中国投資信託

中国株に投資する投資信託「HSBCチャイナオープン」を徹底評価!標準偏差(=リスク)の大きさがやや懸念される。

中国株に投資する投資信託「HSBCチャイナオープン」を徹底評価!標準偏差(=リスク)の大きさがやや懸念される。

中国は今後最も期待できる新興国の株式市場であると考えています。

日本でも中国株に投資を行う投資信託が多く販売されています。香港市場を通じて日本人投資家でも中国銘柄を購入できるので投資信託が組成しやすいのも影響しています。

今回はその中の一つ「HSBCチャイナオープン」について以下の点を中心にお伝えしていきたいと思います。

✔︎ HSBCチャイナオープンの概要
✔︎ 特徴と過去のリターン

HSBCチャイナオープンの特徴とは?

ではまずHSBCチャイナオープンの特徴についてお伝えしていきたいと思います。

ファンド・オブ・ファンズ形式で運用

HSBCチャイナオープンは以下の2つのファンドに分散して運用しています。

HSBCチャイナオープンの運用の仕組み
チャイナ
マザーファンド
中国国内で事業活動を行うものの登記が中国本土以外の国の企業を投資対象としています。つまり香港のH株やレッドチップなどが主な投資対象ということになります。
中国A株
マザーファンド
中国の本土で事業を行い中国本土で上場している銘柄に投資しているETFに投資しているファンド。

参照:中国株式市場は割安で投資する機会が到来!A株、B株、香港H株、レッドチップなどの違いについてもわかりやすく解説する。

 

つまり、HSBCチャイナオープンは上海市場・深セン市場や香港市場に上場している中国企業全般に投資している投資信託ということになります。

ただ、現在は殆どチャイナマザーファンドとなっており、中国A株マザーファンドは0.6%となっています。今は殆どチャイナマザーファンドのみに投資していると考えておけば問題ないでしょう。

チャイナマザーファンドの構成上位銘柄と業種別構成比率

ではまずチャイナマザーファンドの構成上位銘柄と業種別構成比率についてみていきましょう。まずは構成上位銘柄です。

順位 銘柄名 業種 構成比率
1 テンセント ソフトウェア 9.7%
2 アリババ ソフトウェア 9.1%
3 美団 小売 3.9%
4 中国平安保険 保険 3.6%
5 中国建設銀行 銀行 3.2%
6 バイドゥ ソフトウェア 3.2%
7 トリップ・ドットコム・グループ 小売 3.1%
8 網易 ソフトウェア 3.0%
9 併多多 小売 3.0%
10 藥明生物技術 医薬品 2.6%
構成上位10社合計 44%

 

BATHと言われるテックジャイアンとが構成上位を占めています。

B:バイドゥ
A:アリババ
T:テンセント
H:ファーウェイ

業種別構成比率は以下の通りとなっています。やはり中国自体がハイテク化が進んでいることもあり、ソフトウェアの比率が高くなっています。

 

 

構成比率
ソフトウェア 27.2%
小売 12.6%
医薬品 7.5%
資本財 7.4%
食品 7.1%
銀行 4.9%
その他 32.6%
キャッシュ等 0.60%

 

中国A株マザーファンドの構成銘柄

今は全体の0.6%しか組み入れていないので中国A株マザーファンドの影響は少ないのですが、中国A株マザーファンドは殆どi Shares MSCI チャイナA UCITS ETFとなっています。

iシェアーズ MSCIチャイナA UCITS ETF 92.2%
iシャアーズ FTSE China A50 Index ETF 1.5%
キャッシュ等 6.3%

 

分配金を年一回拠出

HSBCチャイナオープンは分配金を毎年1回拠出しています。以下の通り基準価格が上昇するにつれて分配金が増加してきています。

 

 

現在の基準価格31,000円から考えると、今の分配金利回りは約3.5%という水準となっています。ただ、後でお伝えしますが本当に高いリターンを追従するのであれば分配金をださすに運用した方がよいのです。

分配金を一度拠出すると20%の税金が支払われるので最終的なリターンが大きく毀損することとなるのです。

購入手数料と信託手数料ともに高い水準

投資信託には購入時に発生する購入手数料と毎年年率で発生する信託手数料が存在します。HSBCチャイナオープンの手数料は以下となります。

購入手数料:3.3%(税込)
信託手数料:年率1.9789%(税込)

インデックスに対してプラスのリターンを狙うアクティブ型の投資信託の中でも高い水準となっています。

HSBCチャイナオープンの運用成績!

では肝心の運用成績についてみてきましょう。以下は運用開始来のHSBCチャイナオープンのチャートです。

 

上記の赤は分配金を再投資した場合のリターンです。分配金を税金を支払う前に再投資した場合のリターンですので、実際は赤の通りにはいきません。

つまり分配金を出さなかった場合のリターンが赤ということです。実際には分配金に対して20.315%の税金がかかるので投資家がえるリターンは黒と赤の間になります。

実績をデータとしてみると以下となります。

1年 3年
(年率)
5年
(年率)
10年
(年率)
トータルリターン -6.12% -0.24% -1.74% 6.40%
標準偏差 29.45 24.25 22.92 22.99
シャープレシオ -0.21 -0.01 -0.08 0.28

 

10年間の年率リターンと標準偏差から今後1年間で予想されるリターンは確率毎に以下の範囲に収まることが見込まれます。

【68.2%の確率】
△16.59%(6.40%-22.99%) 〜 29.39%(6.40% + 22.99%)

