労働収入が増えていかない現在の日本では今までのように貯蓄で資産を構築するのに限界があります。
そこで投資を行い資産を構築することを志す方も増えていると思いますが、正直個別株投資は難しいし資産を失いたくないと考えている方も多いと思います。
そのような方は投資信託(ファンド)やETFを組み合わせてポートフォリオを組むことを考えていることと思います。
本日はコロナを経験した金融環境下で2020年代に資産を大きく増やしていく投資ポートフォリオを証券アナリストの筆者の観点でお伝えしていきたいと思います。
推奨したい超大国を軸とした投資ポートフォリオ
まず最初に、結論として推奨したいポートフォリオについてお伝えします。以下は2021年から高いリターンをねらうために筆者が組成しているポートフォリオです。
投資資産 | 構成比率 |
全米株式(VTI) | 35% |
中国株ファンド (オリエントマネジメント) |
35% |
金 | 20% |
現金 | 10% |
米国と中国の2つの超大国を中心としたポートフォリオを提案したいと思います。では、なぜこのポートフォリオになるのかを以下の項目に沿ってお伝えしていきたいと思います。
✔︎ 何故、債券を組み入れないのか?
✔︎ 何故、米国株なのか?
✔︎ 何故、日本や欧州の企業の株は組み入れないのか?
✔︎ 何故、新興国株なのか?何故、中国なのか?
✔︎ 金を組み入れる意味とは?
✔︎ 現金を少しは待機させておくべき意味
何故、債券を組み入れないのか?
債券を組み入れないでよい理由
筆者が提案したポートフォリオの中で特徴的な点としては債券を組み入れていない点が挙げられます。なぜ、債券を組み入れないのか理由を説明していきます。
先進国金利の低下で債券が株式の補完ができなくなっている
株式市場から資金がぬけると、投資家は伝統的に債券に資産をうつしてきました。
債券に投資をしれいれば一定の金利を受け取ることができますし、更に他の投資家が債券を買えば債券価格が上昇してキャピタルゲインを狙うこともできるからです。
つまり、今までは基本的に株式市場が下落する時は債券価格が上昇し、反対に債券価格が下落する時は株式市場が上昇するという逆相関の関係にあったのです。
上記の関係は金利がある程度の水準にあることが前提条件となります。
今までは先進国でも米国を中心に長期金利がある程度の水準を確保していました。しかし、現在は特にコロナショック以降金利が沈み込んでおり米国の長期金利ですらゼロ近傍となっています。
つまり、債券に投資をするメリットがあまりない状態となっているのです。むしろ、このような金利が低い環境下では積極的に株式投資を行なっていくのが合理的な選択肢となります。
実際に債券を組み入れることを推奨していたヘッジファンドの帝王であるレイダリオ氏も2020年6月以降、ポートフォリオから債券を除外しています。
新興国債券は利回りが高いが為替を加味すると投機性が高い
新興国債券は以下の通り場合によっては15%程度の利回りとなっています。
しかし、あくまで上記は新興国通貨建でのリターンです。例えば、一番利回りの高いトルコの円に対するチャートをご覧下さい。
上記の通り、一貫してトルコリラの価値は下落し続けています。結果としては日本円建でみるとマイナスのリターンになってしまうのです。
新興国建債券は表面的な利回りだけで判断するのは危険なのです。投機的な側面が強い投資先なので安定的な資産運用の投資先として除外しています。
米国株式を35%組み入れるべき理由とは?
まず、筆者がポートフォリオの二本柱の一つとして挙げている米国株式の有効性についてお伝えしていきたいと思います。
米国株式には米国株全体に投資することができるVTIを推奨します。VTIは米国に上場している4000銘柄に時価総額順に一括で投資をすることができるETFです。
米国は非常に古い株式市場の歴史を持っております。以下はS&P500指数の1870年からの推移です。1870年には5ドルだったS&P500指数は現在では800倍以上に増加しています。
資本主義の進展に伴って多少の上下はしながらも長期的に右肩上がりとなっているのです。30年近く最高値を更新できていない我が国の株式市場とは段違いですね。
単年度では確かに40%近く下落する局面もあります。
しかし、30年間投資した場合の平均リターンは最低でも5%以上が見込めることが歴史的に実証されています。
特に2020年代は金融緩和状態が継続することが見込まれています。株式市場に資金が流入しやすい状況が継続することが見込まれるのでポジティブな環境は継続することが見込まれます。
コラム:何故、日本や欧州の株式をポートフォリオに組み入れないのか?
筆者は先進国株式は米国株だけで十分と考えています。
日本は国自体が衰退の一途で株式市場も盛り上がりに欠ける
日本は残念ながら殆ど平成時代の初期から成長していません。1991年から2020年の経済成長率の平均は0.7%となっています。
人口も減少に転じていますし、政府が積極的に財政支出を行なっていないので成長する可能性が今後も低い状態が続きます。
特に政府による財政支出の伸び率と経済成長率には明確な相関関係があります。日本は財政支出の伸び率が最低となっており、経済成長率も圧倒的に最下位です。
一方、米国や後でお伝えする中国は積極的に政府の後押しのもと着実に成長していっているのです。
欧州はEUと枠組み自体が足枷
欧州はEUという枠組みで纏まりを見せています。しかし、EUという大きな組織単位で金融政策や財政支出を出さざるを得ないという多きなデメリットを抱えています。
例えば、日本や米国では中央銀行が通貨の発行権を有しているため、政府が支出したい場合は国債を発行し中央銀行に引き受けてもらう形で財政支出を行うことが出来るのです。
つまり、事実上インフレが発生しないかぎりにおいて日米政府に資金制約はありません。巷で言われている政府の借金は国民の借金というのは明確に誤りです。(デフレの日本ではもっと財政支出を行うべきなのですが…….)
