべスタブル・マーケット指数の価格と利回りパフォーマンスに大体連動する投資成果を追求する。同指数は浮動株調整後の時価総額加重平均指数であり、フィリピンの証券取引所に上場する持分証券の時価総額がトップ99%の持分証券のパフォーマンスを測定するために設計されている。同ファンドは金融、工業、ユーティリティ、通信サービス、生活必需品、一般消費財、原材料、エネルギーおよびST証券などに投資する。
浮動株というのは投資家が取引できる株のことです。企業は発行する株式の中には、創業一族が保有していたり、他の企業が政策目的で保有している分もあるのです。
それらを除いた取引可能な株式から算出される時価総額が大きい順に組み入れたものが浮動株調整後の時価総額加重平均指数です。
以下はフィリピン総合指数とEPHEの比較です。
赤:フィリピン総合指数
青:EPHE「iシェアーズ MSCI フィリピンETF」
EPHEはフィリピン総合指数とほぼ同様の動きをしていますが大きく下方乖離しています。浮動株のみを用いた時価総額加重平均指数であることが影響しています。
今後の見通しについては超長期ではリターンが期待できますが、前回お伝えした通りフィリピン自体がまだ株価が急騰する段階ではありません。依然として停滞相場が続くことが見込まれます。
アクティブ型の投資信託である「フィリピン株ファンド」
フィリピン株ファンドはフィリピン証券取引所に上場している株式並びに世界各国・地域の取引所に上場しているフィリピン関連企業に株式に投資するアクティブ型の投資信託です。
フィリピン株ファンドは26銘柄で構成されておりフィリピンを代表する以下のような銘柄が組み入れられています。上位10銘柄で約75%を占めています。
以下はフィリピン株ファンドのリターンの推移です。税引前分配金込基準価格は10年ちょいで約2.5倍になっています。ただ、実際は分配金を出した時に20.315%の税金が拠出されるので以下の赤のリターンは実現不可能です。
高すぎる分配金によって投資家リターンは毀損していますが、高いリターンをだしています。ただ上記ご覧をいただくとわかる通り、非常にボラティリティの高い株価チャートとなっています。
2014年のピーク後は長期的に下落トレンドとなっており、現在投資をするのは危険とみた方がよいでしょう。
フィリピンのおすすめ個別銘柄とは?
それではアイザワ証券で購入できる個別銘柄で、魅力的なものを取り上げていきたいと思います。フィリピンを代表する銘柄は財閥系の銘柄が多くなっています。
AC:Ayala Corporation(=アヤラコーポレーション)
フィリピンは戦中戦後の日本のように財閥が経済を取り仕切っています。その中で最も力をもっているのがアヤラです。
アヤラはフィリピン最大ノコングロマリッドで戦前戦中の分裂前の三菱のような会社であると捉えていただけますと想像しやすいですね。
銀行、通信、水道などの基幹産業の殆どをカバーしています。以下の通り売上高と営業利益、純利益ともに右肩上がりで上昇しています。
PHP millions | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
売上 | 256,891 | 264,907 | 193,622 | 225,592 | 263,820 |
純利益 | 31,818 | 35,279 | 11,945 | 27,774 | 27,398 |
コロナが発生するまでは売上は年率9%、純利益は年率10%で増加していっています。以下は株価チャートです。
利益がコロナで凹んだことで株価も軟調になりPERも一時期34倍と若干割高になりましたが、コロナ後利益は回復し今ではPER15となっています。
そして、三菱が発展してきたことからもわかる通り、超長期投資を行えばフィリピンの成長とともに株価が上昇していくことが見込まれます。
AGI:アライアンス・グローバル・グループ
AGIはフィリピン最大企業の1つで大手不動産開発会社のメガワールドを所有しています。
また、不動産事業だけではなくEmperadorという有名なブランデーを製造している会社としても有名です。
以下はAGIの売上高と純利益の推移です。コロナで落ち込んでいますが2019年に加速をしはじめていました。
PHP Millions | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
売上 | 135,644 | 151,452 | 174,563 | 124,555 | 142,946 |
純利益 | 15,192 | 15,114 | 17,722 | 8,829 | 16,944 |
株価は業績の成長とは裏腹に横ばいとなっています。PERは6.8倍と割安水準で今後の上昇に期待できる値動きとなっています。
SM:SMインベストメント
SMインベストメントはフィリピン最大の企業で、フィリピンの大富豪であるヘンリー・シーが保有する最大のコングロマリットです。
EPHEの最大の構成銘柄でもありフィリピンを代表する企業となっています。
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
売上 | 430,624 | 475,931 | 377,149 | 401,289 | 553,800 |
純利益 | 37,078 | 44,568 | 23,390 | 38,500 | 61,700 |
株価は停滞と上昇を繰り返しながらステージを上げてきています。
コロナ後、利益は回復しコロナ前の水準を上回る成長を見せています。現在のPERは20倍となっており、そこまで割高ではない価格で投資可能です。筆者としてはSMインベストメントが最も期待できる銘柄と考えています。
まとめ
今回のポイントを纏めると以下となります。
✔︎ EPHEは浮動株時価総額加重平均指数だがフィリピン総合指数と同様の値動き
✔︎ フィリピン株ファンドは指数よりよいが高すぎる分配金で投資家リターンを毀損
✔︎ フィリピンの有力株は日本の戦中戦後と同じく財閥系企業が多くを占める
フィリピンは確かに国としての成長可能性は高いのですが、経済のステージや投資環境から考えて更に高い新興国は存在しています。
以下では新興国投資を検討されている皆様に向けて、新興国で魅力的な投資先をランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。