新興国株式を検討する上で、「経済成長が継続するであろう国」を前提に選ぶのはがセオリーと言えるでしょう。
こと新興国に至っては株式市場がそもそもしっかりと整備されているのか?健全な取引がなされ、株式市場自体が成長しているのかを見る必要があります。
新興国株についてはある程度経済成長している国の方がその意味では安全です。不動産などは、まだまだ貧困地域が多く成長余地がある国を選ぶ方が良いです。それぞれ視点が違います。その点を最初に理解しておく必要があります。
今回はタイに関して、良い感じで成長を遂げている国の一つとして、投資妙味があるのかどうか、投資をするのであればどのような対象があるのかを見ていきます。
タイの基本概要と経済事情
国・地域名 | タイ王国 Kingdom of Thailand |
---|---|
面積 | 51万3,115平方キロメートル(日本の約1.4倍) |
人口 | 6,641万人(2018年、出所:内務省) |
首都 | バンコク(タイ語名:クルンテープ・マハナコーン) 人口568万人(2018年、出所:内務省) |
言語 | タイ語 |
宗教 | 人口の約95%が上座部仏教、その他イスラム教(4%)、キリスト教(0.6%)など |
出典:JETRO
タイの首都はバンコク。人口は6,641万人と日本の半分ほどの規模です。土地面積は日本より大きい1.4倍。日本と比べると人口密度は薄いですね。公用語はタイ語。日本人からすると暗号にしか見えない文字を扱います。(タイ人からすれば日本語も意味不明ですが)
タイと言えば1997年のアジア通貨危機の震源地です。ヘッジファンドとタイ政府(中央銀行)の攻防の結果、アジア経済に多くの打撃を与えました。その後、2000年台はタイは大きく経済成長を遂げました。アジアのデトロイトとも呼ばれるほどの自動車市場の成長がありました。ASEANの中でもリーダー的存在ですね。
タイの経済指標を見ていきましょう。以下数値は2019年ベース/2020年GDP成長率見込および斜体箇所はIMF推定値です。
国力を測る上で非常に重要な指標である「一人当たりGDP」がタイは7,807ドルです。日本の40,256ドルを考えると、一人当たりが稼ぐパワーは約1/5です。まだまだ新興国ですね。そろそろ1万ドルの中所得国の罠に差し掛かります。ここをスムーズに突破できるのか、タイ政府の舵取りに注目が集まりますね。
タイのGDPの推移は以下の通りです。
アジア通貨危機で悲惨な状況に陥りましたがそこからは右肩上がり、リーマンショック後もV字回復を見せました。流石に近年は7%や8%の経済成長率は維持できず、4%程度に落ち着いていますが、堂々たる数字だと思います。コロナ騒動収束後も年率4%の成長率をIMFに見込まれています。
産業構造については2019年時点でサービス業が59%を占めています。2000年時点で知識集約型の産業にすでにシフトしており、サービス業比率も4%の上昇になっています。金融業は+4%、情報通信業は+6%。
健全なシフトを進めつつも、成熟してきていることがわかります。ここから一段と金融業、通信業などの比率が上昇し、中所得国の罠を越えていけるのかを見届けたいところです。
さて、肝心要の株式市場をチェックしていきましょう。タイと言えば海外不動産の急先鋒として人気な市場でした。株式市場はどのような状況なのでしょうか?
タイの株式市場
タイの代表株価指数は「SET指数(TheStockExchangeofThailand)」です。日本でいうTOPIX(日経平均は225銘柄しか組み入れられていません)、米国でいうS&P500です。
SET指数はタイ証券取引所(SET)に上場する全銘柄を対象とする時価総額加重平均で算出した株価指数です。
この代表指数の成長性を見ていけば自ずとタイ株の成長性は把握できてくるでしょう。
<SET指数>
- 総銘柄数:551
- 時価総額:約548,795 million USD(約5.4兆円)
- 代表銘柄:タイ石油公社/タイ空港公社/CPオール/アドヴァンスト・インフォ・サービス
タイ証券取引所(SET)の銘柄数は約551銘柄です。SET指数は551銘柄の動きに連動します。時価総額が非常に低いですね。5.4兆円です。日本は東証一部が700兆円、米国NYSEは約3,000兆円です。ベトナムですらホーチミン証券取引所が15兆円あります。
経済成長の割に、株式市場はそこまで盛り上がっていないことがわかります。
しかし、株式投資家視点では、低い時価総額はまだまだ先駆者になれる可能性を秘めている点では非常にポジティブな側面があります。
以下はSET指数の相場の動きです。コロナショックで969THBまで割り込みました。
現在は1580THBまで回復。64%程度の回復です。まだコロナ前の水準には戻っていません。
タイ株式市場はS&P500ほど回復していないですね。S&P500はコロナ前を上回り急速に回復・上昇しましたが、その後下落しています。
SET指数の動向を長期で確認します。出来高(売買高)が年々活発化していれば、今後成長余地が見込めると思います。市場が育つには、強い売買が必要です。
出来高は年々増加しており素晴らしいです。リーマンショック後の2009〜2013年の5年間で凄まじい成長を見せています。高値までなんと+290%と約4倍の成長です、それ以降は出来高も増加させつつ、上昇を続けるもコロナショックで腰を折られてしまっています。
ボラティリティは大きいですが、投資妙味がある株式市場と言えると思います。出遅れ株を購入するような感覚でインデックスを購入するのが良さそうです。(インデックス投資ではありますが、感覚は個別株です。放置していれば良い投資ではありません)
タイ株式市場はSET指数へのインデックス投資(iシェアーズ MSCI タイETF)なら妙味はあると言える?