一方、欧州では欧州中央銀行(=ECB)が共通通貨であるユーロの発行権を有しています。つまり、各国政府が自由に財政支出を行うことができないのです。
つまり、各国政府が思ったように政策をうつことができず、ギリシャのように財政破綻したり、ポルトガル、イタリアのように財政危機が発生して国債金利が大きく上昇してしまうのです。
日本では政府がいくらでも日本円を発行できるので財政問題は発生しておらず国債金利はゼロ近傍で推移しています。
上記の点から各国が最適な計画をもとに政策を打てず、なおかつ人口が減少していく国家が多く成長力が低いということを加味すると投資する妙味が見当たらないのです。
超大国に成長した中国株式に35%を投資する理由
では本題に戻します。米国株と同様にポートフォリオの主軸を占めるのが中国株ファンドです。
ご存知の通り中国は米国と並ぶ世界の超大国です。2009年にGDPで日本を抜かしてからも高成長を継続しており米国を背後に捉えています。
2028年には世界一のGDPを誇る派遣国になることが見込まれています。
https://indexnz.com/china-economy/
経済の高度化も進展してきており、最近ではBATHのような巨大ハイテク企業が急成長をとげ米国のGAFAMを脅かす存在になっています。
B:Baidu
A:アリババ
T:テンセント
H:ファーウェイ
成長する経済と企業に反して中国株式市場は2010年代を通じて低迷していました。つまり、現在は非常に割安な状態になっているのです。以下は上海総合指数の超長期推移です。
経済規模が3倍になっているのに株式市場は10年単位で横ばいになっているのです。
https://indexnz.com/china-stock/
株式市場は常に強い市場と弱い市場はサイクルしています。
1990年代:先進国株式市場
2000年代:新興国株式市場
2010年代:先進国株式市場
2020年代:新興国株式市場?
いよいよ覇権に向けて本格的に動きだした中国株式が2020年代は栄光の期間を迎えることと考えて投資を行っています。
中国株式に投資するファンドは数多く存在しますが、筆者としては過去実績のあるシンガポール在住のファンドマネージャーによって運用されているオリエントマネジメントに投資を行っています。
オリエントマネジメントについては以下で詳しくお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
金を20%組み入れる理由
また、何故金を組み入れるべきか気になった方も多いと思います。理由は2点ほどあります。
理由①:通貨の流通量は上昇を続け通貨価値は毀損し続ける
通貨と金はシーソーゲームの関係にあります。金は金なので本質的な価値は変わりません。
そのため、流通している通貨の量が上昇すれば反対に金の価値は上昇していきます。そして、もっとも重要なのは世界の基軸通貨である米ドルの供給量です。
以下は米国のM2ですが1980年から一貫して上昇しています。金本位制が崩壊して以降流通するドルの量は上昇の一途をたどっているのです。
結果として、金価格も上下動はありながらもマネーサプライの増加に伴って上昇して行っています。
青色:M2
赤色:金価格
今後も経済成長のために米国は財政支出を行うことを辞める気配はなく、マネーサプライの増大が止まることはありません。結果として長期的に見て金は上昇していくことが見込まれるのです。
理由②:代替資産としてポートフォリオの安定が期待できる
米国株式も中国株式も広い意味では株式です。そのため、少なからず動きが連動します。
以下は1972年からの金と米国株の値動きの推移の比較です。
青色:金
赤色:米国株
値動きが全くことなることが視覚的にも一目瞭然ですね。動きが異なる資産を組み入れることでポートフォリオの安定性は増していきます。 危機発生時に債券の代わりとして株価下落の緩衝材となることを期待して金を組み入れています。
金に投資する方法
金に投資する方法は様々です。筆者は以下の二つを通じて金に投資をしています。
現物の金:田中貴金属
ETFの金:GLD
GLDは楽天証券やSBI証券といった大手ネット証券から簡単に投資を行うことができます。
現金を10%保有すべき理由
最後になぜ現金を10%保有すべきかという点についてお伝えしていきたいと思います。
現金を保有しておくことで株価や金が暴落した時に安いところで仕込むことができます。安い時に仕込むことができれば、将来的な期待リターンも上昇させることができます。
常に有事の備えとして現金は抱えておくようにしましょう。
まとめ
もう一度、筆者が考える2020年からの資産形成において安定したリターンが狙えるポートフォリオは以下となります。
投資資産 | 構成比率 |
全米株式(VTI) | 35% |
中国株ファンド (オリエントマネジメント) |
35% |
金 | 20% |
現金 | 10% |
先進国の雄である米国と新興国の雄である中国を基軸とした超大国ポートフォリオで大きく資産を形成していきましょう!
皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。
経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。
一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。
青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体
強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。
そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。
また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。