中国は近年凄まじい勢いで技術躍進が進み米国に次ぐ第二のハイテク企業として名乗りをあげています。
https://indexnz.com/china-economy/
その中でも中国には米国のGAFAに相当するテックジャイアントとして「BATH」が急激に存在感が増しています。
B:Baidu(百度)
A:Alibaba (アリババ)
T:Tencent (テンセント)
ただ、隣国で名前は聞いたことがあっても実際どのようね銘柄かあまり分からないという方も多いのではないでしょうか?
本日は注目度が高まっているBATHについてどのような企業か紹介していきたいと思います。
Baidu(バイドゥ):中国版Googleを運営
検索エンジンとして蓄えたデータとAI分野で事業を展開
検索エンジンの1位はGoogleで2位はYahooですが、3位は百度です。中国人は検閲によって実質的にGoogleやYahooを使用できないので百度こそが検索エンジンという認識になっています。
バイドゥはBIDUのTickerコードでナスダックに上場しています。時価総額は635億ドルとなっています。
BIDUは当然検索エンジンを保有しているのでGoogleと同様に検索エンジンの中での広告収益を主な収益の柱としています。月間利用者は6億人を超えています。
検索エンジンを事業として行うためにはAIによる判断が不可欠です。どのサイトを上位に表示するかはAIが判別します。そのため、BIDUはAIを元にして自動運転などにも取り組んでいます。
その他、クラウド事業やGoogleでいうYoutubeのような動画サイト愛奇芸も手がける中国の総合テクノロジーカンパニーとなっています。
業績は回復途中であるが成長力の低下が懸念され株価は横ばいが続く
順調に売上は拡大基調にありましたが2019年に残念ながら純利益が大きく凹んでいます。
mil RMB | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
売上 | 70,549 | 84,809 | 102,277 | 107,413 | 107,074 |
営業利益 | 10,049 | 15,691 | 15,530 | 6,307 | 14,340 |
純利益 | 11,632 | 18,301 | 27,573 | 2,057 | 22,472 |
参照:BaiduのIR
これは表面上は検索エンジンのシェアの低下、愛奇芸のコストの増大などと言われていますが実態はテレビ企画での大判振る舞いと言われています。
中国の旧暦の大晦日に日本の紅白のような「春節聯歓晩会」があるのですが、ここれ19億元をばらまいたことが影響していると言われています。更に、それに付随した費用も嵩むことから収益が凹んでしまいました。
2020年はコロナで売上成長率は低くなりましたが利益水準は回復してきています。
以下は株価推移ですが2005年の上場以降、大きく上昇してきましたが業績の伸びが鈍化していることが影響し2017年以降は停滞相場となっています。
Alibaba(アリババ):中国版のアマゾン
中国版のアマゾンとして圧倒的な地位を確立し電子決済分野でも強い地位を誇る
アリババをバイドゥと同じく米国市場に上場しています。TickerコードはBABAで時価総額は5730億ドルとなっています。
中国の事業化として最も有名なジャック・マー氏によって1999年に設立された企業です。中国版のアマゾンといわれるECのTaobao、BtoCのECサイトの天猫(Tmall)が主力となっています。
中国国内で約9億人、国際的な顧客も含めると10億人以上の顧客基盤を有しています。
その他にも電子決済のアリペイは中国のどこでも使用されているツールとなっています。筆者も2019年に桂林という地方都市に旅行にいった際に既に決済は基本アリペイという状況になっていました。
他にクラウド事業やデジタルメディア事業もおこなっていますが、現状eコマース事業が売上の9割を占めていますし、eコマース以外は成長期ということもあり赤字になっています。
堅調に右肩あがりの業績推移も独禁法抵触で株価は軟調
以下はアリババの2016年以降の業績推移をIRから集計したものです。売上高と純利益ともに順調に成長してきています。
2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | |
売上 | 101,143 | 158,273 | 250,266 | 376,844 | 509,711 | 717,289 |
営業利益 | 29,102 | 48,055 | 69,314 | 57,084 | 91,430 | 89,678 |
純利益 | 42,791 | 57,871 | 63,985 | 87,600 | 132,479 | 171,985 |
Non GAAP EPS (Diluted) | 2.09 | 2.68 | 3.06 | 4.17 | 6.62 | 8.14 |
参照:Alibaba IR
株価に直接影響するEPSも増加基調ですが、株価は以下の通り下落基調となっています。
株価下落の要因は2021年に入り中国政府からの独禁法に抵触したとの嫌疑をかけられたことに端を発します。
その後、実際に4月に入り3000億円の罰金を科されるとともに今後も監視を強化する方針が示されました。
中国政府は、国内のネット通販最大手「アリババグループ」に対して独占禁止法に違反したとして日本円でおよそ3000億円の罰金を科したと発表しました。中国政府が影響力を増す巨大IT企業への締めつけを強化している一環と見られます。独占禁止法違反への罰金としては過去最高額とみられます。
去年12月から調査を行った結果、アリババグループが独占的な立場を利用して、ネット通販に出店する企業に対しほかの通販サイトに出店しないようさせたことが確認されたとしています。こうした行為はネット通販市場の競争を制限するとして、罰金とともに今後3年間、改善状況を当局に報告することを義務づけています。
これに対し、アリババグループは「処罰を誠意を持って受け入れ、したがっていく。さらにコンプライアンスを強化して社会的な責任を果たしていく」というコメントを発表しました。
中国政府は、影響力を増す巨大IT企業への締めつけを強化していて、ことし中に違反行為に対する処罰を厳しくすることなどを盛り込んだ独占禁止法違反の改正を行う方針も示しています。
参照:NHK