タイETFは色々種類が出ています。
SET指数に連動するETFを買うなら以下が良さそうです。
Thai DEX SET High Dividend ETF・・・SET上場銘柄の内、時価総額が高く、高い流動性を維持している高配当30銘柄に投資。
安全に投資しようと思ったらとにかく時価総額が高い流動性のある株です。日本で言えばトヨタなどの大型株です。30銘柄というのはタイ株式市場を考えると少し怖いですが。
BCAP SET 100 ETF・・・SET100 の構成銘柄(流動 性が高く時価総額の高い上位 100銘柄)に投資し、譲渡益、配当益両方を目指す。
こちらは100銘柄なので、分散がされていて安心です。株式市場自体はボラティリティが高いのですが。
ちなみに、ガッカリさせて申し訳ないのですが、これらは筆者調べですと、タイ在住者でないと買えません。タイSBIで購入可能です。非常に現実的ではないですね。
日本から買うとしたら、代表的な以下の商品でしょう。
iシェアーズ MSCI タイ ETF は、タイの株式全般で構成される指数と同等の投資成果を目指しています。
◇ NEXT FUNDS タイ株式SET50指数連動型上場投信
・・・SET50 Indexは、タイ証券取引所のメイン・ボードに上場する株式のうち時価総額が大きく流動性の高い上位50銘柄で構成される株価指数です。指数の計算方法は、時価総額加重平均方式です。構成銘柄の見直しは、毎年6月および12月に行なわれます。1995年8月16日を基準日とし、その日の指数値を1,000として算出されています。
個人的にはiシェアーズ MSCI タイETFを推したいです。
パフォーマンスを見ていきましょう。
当たり前ですが、SET指数と連動していますね。
タイ経済、タイ資本市場が成長するかどうかが大きな分かれ目です。経済は一人当たりGDPが7,807ドルです。中所得国の罠である10,000ドルを難なく突破できれば資本市場も盛り上がるでしょう。
タイも有望ですが、新興国の中ではもっと魅力的な選択肢はあると思いますので、タイに特別な思い入れがない筆者はタイ投資をすることはないと思います。(特別な思い入れ自体、間違った投資法でもあります)
タイ株を購入するにはどこの証券会社があるのか?
先出ししておくと、iシェアーズ MSCI タイETFは楽天証券、SBI証券で買えます。もうこれで良いような気もしています。無理に個別株をタイでやるのは、相当に現地知見など投資家に強みがないと厳しい気がします。
タイの個別株を購入するには、楽天証券が良さそうです。
アジア・アビエーション、タイ空港公社、アユタヤ銀行など聞いたことのある名前が並んでいますね。筆者は新興国の個別株まで細かく見ることはありませんが、本腰でタイ株に挑戦する人はトライしてもいいかもしれませんね。
もしくは、iシェアーズ MSCI タイETFのリターンよりも上を目指したいという人は、タイ株に特化した投資信託を探してみても良いかもです。タイ投資信託については筆者も色々これから見ていこうと思います。
まとめ
タイ株を個別でやるのであれば相当な覚悟と現地知見、スキルが必要であることがしっかりと認識できました。
最後にまとめると、タイ株式市場は健全に成長をしていますが、新興国ですのでボラティリティは避けられません。唯一投資をしても良いと思えるのはSET指数に連動するETF。iシェアーズ MSCI タイETFですね。
個別株は、SET指数の時価総額が5兆円規模とビットコインよりもボラティリティがある状況。しかし今後の海外からの直接投資が増えれば増えるほど、まだまだ上昇ペースは落ちない可能性はあります。「夢投資」枠ですね。これはベトナムなどと同様です。
少額で買って10年くらい放置して、10年後に宝くじ感覚で見る感じの投資を考えているのであればそれもよしかもしれません。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。