【95%の確率】
△39.58%(6.40%-22.99%×2) 〜 52.38%(6.40% + 22.99%×2)

【99.7%の確率】
△62.57%(6.40%-22.99%×3) 〜 75.37%(6.40% + 22.99%×3)

 

非常にリスクが大きくリターンは小さいので割に合わない投資となっています。

 

正直おすすめしませんが、念のため新興国株指数、中国株指数や他の中国の投資信託とリターンを比べていきたいと思います。

上海総合指数と香港ハンセン指数と比較

まずは中国の株価指数である上海総合指数と香港ハンセン指数との比較を通じて成績をみていきたいと思います。

以下は10年間の運用成績の比較です。

青:HSBCチャイナオープン
赤:上海総合指数
緑:香港ハンセン指数

 

香港ハンセン指数に比べると大幅にプラスのリターンをだしていますが上海総合指数にはやや負ける結果となっています。

 

長期で見るとまずまずの結果となっています。ただここ半年の結果も合わせてみてみましょう。

 

 

今度は、上海総合指数と香港ハンセン指数の両者に大幅に負ける結果となっています。

 

HSBCチャイナオープンは一時期は指数を大きく上回る結果を残していましたが、直近では大きく下落してしまいました。

 

この大きな要因としてはHSBCチャイナオープンがハイテク銘柄を多く取り入れていることが挙げられます。

 

このようにハイテク銘柄に投資すると良い時は良いのですが、悪い時は悪くなかなか安定しない投資となってしまいます。

 

他の中国投資信託と比較して評価

では他の中国株投資信託とリターンとリスクを比較していきたいと思います。中国投資信託として同じ分類の以下の投資信託と比較したものが以下です。

 

 

 

基準価額、純資産は 2023年03月23日 現在

HSBC
チャイナ
オープン
三菱UFJ
チャイナファン
三井住友・ニュー・
チャイナ・ファンド
中華圏株式
ファンド
(毎月分配型)
トータル
リターン
1年
-6.12% -5.47% -7.12% -4.85%
トータル
リターン
3年(年率)
-0.24% -1.14% 2.51% 2.73%
トータル
リターン
5年(年率)
-1.74% -0.99% -0.55% 1.37%
トータル
リターン
10年(年率)
6.40% 6.93% 6.81% 6.51%
標準偏差
1年
29.45 33.70 29.75 23.32
標準偏差
3年
24.25 26.73 23.78 20.43
標準偏差
5年
22.92 24.34 22.03 20.81
標準偏差
10年
22.99 22.08 21.10 21.21

 

値動きを見ていただければわかるとおり、殆ど同じ動きとなっています。特に10年リターンを見るとほぼ一緒ですね。特段どのファンドが優れているというわけではなく横一線となっています。

 

ただ、どのファンドも値動きの荒さを示す標準偏差が大きいので最大△40%程度のマイナスを覚悟する必要があります。

 

筆者は中国株式市場を今一番魅力的な投資対象であると考えています。ですが、だからといって安易に中国株の投資信託で運用すれば良いという訳ではありません。

 

投資信託はハイテク株などのリスクが大きい銘柄にメインに投資してしまうので、運任せになってしまう部分もあります。

 

中国株に投資するなら、プロの目線で銘柄選定ができるヘッジファンドがおすすめです。

 

ヘッジファンドって何?という方には詳しく下のランキング記事で解説していますので参考にしていただければと思います!

 

まとめ

HSBCチャイナオープンにつうてまとめると以下となります。

  • ファンド・オブ・ファンズ形式で運用
  • 殆どは中国本土に登記していない中国本土で事業を行なっている会社に投資
  • BATHなどのテックジャイアントに多くの比率を割いている
  • リターンは指数にまさっているが他の投信と同様の動き
  • 標準偏差(=リスク)が大きいのが難点

悪くはないですが、あえて新興国株式の中心に添える内容ではないかなと筆者は評価します。以下では新興国投資を行う上で魅力的と考えられるファンドについてランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います!

新興国投資で投資で大きく資産を増やす投資先とは?投資対象・運用戦略・期待リターンから厳選。
新興国の資産運用

 

 

皆さんもご存知のことと思いますが、現在世界経済の成長を牽引しているのは疑いなく新興国経済となっています。今後も先進国の成長率は低下することが見込まれていますが、新興国の高い成長率は継続することが予想されています。

先進国と新興国の経済成長率の比較

経済の成長にともなって新興国企業の1株あたりの利益もコロナから順調に回復し再び成長軌道に乗ることが見込まれています。

新興国の経済成長率の推移を先進国と比較

 

一方、堅調な経済成長と企業利益とは反対に、新興国株式は軟調に推移し先進国株式に対して割安に推移しています。結果として新興国株式は先進国株式に対して30%程度割安となっており2022年以降は再び新興国株式の時代がくると目されています。

青:新興国株式全体
黄:全世界株式全体
緑:先進国株式全体

先進国に対して劣後する新興国株式市場

参照:MSCI

 

強い株式市場というのは移り変わっていきます。2000年代は新興国株式、2010年代は先進国株式でした。2020年代は再び新興国株式の時代が到来しようとしているのです。

そして、新興国株式投資で大きなリターンをだすためには、中でも魅力的な新興国に投資をする必要があります。

 

また、新興国の個別株は個人投資家にはなかなか分析するのが難しいのではないでしょうか。そこで、新興国株式の分析をし実際に投資している筆者の観点から大きなリターンを望める投資先を厳選してランキング形式でまとめています。新興国投資を行う際に参考にしていただければと思います。