国に睨まれているということで株価は下落基調を継続しています。現時点の株価は過去からみても非常に割安なPER22倍という水準になっています。
Tencent(テンセント):プラットフォーム事業で覇権を握る中国最大の企業
テンセントは1998年に創業して2004年に香港証券取引所に上場しています。香港ハンセン株価指数の構成トップ銘柄となっています。
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2017年にはアジアで初めて時価総額5000億ドル(約55兆円)を超えてGAFAMに並ぶ企業に成長しています。現在の時価総額は約70兆円という規模になっています。時価総額では中国企業でトップです。
メッセージアプリや決済サービスだけでなく世界最大のゲーム会社としても成長
テンセントは以下のサービスを展開しています。以下は一部ですが、全てのサービスはテンセントのHPに記載されています。
✔︎ WeChat (メセージアプリ)
✔︎ QQ (SNS)
✔︎ WeChat Pay (決済サービス)
✔︎ QQ.com (オンラインゲームポータル)
WeChatはアジアの新興国に海外旅行した経験がある方なら馴染深いサービスではないでしょうか。WeChatとWeixinで連絡先を交換してラインのようにやりとりすることが一般的になっています。WechatとWeixinで月間ユーザーは12億人という巨大な規模となっています。
また、中国旅行するとアリババのアリペイと同じく、WeChat Payが決済ツールとして広く浸透しています。
更にテンセントはソニーや任天堂を抑えて世界最大の売上高をほこるゲーム会社としての地位も確立しています。QQに自社開発のゲームだけでなく他社開発のゲームをプラットフォームに乗せて収益を拡大させています。ゲーム事業はテンセントの稼ぎ頭に成長しています。
あらゆる分野で存在感を確立しているのが巨人「テンセント」なのです。売上高でみると「VAS」というのが最大の比率を占めています。
VASというのはValue Added Serviceの略でテンセントのプラットフォームビジネスを活用した課金サービスのことを指します。具体的には以下などが挙げられます。
✔︎ QQのメールボックス拡張
✔︎ QQ VIP会員
✔︎ Qzone VIP
✔︎ オンラインゲームの課金
急速に成長する業績と堅調な株価
以下はテンセントの業績推移ですが右肩あがりとなっています。バイドゥやアリババよりも高い成長率を誇っています。
2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | |
売上 | 102,863 | 151,938 | 237,760 | 312,694 | 377,289 | 482,064 |
営業利益 | 40,627 | 56,117 | 90,302 | 97,648 | 118,694 | 184,237 |
Non GAAP 純利益 |
32,410 | 45,420 | 65,126 | 77,469 | 94,531 | 122,742 |
以下はテンセントの株価推移です。直近上昇してきた分の調整となっていますが、長期的な右肩上がりの上昇相場を形成しています。
Huawei(ファーウェイ):スマホ販売も手がけるICTソリューション・プロバイダー
ICTインフラストラクチャーとスマホ販売事業者
Huaweiは皆さんご存知のスマホを販売するだけでなく、ICTソリューション事業を展開しています。
つまりスマホを販売しているAppleと通信事業を行なっているドコモの掛け合わせた企業と捉えると分かりやすですね。世界最大の通信設備販売会社としての地位を確立しています。
通信事業者向けネットワーク事業、法人向け、コンシューマー向け端末事業の分野においてエンドツーエンドの競争優位性を確立しています。ファーウェイは通信事業者、企業、消費者の皆様に最大の価値をもたらすべく、競争力の高い製品やサービスを170か国以上で提供し、世界30億人にもおよぶ人々のICTソリューションニーズに応えています。
参照:Huawei
売上の35%はスマホ販売ですが、最も多くを占めているのはConsumer Businessとなっています。これは5G回線やクラウド、データセンターなどの収益の積み上げとなります。
米国の制裁の影響を抑制して成長を続ける業績
以下はファーウェイの業績です。利益は制裁の影響もあり直近軟調ですが売上高は堅調に推移しています。
2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | |
売上 | 521,574 | 603,621 | 721,202 | 858,833 | 891,368 |
営業利益 | 47,515 | 56,384 | 73,287 | 77,835 | 72,501 |
Non GAAP 純利益 |
37,052 | 47,455 | 59,345 | 62,656 | 64,649 |
参照:HuaweiのIR
ファーウェイは米国から中国政府との結びつきやスパイ行為を疑われて、半導体の入手を阻む制裁措置やシェア拡大を阻害する政治キャンペーンが展開されています。
しかし、意外にも直近の決算で2020年度の売上が増加し市場を驚かせました。
中国の情報技術(IT)企業の華為技術(ファーウェイ)が意外な成績表を出した。米国の制裁が本格化した昨年も売上が前年より増加した。豊かな内需市場が売上防御の支えになったうえ、通信設備部門で市場支配力を維持したおかげだとみられる。ただし、ファーウェイの主力事業のスマートフォンの不振は続くため、見通しを楽観するのは難しいという分析が多い。
ファーウェイは現在非上場なので取引することは叶いません。
まとめ
中国のハイテク産業の進展にともなって米国のGAFAのような巨大テック企業が育ってきています。
中国版のGAFAとして頭文字をとってBATHという4つのハイテク企業が大きな存在感をだしています。どれも一つの事業だけではなく複数の産業で支配的な地位を築いているコングロマリッド化しています。
BATHを先頭として今後も中国の経済をハイテク産業が牽引していくことが想定されます。かといってなかなか個人投資家が魅力的な中国のハイテク企業を選ぶのは難しいでしょう。
そのような方は中国に精通したプロに投資を任せるのも一つのです。以下では中国企業に投資しているファンドをランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。